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2019年9月 3日 (火)

「訣別」上・下巻

190904 著者:マイクル・コナリー
講談社文庫2019年

刑事ボッシュ・シリーズの19作目が早くも出た。
前作では心ならずも犯罪者の弁護側調査員として働いてしまったボッシュであったが、今は私立探偵の免許を取り直し、さらに近隣の小都市サンフェルナンド市の警察でボランティアとして働く日々である。

警察にボランティア(?_?)と驚くが、財政問題から人員を減らしたことへの対応策だという。完全無休で月2回出勤する代わりにバッジを持てるらしい。多分、実際にこういうボランティア制度が存在するのだろうが、作中で『ブレードランナー』の台詞が引用されているように「警官じゃないなら、お前はただの普通の男だ」という状況に耐えられない者が少なからずいるということか。
やはり刑事は3日やったら止められないようである。

二足のわらじを履く主人公に、ほぼ同時に探偵と刑事の案件が起こる。全く性質の異なるものだが、どちらも重大なネタである。
その二つがどこかで交差するのか、それともしないのか。
途中で起こるトラブルには、ボッシュが二足のわらじを履いていたのが原因ではないかと思われる節があり、彼がほぞを噛む思いをすることになる。
銃撃戦の場面があるが、描写はお見事で惚れ惚れする(^^)b

ボッシュはベトナム帰還兵という設定だが、これまでそれについての詳しい話は語られてこなかった。今回、ベトナムに派兵されていた男について調査する中で当時の思い出が登場する(少しだけだが)。
それで初めて知ったのだが、当時ベトナムの米兵(それも「戦闘経験者」)の間でトールキンの『指輪物語』の人気が高く、よく読まれていたという。
「自分たちがいまいる場所と自分たちがやっていることという現実から連れ去ってくれる」
これを読んで、私は太平洋戦争中に徴兵された若者が『黒死館殺人事件』を背嚢に入れていったという話を思い出した。

次に日本で刊行予定の作品はボッシュものを離れて、LA市警の女性刑事が主人公の作品になるとのこと。でももっと後の作品では二人は共演してるようなので、これまた楽しみである。

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