映画落ち穂拾い 2019年前半その2
★「ハンターキラー 潜航せよ」
監督:ドノヴァン・マーシュ
出演:ジェラルド・バトラー
イギリス2018年
潜水艦ものは結構好きである。大昔の『原子力潜水艦シービュー号』とか『眼下の敵』などなど。マンガの『サブマリン707』も読んでた。
魚雷に機雷にソナー、この手の戦闘には欠かせぬ要件がテンコ盛りの上に、さらに特殊部隊による地上極秘任務(派手な銃撃戦付き)ありの大サービスである。あ、加えて「信頼できる艦長」も必須条件ですね。出来に文句なしっ。
定番の音探知の場面では客席も思わず雑音を出さず静まりかえっていた。
潜水艦ものによくある見えない敵の作戦の探り合いというのは、相手がまともな思考をするならいいけど、ひねくれた奴とかサイコパス気質だったら無理じゃないのと思ったりして。
ここではハト派のロシア大統領がクーデターに遭うという設定だが、現実のプーチンだったら自分の手で直接100人ぐらい殺しそうである(^^;
折角のゲイリー・オールドマン特出なんだから、もう少し見せ場を作って欲しかった。
★「アレッポ 最後の男たち」
監督:フェラス・ファヤード
デンマーク・シリア2017年
アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネートされた作品。
ロシア軍の空爆下、シリアのアレッポで爆撃後の瓦礫から人を救出する「ホワイト・ヘルメッツ」の活躍を取材したものだ。そう聞くと勇猛果敢な感じがするが、実際はかなり沈鬱なトーンである。
なぜなら瓦礫の中で人を発見しても既に亡くなっていることが多いからだ。これでは救出にならない。
表向きは町に留まると広言はしても、陰では家族のことを考えると難民扱いでもトルコへ逃げることを考える。が、行くも地獄とどまるも地獄である。
ラストは衝撃の一言。ここに至ってタイトルの意味が分かる。洗練さもなく武骨な作りだが事実の重さが存在していた。
短い停戦期間に作られた小さな遊園地(というか公園)に、子どもそっちのけで大人たちも遊具に乗って遊ぶ光景が微笑ましい(&悲しい)。
★「KIZU-傷- シャープ・オブジェクツ」
米国2018年
エイミー・アダムス主演のTVドラマ・シリーズ、レンタルで鑑賞。
故郷の田舎町で起こった少女連続殺人を女性記者が取材するために帰郷する。待ち構えるは優しく恐ろしい毒母(パトリシア・クラークソン)である。
原作が『ゴーン・ガール』の人なんでイヤさが充満し、意味ありげなフラッシュバックが炸裂する。照明の使い方が心理を反映して極めて効果的。
主人公は飲んだくれてフラフラ徘徊しているだけなんだが目を離せない。心臓がドキドキしてくる。そして掛け値なしの衝撃のラスト……ギャー(>O<) 見返すとちゃんと伏線が散りばめられているようなのだが、とても見返す元気はない。
オリジナルの劇伴音楽は使わず全て既成曲(それも有名な)を使っている。使用料かなりかかっただろうな。
★「幸福なラザロ」
監督:アリーチェ・ロルヴァケル
出演:アドリアーノ・タルディオーロ
イタリア2018年
これは個人によって解釈がバラバラになりそうだ。
すごい山奥の村で侯爵夫人が村人をだまして戦後も小作人としてコキ使い続ける(実際にあった事件)。それが発覚して村は消滅する。しかし、この事件が主題ではない。
誠実で無垢な若者ラザロは、夫人に搾取される村人の中にあっても、堕落した都市の中でも全くスタンス(だけでなく、外見も)は変わらない。それは奇跡か、それとも? もはやファンタジーの領域に入り込む。
聖書中にラザロは二人出てくるそうな。一人はイエスが墓から復活させた男。もう一人は、貧しい病人の男で死後に天国へ行く。そのどちらでもあるようだ。
途中で観客全員が息をのむあの場面、私も驚いた~(!o!)
後半がややまとまりないように感じた。発想と出だしはいいけど、結末を付けかねたような印象である。
でもあのラザロ役の子をよく見つけたものよと感心。キャスティングで80%成功している。
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