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2020年3月

2020年3月30日 (月)

「2人のローマ教皇」:宿命のライバル対決!ガラスの十字架

監督:フェルナンド・メイレレス
出演:アンソニー・ホプキンス、ジョナサン・プライス
イギリス・イタリア・アルゼンチン・米国2019年

これも『アイリッシュマン』同様、ネットフリックス作品で限定上映されたものである。アンソニー・ホプキンスが生前退位(700年ぶり❗らしい)した前教皇、ジョナサン・プライスが現教皇フランシスコを演じる。

フランシスコはカトリック教会内においては改革派だったのだが、ある日当時のベネディクト16世に呼び出される。後者は複数のスキャンダルが発覚し、批判にさらされていた。
対照的な二人が互いに腹を探り合い、チクチクとやり合ってやがて和解に至るという対話劇である。(実際にはこのような会見はなかったとのこと)
その合間に両者の背景や過去のエピソードが挿入される。反対の立場に立つ二人ではあるが、過去に脛に傷持つ身であることは共通なのだった。
ベネディクト16世は子どもの頃にヒトラー・ユーゲントに所属していたこと。フランシスコの方は自国の独裁政権に協力したことだ。

元は舞台劇ということで、なるほど台詞の応酬が続く。しかし豪華な教皇の別荘やシスティナ礼拝堂(ロケは許可されなくて、セットらしい。予算ありますなあ)と場所を変えるので閉塞感はない。
となれば、当然ふたりの教皇役の演技合戦となる。プライスとホプキンスは各映画祭でノミネート&受賞しただけあって横綱同士の対戦といったところか。
陰と陽、保守と改革、ドイツ対アルゼンチン(サッカー)というように対照的な実在の人物を、オヤジ名優たちの演技を通して垣間見る次第だ。

フランシスコが先日来日した時に赤い法被を着たことがあって「教皇にまで法被を着せる日本ってなに!?」という意見が流れていたが、実際は貰ったらすぐに着てしまうような性格なのだとプライスの演技を見て納得した。
二人はそれぞれ実物にそっくりに似せているらしいが、本物の前教皇は目付きがホプキンスというより「猜疑心に満ちたジョー・ペシ」っぽいような……(ーー;)

演出スタイルについては映画には長し、TVには物足りぬみたいな部分も感じさせた。どちらにしてもネトフリでなくては作れない作品だろう。扱っているのが教会の虐待事件など微妙な内容なのも、商業映画では難しい。

ローマ法王になる日まで』で描かれていた独裁政権下の恐ろしいエピソードが、こちらでも幾つか短いながら登場する。
あの映画ではぼかされていた、彼が管区長から左遷された理由がこちらではハッキリと分かった。それと、若い頃と歳取ってからが正反対の性格に見える理由もである。

さて、『ふたりの女王』ならぬ「ふたりの王女」ではないが、マヤと亜弓が「ふたりの教皇」を演じるとしたら月影先生はどう配役するかな?

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2020年3月27日 (金)

「トールキン 旅のはじまり」:旅から帰還した仲間は二つに分かれて塔で王となった

200327 監督:ドメ・カルコスキ
出演:ニコラス・ホルト
米国2019年

トールキンと言えば『指輪物語』の作者。彼の少年時代から家庭を得て執筆を書き始めるまでをN・ホルトが演じる。
親を亡くして子どもの時から苦労、パブリック・スクールでは仲良し4人組結成(ホビットの原型か)、特に戦死した親友との友情は感動的だ。第一次大戦に従軍すると、その状況が『指輪』と重なる。
もちろんホルトファンは必見。D・ジャコビ、コルム・ミーニイ(懐かし!)が脇を固る。少年時代の子役は繊細な美少年だし、映像については悲惨な戦場までもが美しい。
……と褒めたいのはやまやまだが(-_-;)

見終わって「参考になりました」という感想しか出てこない。まるで「絵解きトールキンの半生」のようである。
言語にこだわり神話までも自分で創り上げようする内的な要因を、形あるものとして映像で描くのは困難なことだろう。だからといって仕方ないと言ってしまえばそれまでよ、である。
ジェフリーとの友情以上恋愛未満な関係も詳しく見せて欲しかった。

何げに様々な部屋で使われている壁紙が見事だったですよ。

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2020年3月21日 (土)

映画落ち穂拾い 2019年後半その2

200322「ピータールー マンチェスターの悲劇」
監督:マイク・リー
出演:ロリー・キニア
英国2018年

ちょうど200年前に英国で起こった市民虐殺事件を複数の人物を通して描く。6万人の市民が参政権を求めて行進中に、命令を受けた兵士が突入する。
マイク・リーは作風からすると、英国怒れるオヤジ監督の系列には入っていないはずだが、辛辣なまでに実直に人々の思惑と行動をたどっている。
終盤の国王(じゃなくて王太子?)は時代劇の「悪代官」そのままだった。「おぬしもワルよのう(^▽^)」だ。

特定の主人公のいない群像劇で、感情移入する人物がいないせいか世評の点数は低い。参政権運動側にも問題があり、その矛盾をそのままに描いている。
しかし歴史において、何かを企み実行した者、何かをしようとして失敗した者だけでなく、何もしようともせず何も出来ぬまま消えていった無名の者も描いた意義は大きい。

それにしても他国との戦争を兵士としてを生きのびた者が、自国の兵士に殺されるとはなんたる皮肉であろうか。


「シンプル・フェイバー」
監督:ポール・フェイグ
出演:アナ・ケンドリック、ブレイク・ライヴリー
米国・カナダ2018年

DVD鑑賞。アナ・ケンドリックとブレイク・ライヴリーという対照的な二人がなぜかママ友に! それだけで不穏♨ 何か起こりそうでドキドキする。
というか、事件が起こるまでが一番サスペンスフルだったかな(^^;) 起こってしまえば、そういう方向に転がっていくのねと肩すかしであった。

二人の華麗なるファッション合戦を楽しめばいいかという気にもなる。
それと、米国の住居事情は日本と違いすぎて目がくらむ。でも掃除が大変そうだけど。


「ミスエデュケーション」
監督:デジレー・アカヴァン
出演:クロエ・グレース・モレッツ
米国2018年

DVD鑑賞。日本未公開作。
クロエ・グレース・モレッツの高校生が同性愛矯正施設に送られてしまう。『ある少年の告白』とほとんど重なる設定だが、あちらは施設の暴力的な閉鎖性や家族の絆を描いていたのに対し、設定の時代は古いもののこちらの方は施設の管理がゆるく暴力度は低い。
その代わりに若者のジワジワと締め付けられる閉塞感が中心となっている。親も良かれと思ってやっているのだから、どうしようもない。

キリスト教の素材の使い方がうまい。同じ施設の若者たちを演じる役者たちも達者。
モレッツは机の下で泣く場面が良かったけど、いつも同じ髪型完璧にキメているのは不自然と思ってしまった(^^;


「アナと世界の終わり」
監督:ジョン・マクフェイル
出演:エラ・ハント
イギリス2017年

DVDで鑑賞。ゾンビものは苦手だが面白そうなので見てみた。ゾンビ&🎵ミュージカルという大胆な合わせ技で、郊外の高校生活・青春の鬱屈・親との対立・若者の自立などなどがごった煮の如く投げ込まれている。
正統的なゾンビ映画やミュージカルファンは基準が高くなるので評判悪いようだが、どちらにもシロートな者には結構楽しめた。

ヒロインは幼馴染の子をいぢめるようなヤツを好きになるのか?と疑問を呈した人がいたが、私も同感である。
終盤のお父さんの歌には泣けました。(私もトシですかねえ)
しかし彼らはどこへ向かうのか。答えは風だけが知っているのであろうか。
クリスマス映画でもあるので、ぜひクリスマス時🎄に鑑賞をお勧めしたい。
どうでもいいけど、ステージで歌った子は宮沢りえに似てないか(^^?

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2020年3月20日 (金)

「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」:不良女王と呼ばれて

200320 監督:ジョーシー・ルーク
出演:シアーシャ・ローナン、マーゴット・ロビー
イギリス2018年

DVD鑑賞。言わずと知れたメアリー・スチュアートとエリザベス1世の対立をフェミニズム的視点から見て、双方の和解を男たちが足を引っ張り阻んだとする重厚な歴史劇。まさしく「ヒストリー」ならぬ「ハーストーリー」なのだ。
若く奔放なメアリーと老練なエリザベス、両者を並行して描き、二人の対面は一度だけである。実際の撮影でもローナンとロビーはあの場面でだけの顔合わせとのこと。
演技合戦は迫力の一言。衣装やヘアメイクも素晴らしい。

監督が演劇畑の人ということで「なんか芝居っぽい。このまま舞台になりそう」と思ったのは事実だ。対面シーンの演出も舞台風である。映画的かというとちょっと疑問になってしまう(ーー;)
ストレートに見た面白さという点からいえば、同時期の「女王もの」である『女王陛下のお気に入り』の方に軍配が上がる。

邦題は『ガラスの仮面』に登場する劇中劇を意識してるのだろうか? マンガにならって配役するなら、エリザベスが亜弓でメアリーがマヤになるかね。

劇中のスコットランドでのダンスシーンや宴会シーンで使われている音楽は古楽系奏者を使っているもよう。ダウランドの曲が出てきたと思ったけど、なぜかクレジットには出てこなかった。

なお、DVDの特典メイキング映像を見ると、ローナンと侍女役の女の子たちは常に集団でキャイキャイしてて、映画の内容とは逆に周囲の男性陣(キャストとスタッフ)に脅威を与えていたらしい。若い娘っ子は群れるとコワイからなあ(>y<;)

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2020年3月17日 (火)

「薔薇はシュラバで生まれる」

200317 70年代少女まんがアシスタント奮闘記
著者:笹生那実
イースト・プレス2019年
→A5判だけど装丁はコミックス仕様。

1970年代に少女マンガ家たちのアシスタントをした経験を綴った回想録マンガである。数々の名作誕生に立ち会った体験は貴重なものだ。
一番多く登場するのは美内すずえ、そしてくらもちふさこ、樹村みのり、三原順、山岸凉子などなど。それぞれのマンガ家の顔がその作風のタッチで描かれているのが面白い。
他にも綺羅星のごとく当時のマンガ家たち(私も愛読しておりました)の名が方々に登場する。

迫る締切にカンヅメで不眠不休食事もせず風呂も入らずというような描写から、シュラバの定番「コワイ話」もあり。ただ、さすがに男性のマンガ家みたいに窓から逃げ出したというような逸話はない。

個人的には樹村みのりが作品そのまんまの人物なのに感動。真面目かつ頼りになる人柄ですね✨ 三原順は人物像を全く知らなかったので、これまた感慨深かった。
名編集者の小長井氏は、二年前に一度持ち込みをして作品を見せた著者に「何してんですか?」と電話をかけてきたという。こまめに新人フォローしてたんだなと感心。

意外だったのは、あの『天人唐草』は「青春もの」をという依頼で描かれたという! ええーっ、あの恐ろしい話が青春……(>y<;) さらにその後日談はファンには感慨深い。
そして、『ガラかめ』月影先生の(一張羅の?)黒服は作者も「暑そう」と思いつつ描いていた。いや、美内先生たまには涼やかな白の夏服を月影先生に着せてくださいよ~💨
などなど驚くエピソード多数であった。

当時の少女マンガの愛好者、興味のある人は読んで損なしだろう。特に同時代の読者なら感動の涙は必至。
しかし、マンガ描くのもデジタル化した今は、もうシュラバ(場所としての)は存在しないんですねえ。

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2020年3月15日 (日)

「時はたちどまり」:厳戒態勢につき異例尽くし

200315 パルドンレーベル30周年記念コンサート
演奏:つのだたかしほか
会場:ハクジュホール
2020年2月29日

新型コロナウイルス警戒中⚡ でもコンサートは行っちゃいました~(^O^)/
つのだたかし主宰のパルドンレーベルが30周年祭りとなり、それを記念するメデタイものなのである。そのためか事前にはチケット完売とのことだった。
がしかし(!o!)蓋を開けてみると、かなり空席が目立って寂しかった。この非常時ゆえ外出を控えて来なかった人が多かったもよう。チケット代返金も検討というアナウンスもあってか、取りやめた人が多かったようだ。

前半はレーベルからソロアルバムを出している歌手3人(冨田みずえ、鈴木美紀子、波多野睦美)がそれぞれつのだ氏のリュートと共に歌った。
鈴木美紀子はフランスもので、他の二人は英国ルネサンス歌曲だった。前半の締めにモンテヴェルディの「西風はまたもどり」を三人で(二声用の曲だが)歌った。その効果あってかまるで風がわき立つように声が会場に響き渡ったのであった。

後半は一転してタブラトゥーラが登場。
普段の公演ではつのだ団長から聴衆に向けて「ブラボー!」の声かけが要請(強要)されるのが通常。ところが今日は唾が飛んで感染リスクありということで、なんと「ブラボー」自粛の要請があったのだった。(!o!) こんなことはタブラ史上初ではないか。大変な事態である。
しかし演奏の方は通常運転で自粛してなかったけど👊 時間が押しているということで、恒例の楽器紹介は猛スピードで行われた。これまた異例だ。

ラストはまた三人の歌手も加わって、ジプシーについて行ってしまう領主の奥方の曲をやって盛り上がった。
人に歴史あり音にも歴史あり、ということを感じさせるコンサートだった。ウイルスにも負けず聞けてヨカッタ🎵


ただ、前半にトラブルがあった。
途中で中年男性がバサッと自分の膝からプログラムやチラシを払い落としたのだ。デカい音立てて二度も、である。それも舞台で歌っている最中だ。落としてしまったから拾うのかと思ったら何もせずそのまま。
と思ったら、今度は隣に座っていた女性が同じ列の空席に移動したのだった。
で、休憩時間になっても拾わず床にばらまいたままなのである。と思ったら、ロビーでスタッフに何やら大きな声で文句をつけている。空席があるのだからそれぞれ離して座らせないのはおかしいと言っているようだった。

事情はよく分からないが、推察するに席がたくさん空いているのに自分の隣席に座っているのが気に入らなかったのではないかと思われる。それで気に食わなくてヒス(オステリー)を起こしてチラシをわざと落としたのではないか。それに男性の横は3人分空席だったので、イヤだったら自分が移ればいいのだ。

でも本来は完売なのだから、座席は全部埋まっていることになるはず。途中から来る人もいるだろうし。それを主催者側が勝手に振り分けて均等に座らせるわけにはいかないだろう。

なんかお子ちゃまではないんだからさあ……いい歳こいた大人がやる事ではない。音立ててコンサート自体妨害しているわけだし。
結局、そいつは後半も聞いてたけど最後まで床にチラシぶちまけたまま帰っちゃった。

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2020年3月11日 (水)

「国家が破産する日」:倒れる人儲ける人憤る人

監督:チェ・グクヒ
出演:キム・ヘス
韓国2018年

1997年に韓国で起こった未曾有の危機である通貨危機を虚実織り交ぜて描く。
経済ものには弱いんで『マネー・ショート』の時には理解しているか自分でいささか心もとなかった。内容についていけなかったらどうしようと思ってたが、実例付きで見せてくれたのでよーく理解できた(という気になれた)。

ほぼ相互に関係ない異なる立場の三者のエピソードが並行して描かれる。
韓国銀行の通貨政策の担当者、危機を見越して銀行を退職した金融コンサルタント、そして庶民代表である町工場の経営者である。
これによって事態が重層的に示される。特に町工場の状況は悲惨。景気がいいからと新しい製造機を発注した途端に危機が始まり……全てを失う。
まさに社会派映画のお手本のようだ。もうこの分野では日本映画はかないませんねえ(+_+)

危機が高まるとIMF(背後に米国あり)が出てきて、手を差し伸べるがそれは極めて悪条件であった。この交渉役にヴァンサン・カッセルが出てくる。このキャスティングはうまい。慇懃無礼でぴったりハマっている。
しかしこの悪条件って、日本でもいつの間にか全く同じ状況になってるじゃないの。非正規雇用とか保険の外資参入とか……⚡ どこの国にも「亡国の輩」「売国奴」はいるんだなあとよーくわかった。

財政局次官演じたチョ・ウジンの悪役演技はお見事なものだった。韓国銀行の女性担当者に対してモラハラ、セクハラ的言動やり放題💢 スクリーンに向かって物を投げたい気分になった。

この映画にも相手の年齢尋ねる場面出てくる。やはりこだわるのだな。

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2020年3月 7日 (土)

「リコーダーで奏でるナポリと南イタリアの原風景」:ウイルスにも勝つ!ナポリ愛

200307 ソプラノ、バロックチェロ、チェンバロとともに
演奏:イル・メルロ
会場:近江楽堂
2020年2月28日

新型コロナウイルス感染症のため続々と公演中止続く中、行ってきちゃいましたよ。
リコーダー奏者「桐畑奈央 帰国記念演奏会」と銘打たれているが、実際はソプラノ小野綾子、チェンバロ上羽剛史の3人組イル・メルロの本邦デビュー公演と考えていいみたいだ。
彼らは同時期にミラノの音楽院にいてアンサンブルを組んでいたとのこと。

この日はゲストでチェロの懸田貴嗣が参加して、ナポリ楽派のリコーダー作品を中心に演奏した。
ファルコニエーリのソナタで開始。アンサンブル曲、ソプラノ独唱曲、チェンバロ・ソロなどを交えて展開した。

パンドルフィ・メアッリのソナタは桐畑奈央のリコーダーが攻めまくり、聴衆が「おお」と息をのんで聴くような勢いだった。
一方、マンチーニのリコーダー・ソナタは「鍵盤の練習にも最適」と楽譜に書かれているほどにチェンバロにとって難しいと、上羽氏はコメントしていたがその割にはノッて弾いていたような。息子スカルラッティの独奏曲もお見事であった。
楽器は会場備え付けでないチェンバロ(イタリアン?)で、それについての話も聞きたかった。

ポルポラや親スカルラッティをうたった小野氏については声量の豊かさに驚き。近江楽堂では狭すぎてはみ出しているような印象だった。オペラの舞台なんかでも聞いてみたい。
彼女は音楽院でのイタリア人(特に女性)とのコミュニケーションの取り方が難しくて、日本人とアンサンブルを望んでいたとのこと。それについて、先輩の懸田氏に話を振ったが彼は言葉を濁してあまり語らず……。
こういう時は「いやー、こんな出来事があって」と聴衆の驚き&同情をかき立てるようなエピソードを披露してほしかったぞ。

全体にナポリ愛に満ち満ちたコンサートだった。ウイルス感染騒ぎでギリギリな時期だったけど、聞けて良かった(^^)v
ただ、咳を過激にゲホゲホとしている人がいて、周囲の客を少なからず恐怖に陥れていた。カンベンしてくれ~💦

ところで、懸田氏は終演後に「親子ほど年齢が違う」とか話していたのを耳にした。本当にそんなに差があるの❓

オペラシティのチケットセンターでは、ジャルスキーのポスターに「公演中止」の無情なシールが貼られていた。
( -o-) sigh...

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2020年3月 4日 (水)

「人生、ただいま修行中」:この校門より入る者、全ての希望と絶望を抱け

監督:ニコラ・フィリベール
フランス2018年

パリ近郊の看護学校、入学した若者達の授業や実習の様子を淡々捉えていくドキュメンタリーである。ナレーションはおろか字幕ですら入らない。ただ映像をつないでいく手法だ。

最初はそれこそ手の洗い方から開始。医療関係者にとっては当たり前であろう基礎の基礎授業が続く。この方面に全く無知な人間にとっては「ふむふむ、なるほど(・_・)」などと新鮮に感じる。
淡々とはしていても引きつけられて見てしまうのだった。

さすがフランスだけあって、生徒の人種も民族も様々だ。教員たちが彼らに真摯に助言する様子にも密着する。

カメラは若者たちに寄り添ってはいるが、親和的というわけではなくあくまでも客観的にとらえる。邦題はホンワカなイメージを与えるが実際に見ると違う。冷静な眼差しで、生徒が突き当たる壁も描く。
それでも、実習先で四苦八苦する姿の描き方などさりげないユーモアは忘れない。

病院での実習を終えて、自分の活路を見いだす者、困難な現場をうまく乗り切ったタフな者もいれば、実習先になじめなかった者もいる。
とある生徒は、HIV検査に来た売春婦(お金がなくてゴムが買えなかった)にうまく対応できなかった事案を泣きながら報告する。さらには期間中に自宅で盗難事件発生してピンチ💥なんてケースもあり。
まだ若くて同じスタートラインは同じに立ったばかりだというのに、早くも人それぞれに差がついて分岐点が生じる。
そしてそれは彼ら自身にはどうにもできないことなのだ。

そんな人生の悲喜が映像を通して静かに浮かび上がってくる。優れたドキュメンタリーである。

しかし実習先で慣れない生徒たちの「実験台」になる患者はよくおとなしくしてるなあ。日本だったらキレる💢中高年で怒鳴りまくりそう(ーー;)
子細を見せているのに、生徒や教員の名前や個人情報は一切出てこない。徹底さに感心。

パンフレットから監督の言葉を引用している人がいて、それに感心したので以下にさらに引用させてもらう。
「初めてカメラを手にしたとき、私はプロのカメラマンよりも“綺麗”で素晴らしい映像を撮ろうと考えたのではなく、映す範囲(フレーミング)を制限しようと考えました。すべてを見せたいという誘惑に負けないためです。」
「フレームやカメラの中に収めるもの/収めないものの境界線は美的な問題だけでなく、倫理的、政治的問題でもあるのです。」

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2020年3月 1日 (日)

聞かずば死ねない!古楽コンサート 3月版

行く予定だったコンサートが相次いで中止で_| ̄|○ガックリ。
演奏家の方々も死活問題ですね。10月の台風で延期した振替公演が、また今回延期という気の毒なケースもあり。

*2日(月)スパニッシュ・プログレッシブ・バロック(メディオ・レジストロ):近江楽堂
*7日(土)フロットラ 16世紀イタリアの詩(ヴォックス・ポエティカ):松明堂音楽ホール
*19日(木)・20日(金)バロック絵巻 アモールとプシケ(アントネッロほか):紀尾井ホール 中止
*21日(土)光の庭プロムナード・コンサート イタリアとフランスの息吹(原田真侑&前澤歌穂):彩の国さいたま芸術劇場情報プラザ ♪入場無料 中止
*  〃   チェンバロの魅力7 混ぜる(大塚直哉&宮田まゆみ):神奈川県民小ホール
*  〃   謎解きバロック3 テレマン(藤原一弘ほか):近江楽堂 延期
*25日(水)スカンデッロ ヨハネ受難曲 16世紀ドレスデン宮廷ルター派の受難曲とモテット(ベアータ・ムジカ・トキエンシス):日本福音ルーテル東京教会 ♪28日に小石川公演あり 延期
*28日(土)オーボエとリュートで巡るヨーロッパの旅(大山有里子&中川祥治):近江楽堂 延期
*  〃   音楽と美術の幸せな結婚5 国際都市ロンドンのアートシーン(大塚直哉ほか):よみうり大手町ホール
*31日(火)バッハ ヴァイオリンソナタ全6曲演奏会 祝335歳お誕生日コンサート(荒木優子&上尾直毅):近江楽堂 延期

以下中止(T_T)/~~~
*3日(火)華麗なる、イタリアン・バロックの世界(ファビオ・ビオンディ&エウローパ・ガランテ):王子ホール
*10日(火)めくるめくバロック音楽ツアー(アマンディーヌ・ベイエ&リ・インコーニティ):王子ホール
*13日(金)フィリップ・ジャルスキー&アンサンブル・アルタセルセ:東京オペラシティコンサートホール
*15日(日)ヴィヴァルディ 四季(アマンディーヌ・ベイエ&リ・インコーニティ):三鷹市芸術文化センター風のホール

ライブに行けない代わりにNHK-FM「ベスト・オブ・クラシック」の古楽ウィーク(9~13日)を聴くしかありません。

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