「娘は戦場で生まれた」:想像の埒外
監督:ワアド・アル=カティーブ、エドワード・ワッツ
イギリス・シリア2019年
2012年から激動するシリアの状況をスマホで撮り続けたドキュメンタリー。
アレッポ大学在学中に反政府デモ活動に参加した女性が、空爆が激しくなる中も反体制派の拠点であるアレッポに留まり撮影し、それを発信していく。
その間に、負傷者を治療する救急病院の医師と結婚しマイホームを得て娘も誕生する。そんな日常のホームビデオっぽい映像が全く境がなく、そのまま激しい砲撃が襲う街に繋がっていく。その落差に衝撃を受ける。
その悲惨な状況は、あまりに怪我人が多いので病院に運ばれてきてもベッドがなくて床の上で診断を下すしかないほどだ。
病院で撮影していると運び込まれた負傷者の母親が突然「撮っているの!」と彼女に向かって叫ぶ。当然、そんな時にカメラを回しているなんてひどい💢と怒るのかと思いきや、「(この有様を)全部撮って」と言うのである。
あまりにも恐ろしい状態で、見ててボー然とする。自らの想像力の限界に倒れたくなってしまった。
それにしても、このような中で家庭を作り共に生きていこうとする意志の強さに心を打たれる。
彼女は娘を生んだから強くなったのか、強いから娘を生めたのか--平和な日本では考えもつかない。
ところで同じくやはりシリアを撮って共にオスカーの長編ドキュメンタリー賞(2019年)候補になった『ザ・ケーブ』(監督は『アレッポ 最後の男たち』の人)の方は結局公開ないんですかねえ。
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