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2021年1月

2021年1月28日 (木)

「ある画家の数奇な運命」:アーティスト人生双六

210127a 監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:トム・シリング
ドイツ2018年

画家ゲルハルト・リヒターをモデルにした映画でナチスがらみだという--となれば、絶対に見なくてはイカン!と勢い込んで見に行った。
もっとも主人公の名前は違うし、本人が喜んで監督の取材に応じたにもかかわらず完成後に「こんなのは自分じゃない」と否定したとか。(元々、変わった人物らしい)

ナチス政権下での少年時代、叔母が精神病院に入院→ガス室送りとなった前半から、戦後は元ナチス高官の医者だった男の娘と知り合い、さらに西側へ亡命して画家として成功するという怒涛の半生が描かれるが、いかんせん長過ぎる。
上映時間3時間強💥 もちろんもっと長い映画はあるし、面白ければ短く感じただろうけど……(=_=) 無駄な部分を切れば少なくとも30分は短くなったんではないか。
それと作品中でテーマが分裂しているようにも感じた。

210127b 美大で学ぶ場面で最初にポロック風に描いてみたり、色々な作風に挑戦する経緯に実際に存在する他の画家の作品(っぽいもの)を出してくるのはなんだかなあ。
ただ、作品ではない地の映像にリヒターぽいシーンが登場する。(水着の妻、叔母の髪型、寝室のローソクなど)

なんで主人公がやたらと「子ども」にこだわるのかと思ったら、「悪い遺伝子」を断つために殺された叔母さんの遺伝子が、断絶せずに継承されるということのようだ。でもそこにこだわるというのは、また別の血統主義ではないのかなどと疑問が湧き上がってくるのであった。

この映画がリヒターの一作の迫力を超えるかというと……まあ微妙である。
ベクトルが逆だが同じ要素(画家と国家、評価の変転、美大での授業・学生たちなど)が散りばめられているワイダの遺作『残像』と比べると、その足元にも及ばないと断言したくなる。

主役のトム・シリングは可もなく不可もなくだが、妻の父役のセバスチャン・コッホが舅の圧を感じさせるイヤ~な悪役演技で見事。嫁いびりも嫌だけど舅のムコいびりもコワイのう(+o+)
また、ヨーゼフ・ボイスとおぼしき教授役のオリヴァー・マスッチも好演だった。

一つ驚いたのは、後半に登場する作品を実際にリヒターの「下請け」で描いていた画家に頼んだと監督が語っていたこと。あれは本人が描いてなかったのか!


リヒターを初めて知ったのは恥ずかしながらソニック・ユースのアルバム・ジャケットからである(^^;ゞ
東ドイツで西側の「成金資本家」向け作品が批判される場面があったが、結局彼が現在の高額で取引される大作画家の代表のようになってるのは皮肉としか言いようがない。
210127c

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2021年1月25日 (月)

「不確かなロマンス もう一人のオーランドー」:身体と鑑賞の限界

210125 振付・出演:フランソワ・シェニョー
音楽監督・演出:ニノ・レネ
会場:彩の国さいたま芸術劇場大ホール
2020年12月19日

フランス人のアーティストとミュージシャン4人による公演である。本来はもう少し早い時期に3か所でやるはずだったが、時期をずらした上で来日、二週間の自主隔離の後に公演回数を減らして開催された。

内容は三部に分かれていて、ジェンダーを横断する人物をそれぞれシェニョーが歌いつつ踊って表現する。V・ウルフの「オーランドー」同様に複数の時代・人物に転生するというものだ。
男装した娘の兵士、両性具有の聖者、ロマの女……いずれもスペインの伝説に残る人物なのだという。

シェニョーの身体はまさに狂乱&惑乱の極みだった。3人を演じて激しく踊り、3種類の声で歌う(さすがにアルトのパートはキツそうだった)。加えて「足」も素足・竹馬・バレエシューズ・ハイヒールなどと変化する。常にまともには歩いてはいない。
あまりの激しさに見る側も絶えず緊張を感じてしまうほどだ。
また高いハイヒールでフラメンコを踊ったのも迫力だった。かと思えば戦前のキャバレー風になったりと目が離せない。

とりわけ竹馬に乗って踊るのは驚いた。一瞬でも止まったら倒れてしまうではないか❗
しかも飛び跳ねたり、片足振り上げたり--もう人間離れしている。見てて、そんなにしてまで何故踊る?と問いかけたくなる(愚問だけど)。
ギリギリまでの身体の酷使に、見ている側は身の置き所なく感じてくるのであった。

最後は拍手喝采だった。ブラ禁なので小声でブラボーをつぶやいていた客も(^^;
近くの客の話が漏れ聞こえてきたことによると、この演目はパリで大人気でチケットがなかなか手に入らないほどらしい。そのせいかほぼ満員の入りだった。

音楽もスペインの古い民謡や舞曲からピアソラまで時代を超越していく。共演のミュージシャンはバンドネオン、パーカッション、ガンバ、テオルボ&バロックギターの4人でバンドネオン以外は古楽の演奏家である。(ル・ポエム・アルモニークやリチェルカール・コンソートなどに参加)
それぞれ見せ場(聞かせ場)のソロがあり、演奏だけでなく途中でシェニョーを人形遣いのように支えるなどパフォーマンスに関わる場面もあった。
一番熱狂的だったのはバンドネオン。弦の古楽器は広めの会場でPAシステム通して聞くと弱い感じになってしまった。それから四角い枠に革を張ったピザのケースみたいな打楽器は何(^^? 初めて見ました。
ついでにシロートの素朴な疑問だが、テオルボとかガンバは下手すると演奏時間より調弦している時間の方が長くなる楽器のはずだけど、途中で調弦している様子が見られない(これはオペラなどの公演でも同様)。どうなってるの?

残念だったのは、歌詞がよく分からなかったこと。視覚的にジャマなので字幕を出さない方針だったのだろうけど、ダイレクトに内容が分からず歯がゆい感じだった。入場後にあまり時間がなくて解説の歌詞をよくチェックできなかったのも失敗。

カーテンコールで演出のニノ・レネも登場した。派手なロン毛で、さらに舞台衣装みたいなファッション(上半身は薄い網シャツ)で出てきてビックリである。正直他のメンバーより一番派手で目立つ💡
普通、演出家というと地味~な黒服で端っこにそそくさと現れてはすぐに消える、みたいなのでこの派手さは衝撃だった。

終演後、人気のない劇場地下に行ってチラシをゴソゴソとあさっていると、先ほどの網シャツに黒の毛皮ジャケットだけ羽織った彼が颯爽と通り過ぎていった。ロン毛・長身・美男と三本揃ってまさに「山岸凉子のバレエマンガに登場する花形ダンサー」そのもの✨である。茫然と見送った。


さて、一つグチを書かせてもらう。
開演30分前に会場に着くと外に長い人の列ができている。どうも検温に手間取って入場に時間がかかっているらしい。12月とはいえ気温の低い夜である。寒風が強く渦を巻いて吹いていて震え上がった。
スタッフの人が感染予防のため「間隔を開けて並んでください」と定期的に言いに来るが、こんな強風じゃウイルス飛沫も瞬時に吹き飛びますっ(>y<;)
入場してからも周囲は席の座り間違いがやたらと発生して(なんで?)落ち着かなかった。トホホである(+o+)

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2021年1月20日 (水)

今さらながら2020年を振り返る

210120 ますます更新が遅れまくっている当ブログだが、なんとか振り返ってみる。もう「遅くって当たり前」な心持ちである。

【映画】
順不同。大体見た順かも。
コロナ禍のために映画もメジャーどころはほとんど公開延期となるか、直接配信になってしまうという状況でありますが、結局『テネット』は見てません(;^^)

『パラサイト 半地下の家族』:地上波TVで放映されちゃったのも怪挙。
『プリズン・サークル』:ドキュメンタリー枠。雑誌「世界」での連載を読むと撮影(と準備)は本当に大変だったもよう。だがその甲斐はあった✨
『エクストリーム・ジョブ』:何も考えずに楽しめるのが吉。
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』:これも何も考えずに楽しめた。悪趣味なのが好き💓
『スキャンダル』:米国TV界の話なので分かりにくかったけど『ザ・ラウデスト・ボイス』を合わせて見ると、なるほどそういうことかと納得。
『ルーベ、嘆きの光』(『ダブル・サスペクツ』):年取ってくるとこういうのがしみてくるわい。
『透明人間』:女の透明人間だったらまず最初に何をするかね。
『幸せへのまわり道』:いろいろ語りたくなる映画。コワイけど。
『マーティン・エデン』:前年選んだ『未来を乗り換えた男』と同じ系統の作品。なので選んじゃいました~。

あと一本を絞れなかったので次点ということで。
『ハスラーズ』
『シチリアーノ 裏切りの美学』


★部門賞
*監督賞:ポン・ジュノ(『パラサイト』)
 今さらではありますが、アカデミー賞での「気くばり受賞スピーチ」も含めて評価。あと伝記(?)マンガまで出ちゃったし。
*男優賞:ルカ・マリネッリ(『マーティン・エデン』)
 このキャスティングなくしてこの映画なし⚡というぐらいのはまり具合。見た後に俳優の身体における表象ということをつらつらと考えてしまった。ということで……5枚組ブロマイド売ってちょうだいっ。
*女優賞:エリザベス・モス(『透明人間』)
*ベストカップル賞:マ・ドンソク&キム・ムヨル(『悪人伝』
*最優秀悪役賞:セバスチャン・コッホ(『ある画家の数奇な運命』
 なにげに舅の圧を感じさせるのがイヤ~。
*新人賞:ラジ・リ監督(『レ・ミゼラブル』
*スッピン賞:レア・セドゥ(『ルーベ、嘆きの光』)
*姐御賞:ジェニファー・ロペス(『ハスラーズ』)

*長いで賞:『ある画家の数奇な運命』
 189分。いやもちろん面白ければ短く感じるはずなんですけどね。
*トンデモ賞:『バクラウ』のUFO
 よくもこんなもん平然と出したものよ。あきれました(^◇^)
*最凶邦題賞:『幸せへのまわり道』
 事前の予想では『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』が確実というのを覆して選出。今後しばらく経つとうっかり「幸せの回り道」で検索して、ヒットしなくなっちゃいそう。それと『しあわせへのまわり道』という映画も既にあるのだよ。

*ちゃぶ台ひっくり返し賞:『ルース・エドガー』
 この賞は、見終ってあまりの内容に思わず「なんじゃ、こりゃ~。観客をなめとんのか!」(ノ-o-)ノ ~┻━┻ガシャーン と、ちゃぶ台をひっくり返したくなる気分になった映画に与えられる栄光ある賞である。(あくまでも個人的見解


★映画関係のトホホな出来事
その1-『コリーニ事件』を見る前も後もずーっと原作未読だと思い込んでいたのだが、本棚を整理したら原作本が出て来たのでビックリ(!o!) しかもちゃんと読んだ形跡があるのだ。だが未だに思い出せない。
その2-メジャーな娯楽映画が公開されないので、普段だったら絶対見ないであろうセルゲイ・ロズニツァ「群衆」三部作を完走してしまった。ちょっと寝ちゃったけど💤


【コンサート部門】
古楽系コンサート鑑賞は激減した。2019年は41件(ブログ記事にしたもの)だったが、2020年は10件のみ。しかもそのうち5件は1~2月に行ったものである。
とはいえ、演奏家の皆さんこそ大変でしょうが。その少ない中で選んでみると--
「時はたちどまり」
「ヘンデル リナルド」
「ルカ・マレンツィオ 四声のマドリガーレ」

あと厳密にはコンサートではないが
*METライブビューイング「ヘンデル アグリッピーナ」:いやー、これは本当に面白かった。話自体はどうしようもないのだが、見た後になぜか生きる活力が湧いてきた。スキップして帰った(^O^)/


【録音部門】
発売年に関係なくこの一年間に気に入ったものということで。
*「よく整えられたヴィオール合奏曲 第1巻」(ファンタズム)
*「ローマへの旅路」(リナルド・アレッサンドリーニ&コンチェルト・イタリアーノ)
*「夕べの音楽」(アンサンブル・ストラヴァガンツァ)
*「サント・コロンブと息子たち」(リチェルカール・コンソート)

*「アメリカン・スタンダード」(ジェイムス・テイラー)
*「フロム・ディス・プレイス」(パット・メセニー)
*「ハーモニー」(ビル・フリゼールほか)
*「Rated PG」(ピーター・ガブリエル)

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2021年1月14日 (木)

映画落ち穂拾い 2020年後半その2

210114a「ファヒム パリが見た奇跡」
監督:ピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル
出演:ジェラール・ドパルデュー、アサド・アーメッド
フランス2019年

反政府運動のためにバングラデシュにいられなくなりパリにやってきた父子の実話である。難民として入国するも申請が通らず、父親の働き口もない。
しかし、国内でチェスのチャンピオンだった少年の才能が身を助けることになる。言葉もわからぬまま連れて行ったチェス教室にいたのは、優秀ながらガンコ者の指導者(ドパルデュー)であった。

彼と子役少年の演技で見せる作品で、笑いあり感動ありの良くも悪くも予告から想像できる範囲内ではある。
本当に父子を救ったのは、チェス教室のマネージャー女性による大統領への皮肉な一撃だろうか。でも移民・難民のための小学校がちゃんとあるのは感心した。
チェス教室の生徒はユニークな子たちをよく集めたという印象だ。

子どもは異国の言葉でも覚えるの早いね。フランス語を覚えない(覚えられない?)父親を批判する意見を見かけたけど、大人になってしまうとそう簡単にはいかないだろう。
日本でも小学生の子が親の通訳代わりをすることが多いらしい。
まあ、日本だとさっさと強制送還ですかね((+_+))


210114b「2分の1の魔法」(字幕版)
監督:ダン・スキャンロン
声の出演:トム・ホランド、クリス・プラット
米国2020年

兄と弟が魔法の失敗で行方不明の父の上半身を求めて三千里……なんだけど(ちょっと違うか)、どうも最後までノレなかった。
兄弟愛と父子愛のダブル攻撃で、見てる間中「感動しなくちゃ、感動するんだ」と強迫観念がつのってくるがうまくは行かない。

そもそも昔は使えていた魔法が失われつつある世界という設定自体が、どうでもいいとしか思えず。折角のピクサー印なのだが、なんだかなあ。
とりあえず、トム・ホランドは「永遠の弟」ですね(^^)

ピクサー新作『ソウルフル・ワールド』は劇場公開されず残念無念である。非常に評価が高いのに(;_:)


210114c「オフィシャル・シークレット」
監督:ギャヴィン・フッド
出演:キーラ・ナイトレイ
英国2018年

イラク戦争で実は「大量兵器はなかった!」と認定されて(注・日本を除く)から幾年月。その背後にあった国家間の陰謀の証拠を、マスコミにリークした職員がいたのだった(実話)。

……といってもスパイ映画のようなアクションやサスペンスがあるわけではない。
信念を持った一人の女性の行動とそれに応えたジャーナリズムが並行して描かれるという、大変に地味な作りである。愚直なまでにストレートな描写が続く。
それを演じる役者たちの力量が最大の見せ場だろう。

それにしても裁判の行方は呆気に取られてしまった。なんなのよ💥

ギャビン・フッド監督はこの路線が行けそうでよかった。『エンダーのゲーム』なんかどうしようと思ったもんね。
キーラ・ナイトレイの方はレイチェル・ワイズの後継者路線を取ってもよさそうな印象だ。レイフ・ファインズは出ると知ってなかったら最初分からなかったかも(;^_^A
それから米国の記者はリス・エヴァンスだった。かなり久し振りに見た気がする。


210114d「ようこそ映画音響の世界へ」
監督:ミッジ・コスティン
米国2019年

業界の人間ではないシロートには知られていない分野について、紹介&解説してくれるドキュメンタリー。

私は映画を見ている時は、視覚の方に集中力を全部取られてしまうので、音楽や音響の方にはあまり注意が行かない。だからこういう解説はありがたかった。エンドクレジット眺めていて「これはどういう役目なんだろう」という疑問が少しだけ解けた。
しかも「映画館の音」として実際に体験できるのだから、やはり映画館で見ないともったいない。

取り上げられているのは『スター・ウォーズ』や『地獄の黙示録』などメジャーな作品が多かった。米国以外やマイナー作品は少ない。一応「正史」と考えれば仕方ないということだろう。
歴史、功績者、実際の作業編と三つに分かれているので、明確に章立てした方が分かりやすかったと思う。

このドキュメンタリーには出てこないが個人的に音が記憶に残っているのは『脱出』。常に川の水音が流れていて気分が悪くなるぐらいであった。

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2021年1月 6日 (水)

「素晴らしき世界」上・下

210106 著者:マイクル・コナリー
訳者:古沢嘉道
講談社文庫2020年

おお(!o!)2020年はコナリーが3冊も翻訳出版だ~✨
--と喜び勇んで読む。
相変わらず定年後に非常勤刑事を務めるボッシュと、『レイトショー』で初登場したLA市警深夜勤務のバラードのシリーズが合体である。
交互に二人を章立てして過去の事件に迫っていくという体裁を取っており、両者の前作(ボッシュ・シリーズは『汚名』)を読んでいるのが前提条件である。

俄かにボッシュが年齢を感じさせる年寄りモードになってしまい、長年付き合ってきたヒーローが遂に老境に(T^T)……と涙を流したいところだがそのヒマもなく展開する。

異常なまでのカンの良さと無謀なまでの行動力を持つが公職の立場に縛られるバラードに対し、彼女を補完するようにボッシュは解き放たれて(もう年金は貰っているから怖いモノなし)仕置人のようになっていくのだろうか。(ならないとは思うが)

これもカリン・クサマ監督(『ストレイ・ドッグ』)で映画またはTVドラマシリーズ化してほしいね(^^)

前作「汚名」には恒例の訳者あとがきがなくて読者の疑念を巻き起こした。しかし、今回はちゃんとあとがきがあり、理由がちゃんと明らかにされていてホッとした。一時期ファンはパニックになったもんなあ。

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2021年1月 4日 (月)

「美しい瞳よ」:華麗なる恨み節の世界

210104 初期イタリア・バロック ソプラノ二重唱の愉しみ
演奏:鈴木美登里&染谷熱子ほか
会場:近江楽堂
2020年12月11日

久し振りのコンサート。情けないことながら、もう最近はひと月に一回のペースである。
この日の主役は二人のソプラノ・ミドリ&ネツコに、さらに鈴木秀美と上尾直毅が共演だった。
会場は座席の間隔を開けて席数を減らして(半数?)一日2回公演にしていた。

初期バロックということで、取り上げた作曲家はモンテヴェルディ、カリッシミ、ロッシそしてノターリ(←かなりマイナー)。
ほとんどは苦~くつらい恨み節の恋愛歌である。しかしその激しい嘆きも美しさに覆われてまるで彼方のあこがれのように輝いているようだ。どんな恨みも苦痛も美しい歌声で天に昇華させるのがこの時代の特徴か。
そんな世界を二人の二重唱は堪能させてくれたのだった。

合間に器楽のみの演奏があり、時代はもっと後のものになるが、ヒデミ氏のダッラバーコ作品独奏は剛腕な弾きっぷりに客席から「おお」と声が上がっていた(^^)
一方のナオキ氏はこの日もバロックギターとの二刀流であった。


オペラシティのチケットセンターや近江楽堂の公演チラシがめっきり減っていて寂しい限りだった。
何気に広場のツリーも例年に比べるとシンプルな気がしたのであった。

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