« 【回顧レビュー】「愛は恐ろしきもの」 | トップページ | 【回顧レビュー】東京グランギニョル「ワルプルギス」 »

2020年5月24日 (日)

「プリズン・サークル」:罪と罰の狭間

200524 監督:坂上香
日本2019年

島根に新しい半官半民の刑務所があり、そこだけで唯一行われている犯罪者更生プログラムを取材したドキュメンタリー。
「初めて日本の刑務所にカメラを入れた」という惹句が誤解を招くかもしれないが、主題は刑務所ではなくあくまでもプログラムの方である。特別な刑務所だから許可が出たというのはあるだろうけど。

そもそもそのプログラムは、坂上香監督の過去作『ライファーズ 終身刑を超えて』が取り上げた米国のアミティという更生プログラムを参考にしたものなのだという。監督は半信半疑で取材に行って実際に見てビックリしたらしい。(この映画もプログラム参加者に見せていたそうな)

参加者は数十人だが、その中の若者4人を2年間かけて取り上げている。詐欺の受け子のような比較的軽い犯罪から傷害致死まで様々だ。
少女は夜明けに夢をみる』では厚生施設の少女たちがみな顔出ししているのに驚いたが、こちらでは受刑者の顔にはボカシが入っている。個々のインタビューの時間が長いのでどうなるかと思ったがそれほどの支障はなかった。

最初「傷害ならともかく窃盗のどこが悪いかわからない、自分もやられたし」と語る者や、プログラムが始まった頃に「まあ、こんなもんかな」といい気なことを言っている者がいて、なんだコイツ~(-_-メ)などと見てて怒りがわいてくる。
ところが課程が進むうちに、変わっていく。
犯した犯罪を「許したい自分」と「許せない自分」の二つ立場から語る課題では、段々と自分が許せなくなってくる。また、グループの中の一人の犯罪について、他のメンバーが被害者や迷惑をこうむった家族の役を演じて問いかけ語りかけるというのもあった。
これで双方の立場を理解する助けになる。

受刑者に時間と費用をかけてそんなプログラムを受けさせる必要はないという意見もあるだろう。しかし、これが無ければ刑期を終えて「どこが悪いかわからない」という認識のまま社会へ戻ってしまうのを考えると、この試みが必要なのを感じる。
一方で研修スタッフ(若い人もいる)がちゃんと支援しているのも驚いたり……。形だけ真似すると学校のグループ学習みたいになっちゃうよね。

4人に共通しているのは子どもの頃の家庭内の虐待と学校のいじめである。まるでセットになっているようだ。それからここへ来るまで、他者に自分の話をまともに聞いてもらったことがないというのも。
インタビューを見ているとかなりハードで、段々と自分の中にも何やらモヤモヤしたものが立ち昇ってくる。
「退屈だった」という感想を見かけたがいただけない。エンタメ映画じゃないんだぞ💢

同じ坂上監督の「ライファーズ」見逃しているんで見てみたくなった。(『トークバック 沈黙を破る女たち』の感想はこちら
なお「初めて刑務所にカメラが……」という件だが、かなり以前にTVでたまたま九州(?)かどこかの刑務所に取材したドキュメンタリーを見たことがあるので違うのではないでしょうか(^^?
その刑務所内にはなんと近くの公立中学校の分校があって、希望すると学べるというのだ。さらに特別に卒業式にも出席できるというのである。

|

« 【回顧レビュー】「愛は恐ろしきもの」 | トップページ | 【回顧レビュー】東京グランギニョル「ワルプルギス」 »