「黒い司法 0%からの奇跡」:二歩進んでは三歩下がる
監督:デスティン・ダニエル・クレットン
出演:マイケル・B・ジョーダン
米国2019年
チラシの写真を見ると、マイケル・B・ジョーダン扮する若い弁護士が人種問題がらみの裁判で悪党をちぎっては投げちぎっては投げ--という胸がすくような実話を期待するけど全然違った。
まあ、監督が『ショート・ターム』の人だから当然と言えば当然だろう。青少年保護施設を舞台にしたあの映画では新人スタッフ(今思い返せばラミ・マレックだったのね)が早々にドジをする。
こちらの若手弁護士は失敗はしないが、色々な壁にぶち当たる。ウヨウヨと紆余曲折、なんでこんな事になるのか、法律も何もあったもんじゃねえという内容だ。壁にぶち当たって三歩後退して二歩やっと進む。
英雄的では決してなく、日常としての「今ここにある差別」に対処していく姿が描かれるのであった。
M・B・ジョーダンは順当にカッコよかっけど、主人公よりも二人の死刑囚と一人の囚人の人物像が迫力だった。
中心となる冤罪事件では、犯人にされたジェイミー・フォックスはこういうサエない普通の男を演じさせるとうまい。
またその隣室の死刑囚はずっと「なんであんな事してしまったのか」と苦しみ悶える。
そして執行当日に自分の好きな曲をかけてもらい「今までこんなに気遣ってもらった日はなかった」と語る言葉がかなり衝撃的だった。(某重大事件の犯人も似たようなことを言ってなかったか?)
それと最初の証言を翻して再証言する囚人役も目を離せない。残っている当時の本人のビデオを参考にしたんだろうけど、それにしても……である。
社会派や裁判もののファンだけでなく、『プリズン・サークル』に興味があるような人にもオススメしたい。
エンド・クレジット後半のギター曲が気に入ったけど、タイトル見損なったのが残念。その他、作中にも色々と当時(1980年代)の音楽が登場する。
なお、邦題は原作の翻訳書のタイトルをそのままを使っている。昔は黒人が主人公の映画にやたらと「黒い」を付けたけど、今はもう変えた方がいいんでは(^^?
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