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2019年6月13日 (木)

「金子文子と朴烈(パクヨル)」:アナーキー・イン・JP

190613_1 監督:イ・ジュンイク
出演:イ・ジェフン、チェ・ヒソ
韓国2017年

私が金子文子に興味を持ったのは、岩波書店のPR誌「図書」でブレイディみかこが連載してた「女たちのテロル」を読んでである。こんな人物がいたのかと初めて知って驚いた。
で、もっと詳しく知りたいと思ってご近所の図書館に行って借りたのが、なぜか大逆事件についての本。完全に管野スガと取り違えていたのだった。無知である(+_+)トホホ

時は1920年代初め、「社会主義おでん屋」で働く文子は差別を強烈に描いた朴烈の詩を読んで彼に惚れ込み、二人でアナキストグループを作って活動。ここに破天荒な無政府主義カップルが誕生したのである。
しかし関東大震災発生、朝鮮人虐殺が起こってその騒ぎに乗じて彼らも逮捕されてしまう。さらに爆弾計画が発覚、死刑宣告となり社会を揺るがす。

と書くと暗い話だが、映画のトーンは深刻ではなく、わざと軽いノリを加えている。特に検事の尋問や裁判場面など笑えるシーンも多い。
神も仏も、国家も陛下も信じないのさ、ルン♪みたいな感じで一貫している。

しかし、何せ人物や事件自体が強烈で目立ちすぎるので、映画自体の出来はゆるみがあるのが残念。まあでも日本映画では取り上げられないような題材なので一見の価値はある。
それから朴烈はその後あっちへ行ったりこっちへ来たりと、ジェットコースタードラマのような波乱万丈の人生を送ったらしいのだが、そこら辺は全く描かれていない(その点について批判があった)。思い込んだら突っ走る性格の人なのかね。
原題では朴烈の方が主人公のようだが、金子文子も負けず劣らず中心人物である。ここは邦題通りカップルで主人公ってことでよろしく。

韓国人の役者の日本語は皆さんうまくて感心した(もちろん日本人や在日の俳優も参加している)。ただ肝心の「十五円五十銭」の若者役の人についてはちょっと怪しかったかも……(ーー;)
文子役のチェ・ヒソはすごい美人💡 美人過ぎて出てくるたびに見とれてしまった。

「怪写真」事件はやっぱり謎である。何であんな写真が撮れたのだろうか(チラシは怪写真をそのままなぞっている)。単に昔は警察も検察もユルユルだっただけなのか。

なお、ブレイディみかこの連載をまとめた単行本『女たちのテロル』は岩波書店より発行されたばかり。金子文子だけでなく『未来を花束にして』の登場人物も取り上げられている。

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