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2020年5月20日 (水)

「フォードvsフェラーリ」:サーキット萌ゆ

200520 監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:マット・デイモン、クリスチャン・ベイル
米国2019年

公開時絶賛の嵐だったので大いに期待して、近所の映画館でやっているのにわざわざ音響のいい都心のシネコンまで見に行った。
が……どうも私にはあまり合わなかったようだ。なんだか判然としない部分があまりに多すぎる。

タイトルだけ見るとフォードとフェラーリが産業界の覇権争いで激突か💥、予告を見ればカーレースで対決か👊みたいな印象だが、実際にはフォード内部の抗争(権力争い?)に終始する。
だが、その抗争の肝心の部分は何やらモヤモヤして曖昧模糊、きちんと描かれていない感が強いのであった。

社長にいつも取り入っている副社長が、レースで看板を背負っている主人公の二人をいつもいぢめるのは何故なのか。他のチームを贔屓にしているからか、二人を取り立てたのが対抗派閥のアイアコッカだからか?
一方、アイアコッカは最初だけ動くけど、後は立ってるだけで何も関わらない。ストーリー上はいてもいなくても変わらない存在である。

演技のうまい役者がいっぱい出てきて、友情やら愛情やら敵対やら人間関係はよく描かれているものの、その背景や理屈の説明はない。だからその関係自体に萌えられる人はいいが、そうでない人は何を見ているのかよく分からなくなる。
クルマやカーレースについてもやはり重要なところが欠けているようだった。これは私がその方面に無知だからか。

戦争映画を例にしてみよう。
気まぐれなエラい将軍がいてその下に将校たちがいてなんだか勢力争いがあるようだ。で、とある小隊の兵士二人が主人公なんだけど、大佐が嫌がらせしに来たかと思うと中佐は差し入れしてくれたりして、その理由はよく分からない。
部隊にはもっと他の兵士がいるはずなのだが、中心の二人以外は一人ぐらいしかまともに出てこない。
そのうち戦闘が始まってもう大騒ぎ、砲撃はドンパチ来るし銃弾はビュンビュンとかすって、音も映像もすごい迫力で見ててウワー⚡ってなる。
でも、作戦自体の経過はどこがどうしてどのように優勢だったのかはよく分からないし説明もない。ただ「勝敗が決まった(!o!)」と盛り上がった姿が描かれるのみ。
こういう調子で終始する。

あと、マット・デイモン扮する技術者が謎。相棒のレーサーといつもじゃれ合っているが、彼の奥さんに正対することができず、家の外の道路に停車して黙って待っているという始末。そのくせ街中を偉そうに轟音立てて車を走らせるとゆう……中学生ですか(^^? 実話だからそういう人物だと言われればそれまでだが。
しかも映画の作り手はこのような行動を微笑ましいとして好意的に描いているようだ。奥さんに彼らを寛容に見守らせているのはその証拠であろう。なんだか「男だけの世界」にすると女気皆無だから、とりあえず妻も入れてみましたみたいに感じるのはうがち過ぎか。

というわけで、わざわざ遠くで追加料金払って観た意味はあまりなかったのである。絶賛評が多いので、一人ぐらいこういう感想でもいいよね。

相棒役のクリスチャン・ベイルは、難しそうな人物をいつも強風のために折れ曲がったまま傾いて立っているカカシのように飄々と演じていて感心した。オスカー候補落選は残念無念。


観る前から「アイアコッカいわく~」というのが口癖の、TVドラマの登場人物がいたよなあ……とずーっと思い出そうとして思い出せず。見終わって1時間した頃にようやく頭にポッと浮かんだ。
『マイアミバイス』のうさん臭い情報屋だ!

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