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2020年11月21日 (土)

ヘンデル「リナルド」:戦わぬ主人公に勝利はあるか

201121 演奏:バッハ・コレギウム・ジャパン
会場:東京オペラシティコンサートホール
2020年11月3日

コロナ禍の中、BCJによる『リナルド』が上演された。指揮は鈴木優人である。神奈川でもやったが、私は初台の方に行った。チケットはだいぶ後に取ったので座席はかなり後ろの方。もちろんオペラグラス持参だ。
そもそもは海外から歌手を招くはずだったが、コロナウイルスの影響で全員日本人のキャストとなった。

過去にこの作品を見たのは、NHK-BSで放映されたグラインドボーン音楽祭でR・カーセンが演出したものと、昨年の北とぴあ音楽祭である。
そして忘れていた……というか他のヘンデル作品だと勘違いしていたっぽいのだが、2009年にもBCJが上演していたのだった。この時は演奏会方式で、歌手は衣装を着けていたが装置やセットはなしだった。

今回は「セミ・ステージ方式」ということでオーケストラの手前に簡単なセットがあった。一角にオタクっぽいスペース(?)があってそこがリナルドの部屋ということらしい。
オタク少年のリナルドが新作ゲームを購入、初回特典のアルミレーナのフィギュアを眺めてニヤニヤしつつ本編開始。
というわけで、十字軍の戦いはゲーム内の出来事で主人公はプレイヤーとして参加しているという設定なのだった。ホールのロビーには「バンダイ」ならぬ「ヘンデル」のゲーム・ポスターまで貼ってあった。

タイトル役は鈴木大地で安定感ある歌唱、森麻季はいかにも華やかなお姫様然としていて役柄にぴったりだった。アルガンテの大西宇宙は敵役らしく貫禄あり、魔女アルミーダの中江早希のユーモラスな演技と迫力ある歌声に会場は大喝采だった。特に一升瓶を振り回して暴れる場面は非常にウケていた。
しかしそのバックで鈴木優人&大塚直哉が2台のチェンバロで向かい合い、往年のヘンデルが腕を見せたであろうパートを引きまくっていたのを忘れてはならぬ。
鍵盤男子萌え~💕

コンミスは若松夏美、パーカッションの菅原淳がエラーい迫力で会場をギョッ💥とビクつかせていた。水内謙一はリコーダーの他に鳥笛(?)を吹き、さらに最後は鳥(長い針金の先につけた紙製のヤツ)まで飛ばせていたのはご苦労さんでした。

この演出では、リナルドはほとんど実質的には戦っていなくて「アルミレーナたん(^Q^;)ハアハア」とゲーム内をウロウロしているだけだ。実際に闘うのはゴッフレード&エウスタツィオ(久保法之&青木洋也)なのである。アルミレーナは仮想空間アイドルだから自分から能動的に動くことはない。
なので真の主役は敵方のアルミーダ&アルガンテとしか見えない。まあ、元々ヘンデル・オペラの主人公は情けないパターンが多いのではある。とはいえあまりにリナルドは空洞化してないか、という印象だった。

振り返ればグラインドボーン版では学園のいじめられっ子、北とぴあ版では童話に登場するような少年少女--だったからやはりリナルドは頼りなくても仕方ないのか。


オペラシティのコンサートホールはオーケストラ用で段差があまりなく、やはりオペラ向きではないと感じた。リナルドが座ってて何か持っているのは分かるのだがオペラグラスで覗いてもなんだか分からない。理屈で考えてゲームのコントローラーかと推測した。
それとゴッフレードが手に持っていた鎖の付いた物も不明(2階席なら分かったかも)。方位磁石だろうか?時計?

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