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2020年2月 9日 (日)

「ダムタイプ|アクション+リフレクション」

200209 会場:東京都現代美術館
2019年11月16日~2020年2月16日

パフォーマンス・グループのダムタイプの展覧会である。といっても、パフォーマンス自体をやるわけではないから、どうなっているのかと思ったら、それまでの活動と並行して制作された巨大なインスタレーションが中心だった。

それ以外には過去の記録--長いガラスケースにチラシやパンフなどを時代順に展示したものと、分厚い大きなファイルがあった。後者は着想メモなども入っているらしいが、私が行った時は一人の中年男性が長時間独占していて全く見ることはできなかった。
前者は行ったことも忘れていたワタリウムでの展示の記録もあったりして懐かしかった。

入ってすぐある16台のターンテーブルの作品はどう鑑賞したらいいのか迷った。それぞれが勝手に音やノイズを光とともに発しては沈黙するというのを、あらかじめプログラムされて繰り返している。
しばらく眺めてから、16台の間をそぞろ歩いてランダムな音に耳を傾ければいいのだと思った。

「LOVERS」は故・古橋悌二名義で過去に東京オペラシティアートギャラリーで展示されたのを見たことがある。それよりもだいぶ狭い空間に設置されているが、これが元々の構想にふさわしいらしい。
裸の男女の映像が複数、周囲の壁にバラバラに投影されてランダムに駈け寄ったり抱き合ったりする(ように見える)。監視スタッフの人に尋ねたら、インタラクティブに客の動きに対応するような仕組みではないらしい。

これを見ている途中に制服姿の高校生の団体が入ってきて、ものすごい勢いで一周して出て行った。その速さに驚いた。美術の授業……なんだろうか。隣でやってるミナペルホネンの方が目当てだったのかもしれない。

壁一面の巨大ビデオ・インスタレーションはソニー系列が協力しているだけあって、とてもクリアで美しかった。ただ、ずっと見ていると目がチカチカしてしまう。

最後にはパフォーマンス「pH」で使用された移動するトラスが縮小サイズで再現されていた。床面数十センチを一定の間隔で進んではまた戻ってくる。上演時にはダンサーはその上を飛び越えたり下を潜ったりしていたものだ。

この展示では床面に入ることができて、客が飛び越えてよいらしい。しかし、あの高さをまたげる人はかなり身長ないと無理では……(^^; 引っかかって壊したりして。私の身長では潜るしかない。
平日に行ったので客が少なく誰もトライする人はいなかったが、休日だったらいただろうか。ぜひ見たかった。

過去のパフォーマンスのビデオは3カ所にあったが、かなり狭いスペースに押し込められていた。もう少し広い場所だったらよかったのに。
過去の活動を映像で見せるのが主眼ではないということなのだろうが、リアルタイムで見てない人はそれでしか知りようがないのから、何とかしてほしかった。

彼らのパフォーマンスを実際見たのは「pH」が1回、「S/N」が2回である。
「S/N」を見て驚いたのはダンサーたちが後ろ向きに倒れてバタンと落ちる動作だった。それまでステージ上であんな動きを目にしたことはないので衝撃だった。
「pH」では3人の女性ダンサーがずーっと動きっぱなしで、床面を容赦なく移動するトラスを飛んだり避けたりする。しかもハイヒールを履いているのだ。
観客はそれを上方から見下ろす形式なのだが、いつか引っかかるのではないかとハラハラしながら見続けることになる。その間中ジリジリとした緊張が続き、見ているだけで冷や汗をかいてしまうのだった。
こちらの記事を読むとやはり大変だったもよう。

なお、都現美では同時期に「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」も開催していて、様々なメディアで紹介されたせいかこちらの方は女性を中心にかなりの盛況だった。
チケット売り場は同じなので、土日は長い行列ができてダムタイプだけの入場券を買うのにも50分待ちだったらしい。

ついでにコレクション展も見た。
岡本信次郎という画家の巨大作品がバカバカしくて面白かった。偏執的かつナンセンスな筆致で自分が生きてきた戦中戦後が描かれ、東京大空襲と湾岸戦争が並列されるのだった。
フィリピン女性への虐待被害を綴ったブレンダ・ファハルドの連作には、日本での事件も出て来てウツになるのは必至だろう。

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