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2020年4月16日 (木)

「ブレッドウィナー」:まぼろしの闘い

200416 監督:ノラ・トゥーミー
声の出演:サーラ・チャウドリー
アイルランド・ カナダ・ルクセンブルク2017年

原作は児童文学(絵本?)。原題の『生きのびるために』のタイトルでネトフリ配信されたアニメを、後になって劇場公開したらしい。
ブレンダンとケルズの秘密』を作ったカートゥーン・サルーンの制作で、監督もそちらで共同監督をやっていた一人である。

主人公はタリバン支配下のアフガニスタンに家族5人で暮らす少女である。戦乱の中で父親は教職を追放、持ち物を路上で売って生計を立てている。ところが父親が逮捕されてしまい、女が一人で外出することもできない社会では生きていくこともできない。
その時、友人が少年に化けているのを目撃する。

今まで水くみにも市場へ出かけるにも罵られ、ビクビクしながら隅っこを歩いていたのが、髪を切って「少年」になった途端に何でもできるようになる新鮮な驚きが綴られる。そして家族のために日銭を稼ぐのだった。

素朴な絵柄は恐らく原作の通りなのだろうが、内容は極めて苦しくシビアである。その中で苦難と闘いつつ幼い弟のために語る民話風の物語が、エンデの『サーカス物語』風に交互に挿入される。こちらは勇気を与える物語だ。切り絵風のストップモーション・アニメになっていて楽しい。

女が自由に生きる余地はないが、男も戦禍に巻き込まれるしかない。主人公に憎悪を向けるタリバンの若者があっけなく戦地に動員されるのはその象徴だろう。
見ていてつらくなるような世界である。
しかしそれでも生きていかねばならない。殺伐とした現実と色彩豊かな民話、それぞれの主人公は試練を生き延びることができるだろうか。

作品の完成度は高く、アカデミー賞をはじめ様々なアニメ賞にノミネートされたのも納得だ。

それにしても、女と子供だけになった一家が生活する手立てが、若い娘が嫁に行くしかないとは(=_=) 嫁以外の家族は付属物のように嫁ぎ先でぶら下がって寝食を確保するのだろうか。やはりつらい……💧

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