« 「クリスチャン・ボルタンスキー lifetime」:墓無き者に | トップページ | 「大塚直哉レクチャー・コンサート 2 「フーガ」の苦しみと喜び」:鍵盤を押してもダメなら弾いてみな »

2019年7月19日 (金)

「たちあがる女」:アイスランディック・ソウル 不屈の闘い

監督:ベネディクト・エルリングソン
出演:ハルドラ・ゲイルハルズドッティル
アイスランド・フランス・ウクライナ2018年

「変な映画」は数あれど、それにプラスして面白いというのはあまりない。しかし、このれがまさにそうであった。こんな映画を生み出したアイスランド恐るべし。

表の顔は中年女性、アマチュア合唱団の指導者。しかしてその実体は--環境を守るため破壊工作に日夜はげむコードネーム「山女」であったのだ!
疾きこと風の如し、矢を放っては送電線をぶっ壊し、大地や風の動きで追っ手を素早く察知、姿を潜める。
ただ、逃走経路は計画段階でちゃんと確保した方がいいと思うんだけど……💨

映画の感想では「女ランボー」などと評されていたが、不動の意思をもって美しい野山をひた走る主人公はさながら中年ナウシカのように見える。
宮崎駿の原作マンガでは結末でナウシカは市井の人に戻ったと書いてあるが、あたかも中年になったナウシカが環境破壊に怒り再び立つ(*`ε´*)ノ☆となったら、こういう感じではないか。なにせドローンの接近を素早く聞きつけちゃうんだから。

現在の標的は拡張計画中のアルミ工場で、中国資本がらみらしいのが描かれる。以前、この本を読んだ時に中国のアフリカ大陸への食い込み具合に驚いたが、実際ヨーロッパにもかなり進出しているそうだ。アイスランドというと、日本と違ってもっとゆったりとした国だというイメージがあるものの、監視カメラやドローン・警察のヘリによる追跡、ネット盗聴など物騒な面も登場する。

しかしこの映画の一番の驚きは、本来劇伴として背景に流れるはずの音楽を実際にミュージシャンが画面に登場して演奏することなのだ(!o!) オルガン、ドラム、スーザフォン(変わった組み合わせ)の奏者が付かず離れずヒロインと共に行動して(たまに休憩したりする)、その状況に合わせて音楽を奏でるのだ。
こんな発想見たことも聞いたこともねえ~。驚きである。
途中からは地声3人の女性コーラスも加わる。ブルガリアン・ヴォイスっぽいけどアイスランドにもあるんだーと思っていたら、ウクライナの伝統音楽らしい。

音楽だけでなく映像のセンスや編集のテンポもいい。この監督、これが2作目だというからこれからも期待大だろう。
あと、ヒロインの「活動」に巻き込まれて毎度必ずトバッチリを受ける外国人観光客のおにーさん。笑っちゃうのだけど、監督の前作にも登場しているそうな。次作にも出して欲しい。

ラストの光景はぼーっと見ていて気付かなかったのだが、主人公の活動と直に関わっていたのだった。恥ずかしながら他のネットの感想読んでて気付きましたよ(^^ゞ ヒントは自室で流れているTVニュースである。
最後まで演奏団を付き従え、断固として進む彼女の姿に感動である。

また邦題に文句つけたい。主人公はとっくに「たちあがって」いるのだから(「立ち上がる」じゃないので検索もしにくい)、ここは一つ「不屈の女」ぐらいにして欲しかった。

ところで、本作はジョディ・フォスターの監督・主演でハリウッド・リメイクの予定らしい。彼女がやったら余計に中年ナウシカっぽいかも。

| |

« 「クリスチャン・ボルタンスキー lifetime」:墓無き者に | トップページ | 「大塚直哉レクチャー・コンサート 2 「フーガ」の苦しみと喜び」:鍵盤を押してもダメなら弾いてみな »