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2019年8月30日 (金)

「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」:壁の西側へ跳躍せよ

190829 監督:レイフ・ファインズ
出演:オレグ・イヴェンコ
イギリス・フランス2018年

冷戦時代、ヌレエフ亡命の顛末を描く。単なる「事件」ではなく、貧しい少年時代、バレエ学校、パリ公演の3つの時代を並行しつつ彼の内面に迫っていく構成だ。注意深く見てないと学校時代と公演直前がゴッチャになる可能性がある。

彼の強烈な自負心と背中合わせの劣等感に驚かされる。ただ、実際のヌレエフは憎めない「人たらし」だったようで、そこら辺の描写はあまりない。
それと、セクシュアリティの描写は妙に曖昧なのはどうしたことよ。ホモセクシュアルだったのは公然の事実のはずだが、ぼかした表現しか出てこない(下着姿で友人と二人でいる、など)。
それなのに師匠の家(狭い)に居候させて貰ってるうちに、奥さんと……のくだりはやけにハッキリ描いている。
師匠役のレイフ・ファインズが心なしか嬉しそうに「寝取られ亭主」役を演じているように見えるんだけど(^0^;)

華やかな舞台と裏返しとなる反復する練習と脚にきしむ床の描写が頻繁に入り、「ダンサーはつらいよ」な側面も忘れていない。
絵画を連想させる映像も印象が強い。実際にルーヴルに展示されている絵画もそうだが、明らかにハンマースホイ(ハマスホイ?)を意識した部屋の光景も登場する。映像に関してもファインズは監督としての力量を示したといえるだろう。

主役を演じているのはダンサーから抜擢された若者とのことだが、目ヂカラがすごい。
子ども時代の少年は顔立ちが似てるので選んだのかと思ってたら、最後にちゃんと踊った(カワイイ)のでこれまたビックリよ。
あのポルーニンも役柄自体は端役だけど登場する。単独で踊る場面があり、またサービスショット(!o!)も登場するので、ファンは要チェックであろう。ポルーニンも役者志望らしいが、彼が主役ではなかったのは目ヂカラ💥が足りなかったせいだろうか。
あと、女友達役のアデルも魅力大(*^^*)

それにしても花の都パリ✨である。ハイカルチャーからアンダーグラウンド、聖と俗(クレイジー・ホースも登場)入り交じり混在する都市、なるほど親も祖国も捨ててもいいと思うかもしれない。地下酒場の歌の場面など音楽の使い方もうまい。
レイフ・ファインズにはこれからも役者と監督の両刀で活躍して欲しい。

芸術満載の世界から終盤は、亡命騒動でいきなりハラドキのサスペンスに。KGBのおぢさんはあの後、責任を取らされてシベリア送りになったりしてのだろうか(汗) 宮仕えもつらいよ。一方、空港警察のおぢさんたちはノンビリしてるようで小粋。お国柄ってヤツですかね。
ヌレエフの亡命についてよく知らなかったのだが、『アラベスク』の第2部はこの事件をふまえてこそ描かれたのだなあと、今更ながらに実感した。

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