「ナポリのサルヴェ・レジーナ」:ナポリを聞いてから死ね
ナポリ出身または縁のある作曲家の特集。……というか、チェロの懸田貴嗣が好きな曲ばかり選んだらしい。ソプラノ阿部早希子とチェンバロ渡邊孝は過去に3人で、北イタリアで録音した仲間とのことだ。この日はヴァイオリン、ヴィオラも加えて総勢6人だった。
歌曲はヴィヴァルディのモテット、ポルポラの「サルヴェ・レジーナ」、ヘンデルのモテット。その合間にチェロと鍵盤の器楽曲を挟むという構成である。
ポルポラに関しては懸田氏が「生誕333年記念」のTシャツを取り出してまず宣伝。歌手の弟子が多く、カファレッリは5年間同じペーシを歌わされたという逸話が残っているという。また、ハイドンは若い頃に弟子兼助手をして仕えていた。
「サルヴェ・レジーナ」はヴェネツィアの女性歌手のために作られた曲で、なるほど華やかで歌手の声の聞かせどころが堪能できるような作品であった。
トリの曲となったヘンデルのモテットはイタリア時代に修道院の依頼で作曲され、1707年にローマで演奏されたらしいとのこと。既に炸裂するヘンデル節、感情の盛り上がる部分と抑えた部分の対比が見事で、阿部氏の熱唱で表現された。
器楽の方は、渡邉氏が前半に弾いたチェンバロ曲「トッカータ」の作者N・ファーゴはナポリの音楽学校出身。その弟子のL・レーオが作曲したチェロ協奏曲を、今度は後半に懸田氏が演奏という繋がりだった。
チェロの演奏は熱気と汗ほとばしるといった印象のリキの入り具合で、会場もそれに巻き込まれたようになった。
このように「イタリア熱」あふるるコンサートであった。
合間に渡邉氏の解説が入ったのだが、NHK-FM「古楽の楽しみ」でのムダなく落ち着いた語り口は、実は仮の姿。その正体は、話しだしたら止まらないタイプなのである。
同じく止まらないと言えば、フルート前田りり子はつんのめるように早口で喋るが、彼の場合は全く異なり、その語り口は飄々としている。飄々と話が続き--ひょうひょう--ひょうひょう……客「ありゃ、まだ話が終わらない!?」という次第。要注意だろう。
そういや、開場時間に遅れて(この前に見ていた映画の上映が遅れたため)開演20分前に会場へ急いでいたら(自由席なので遅れるといい席にありつけない)、ドリンク片手にポロシャツ着たおにーさんが悠然と歩いている。その後ろ姿に見覚えがあるような?と思ったらやはり渡邊氏だった。
よ、余裕ですなあ……(^^; それから着替えてチェンバロの調律までしてた。
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