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2020年2月21日 (金)

糸あやつり人形一糸座「おんにょろ盛衰記」:毒をもって毒を制しても毒は残る

200221 作:木下順二
演出:川口典成
会場:座・高円寺
2020年2月5日~9日

結城座で45年前に上演した木下順二の民話劇を再演。当時、結城一糸が出演していたそうだ。
「おんにょろ」はどうしようもない乱暴者で村に時々現れては酒やら食物やら金品を脅し取る。さらに村人は元々「とらおおかみ」(虎と狼ではなくて合体した謎の怪物?)の出現に困っている。ある日おんにょろをたきつけて、怪物と戦わせてうまく行けば両者とも共倒れになるのでは……と思いつくのだった。

思いついたはいいけれど、いざとなると腰が引けて逃走してしまう村人たち。その後も思い付きが暴走して不条理な展開となる。ラストではおんにょろは加害者なのか犠牲なのかも定かではない。
これは民衆というものののずるさ(必死の知恵ともいえる)によるのだろうか、それとも神話の根源的な暴力性によるものか。

それを表現するのは役者と人形に加えて女義太夫、歌舞伎囃子、さらに怪物の乱闘場面では京劇が登場する(そもそもこの話の元ネタは京劇とのこと)。まことに文化のミクスチャーで躍動感とエネルギーにあふれていた。
木下順二などという「夕鶴」ぐらいしか知らないので、認識を改めた。

私が見た回はアフタートークがあって、45年前の演出家の人が登場した。木下順二の弟子で90歳だという。楽屋でバレンタイン・チョコをもらったそうで「90になるともう誰もチョコをくれない」と言って笑わせた。身近にいたせいか、却って木下順二については忌憚なくキビシイ回想をしていた。(「『おんにょろ』は木下の唯一の成功作」とか(;^_^A)
当時は緒形拳がおんにょろ役だったそうで、そうすると今回の丸山厚人とはかなりタイプが異なる。朝倉摂が美術・衣装など豪華なメンツだったようだ。初演は1957年で、老女役を山本安英がやったとのこと。
この作品はオイディプス神話をふまえていて、村の立札は神託を表しているそうな。そういえば「3」の数字にこだわるところも神話的だなと思った。


足の悪い高齢のお客さんがいて、段差が多い会場を大変苦労して座席まで歩いていた。会場はチラシに「祝・10周年」と書いてあるからそんな古くないのにバリアフリーには程遠い造りだ。
音楽ホールだともっとストレスなく行ける所が多いから、やはりこれは想定対象年齢のせいか(クラシックの方が年寄りが多い💥)。

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