「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」:被害者からの脱出
監督:フランソワ・オゾン
出演:メルヴィル・プポー
フランス2019年
フランソワ・オゾンがいつもの作風を封印✖ カトリック教会の聖職者による少年への性的虐待事件(実話)をシリアスに描いたものである。
とある司祭に虐待の被害を受け、数十年経過した後に告発した3人の男性をリレー形式に取り上げている。彼らは社会に広く呼び掛け、被害者団体を作って加害者の司祭だけでなく隠ぺいした教会をも告発するのだった。
だが、教会からは無視、社会からの反発など様々な困難が続く。
中年になって自分の妻や子どもに被害体験を明らかにするのは勇気がいるだろうが、身近な人の支えがなくては戦うのは難しい。そのようなジレンマがあるし、被害者も一枚岩ではない。
一人は信仰が揺らぎ、別の一人は団体のリーダーになって行動し、もう一人は完全に人生が破綻している。
さらにまだ一人いるのだが、彼は「仲間に嘲笑される」と告発に参加するのを拒否するのだった。
カトリック教会と言えば国境を越えた巨大権力組織でもあるわけで、それに対する闘いをあくまでも個人の視点から訴えている。
これらを淡々とじっくりした調子で描いていくから、所によっては単調に感じられるかもしれない。しかし、数十年間にわたる沈黙の意味と個人の煩悶を描き、さらに団体を作る経緯やその意義という面まで踏み込んでいるのはこれまでになかったことだ。
社会派作品として見る価値大いにあり💡
ところで、被害者は資産家が多いなあと思って見ていたら、加害の舞台となったスカウト活動は費用が掛かるので金持ちの子弟じゃないと参加できない、とのことである。なるほど……(;一_一)
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