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2019年7月24日 (水)

「誰もがそれを知っている」:ファミリー・アフェア 後から効く~

190724 監督:アスガー・ファルハディ
出演:ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス
スペイン・フランス・イタリア2018年

ファルハディ監督の新作はスペインを舞台にして、ペネロペ・クルス&ハビエル・バルデム夫婦共演という大ネタを投入である(もっとも、役柄自体は夫婦ではなくて「元恋人」という設定)。

スペインの田舎町からアルゼンチンの資産家に嫁いだ女が、妹の結婚式のために子どもたちと共に帰郷する。しかし、十代の娘が誘拐され身代金の請求が……。
スペインでは実際に悲惨な誘拐事件が起こっていて、かなり国中を揺るがす大きな騒動となったらしい。それを踏まえて話が展開する。その事件の記憶があるためにうかつに警察へも訴えられない。
だが、どうもこの誘拐事件は見ていると何かが引っかかるのであった。

バルデム扮するかつての恋人の男は、元カノに降りかかった災難に対し奔走する。自分の農場で働く季節労働者(その多くは移民らしい)や、自分の妻が教えている矯正施設の生徒を疑う。そこには普段は隠された差別感が緊急時には露呈するということが、さりげなく描かれている。
また、そもそも女の父親は元地主で、対外的にはその強権的な性格が嫌われているし、家族内もドロドロしている。
と、ファルハディお得意のイヤ~ン案件が続出するのであった。

しかし、どうしたことであろうか。これまでの監督作品にあった人物を追い詰めるような緊迫性はなく、スター俳優二人を迎えたためかなんとなくライトな仕上がり。メロドラマ調に流れているような印象で、物足りないままに終わってしまったのだった。本来ならば「うわー、もうイヤだー」とパッタリ倒れたくなるような内容なのが普通だろう。
--と、思っていたのだ、当初は。

だが、段々と時間が経つにつれて思い返す度にイヤ~ン味が増して感じられるようになってきたではないか。こ、これは……相当にひどい話じゃないの!(詳しい内容は、下記のネタバレ線以下に記述)。
時間差でイヤさ全開になるとは、監督の芸風もますます磨きがかかってきたようである。
今回も彼は身近な家族内にペタリとくっ付いている、善とも悪とも決めつけられないけど醜悪な部分を掘り出すのに成功したようだ。

190724b 娘役のカルラ・カンプラがなかなかの演技を見せる。若いのでこれからの期待株か。情けない父親役のリカルド・ダリンは「瞳の奥の秘密」などで知られる渋い二枚目俳優。こういう役も完全にこなしているのはさすがである。

大判のチラシにあった辛酸なめ子イラストのストーリー紹介があまりにも的確で笑ってしまった。→確かに、ペネロペ・クルスの憔悴ぶりの落差はすごい。


------------------------★ネタバレ注意★-----------------------

以下は完全ネタバレです。自己責任でお読みくだせえ( ^o^)ノ


バルデム扮する男は農場を失い、妻も彼の元を去る。しかし、最後に彼は自分に娘がいたことを初めて知って、その幸福感にベッドに横たわってかすかに微笑む。

だが、その一方でそれに等しいぐらい身近な近親者である兄が自分を裏切っていることを知らない。そのやり口は狡猾で、警察に通報させないためにわざわざ警察OBのアドバイザーを紹介までする。
扱いやすい子どもの弟の方ではなく、わざわざ十代の娘を誘拐するからには完全な部外者の犯行ではなく、男の財産も狙っているのは明らかだが、「誰もが知っている」のだから容疑者は町の住民全員でおかしくはない。

それを、期せずして攪乱するのがアルゼンチン人の夫の存在である。性格は神頼みで成り行き任せ。そのような人物だからこそ娘は生を受けたわけだが、全くの他人である男が自分の身代金を払ったことを娘に問われても何も答えない。
こりゃ、後々まで禍根を残すだろうなあ……と想像すると、ますますイヤさ加減が増すのであった

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