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2020年6月11日 (木)

【回顧レビュー】ロマンチカ「奇跡御殿」

200521t 平常が戻るまで昔の公演を振り返る。演劇編。

会場:シードホール
1991年9月

ロマンチカは当時女性だけの劇団だった。これはジャン・ジュネの複数作品を構成し、5人の女優が浮浪者の少年たちを演じたものだ。
「女が演じるんじゃジュネは喜ぶまい」という人もいたが、果たしてどうか。
役者も美術も脚本も完璧。汚濁と崇高--その先鋭的な美意識が空間に充満し、見ている間ジワーンと恍惚感が頭の中に反復しているようであった。

冒頭とラストに全く同じ場面が繰り返し演じられるのだが、同じはずなのに二度目になった時には全く意味が異なって見える、という手法も衝撃的だった。
渋谷の街を興奮して帰っていったのを今でも覚えている。

こう書いてきて思い出すのは、踊るように素早く動く彼女たちの身体の動きと裸足の足がひらめく様である。そして舞台に響く微かな足音。
振り返って考えてみると、この足音こそナマの舞台にしか存在しないものではないか。

映画やTVには舞台同様の笑いや涙や叫びやため息も音楽もなんでもある。しかし、ナマの役者が舞台上で動いて立てる音が床板に反響し、さらに会場へ僅かなエコーと共に伝わっていく、あの感覚は存在しない。

演劇に限らず「舞台」というものにはそれがある。そして他のメディアでは決して生じないのだ。もしあったとしてもただのノイズとされるだろう。あれこそがライヴというものの存在の証明であるように思える。

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