「ハニーランド 永遠の谷」:自然と実物
監督:リューボ・ステファノフ、タマラ・コテフスカ
北マケドニア2019年
WOWOWで鑑賞
日本公開された時に見損なっていたのをようやく見た。
『パラサイト』と同じ年のアカデミー賞で、国際長編映画賞とドキュメンタリー長編賞の両方で候補になった珍しいケースと話題になったドキュメンタリーである(結局受賞はならず)。
さらに製作国が北マケドニアというのも珍しい。
中心となる人物は一見、普通のおばさん。しかし、その正体は「ヨーロッパ最後の自然養蜂家」であった!
年老いた寝たきりの母親と二人で荒涼とした土地の電気も水道もない一軒家(というより小屋か)で暮らし、近くの岩山や大木に蜂の巣を見つけては養蜂する。
それだけ見ていると第二次大戦前の話といっても通用するぐらいの生活だ。
どれだけド田舎かの話かと思って見ていると、最寄りのバス停からバスに乗れば、髪をグラデーションに染めたモヒカンヘアの兄ちゃんが乗ってたりするではないか。だからそんな田舎ではない。そして近くの町に行ってはハチミツをひと壜ナンボで売るのであった。
と、ある日隣の土地にトルコ人の大家族が移り住んでくる。子どもが大勢いて、孤独だった彼女は彼らと親しくなる。これまで変化というものに縁がなかった彼女の心境も、揺るがされるのだが……。
って、これフィクションじゃないんですか~っ\(◎o◎)/!と、その後は言いたくなるような怒涛の展開である。
見ていると1年足らずの出来事のように思えたが、実際は数年間の話でその間スタッフはずっと通って取材したのだという。その根性には感心するしかない。
全てが終わった後に彼女は荒野に出て一人たたずむ。その光景を見て思い浮かんできたのは『ノマドランド』だった。題名が半分同じだから(*^^)b……違~う💥
彼女は放浪者とは正反対で、地に根が生えたような長年の定住者。本人が移動しない代わりに隣人が来てはまた消えていく。移動し変化するのは周囲の方だ。
でも、もはや若くはない女が孤独の中に存在するのは同じ。そのような「絵」が似ている。
現実を厳しく掘り起こし、あからさまなまでに観客に見せた後に喪失感が襲う。とはいえ両者のラストの感触はまた異なる。
似ているような似ていないような--どっちだろう(^^?
それにつけても、主人公の存在感には圧倒される。いかにオスカーを獲得したF・マクドーマンドをもってしても彼女には絶対勝てない。
これだからドキュメンタリーは恐ろしい。
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