「ライトハウス」:なんで、私が灯台に!?
監督:ロバート・エガース
出演:ウィレム・デフォー&ロバート・パティンソン
米国2019年
*最後にネタバレ感想があります。
事前に「怖い映画」だと聞いていた。さらに「変な映画」だということだ。おまけにモノクロでスタンダードよりも狭い昔の画面サイズらしい。どうも嫌な予感がする。途中で映画館出たくなったらどうしようと不安であった。
しかし、狭い孤島の灯台でデフォーとパティンソンが二人きりでゴニョゴニョする話(誤解を招く表現)だとあっては、何がなんでも見に行かずばいられない。
心して映画館に向かった私であったが、予想は大きく裏切られた。「変」「怖い」に加えてもう一つ重要な要素があったのだ。
それは「笑える」であった。
なんなのよー、早く言ってよ~(^◇^)
老灯台守と組んで初めて孤島に向かう新人の若者。先輩から乾杯の酒をすすめられるが断って水を汲んで飲む。しかしその水は腐っていた。ギャハハハと嘲笑する先輩、憮然とする若者--いや、いくら何でもそんな真っ黒けな水(モノクロ映像にしても、だ)飲む前に気づけよという気がしないでもない。
その後はひたすらこき使われイヂメられる若者であった。しかも肝心の灯台には上らせてもらえない。ストレスで作業の合間に思わず××しちゃう毎日だ。
そして幻影なのかそれとも物の怪か、何かがいるような……。
てな具合で黒い水を飲んでから以降、全体の三分の一ぐらいは笑える場面だった。後半のアルコールが入ってから延々と続く二人の絡み合いとか。特に強風にあおられて●●●を浴びる場面なんて声出して笑ってしまった。
あれは爆笑するところでしょう(o_ _)ノ彡☆バンバン ギャハハハー(←懐かしい顔文字を使用してみました)
あと過去の名作の引用も多数出てくる。
ゴシックホラー味が強く『鳥』や『シャイニング』はモロにやってるし、全体の構造は『2001』っぽい(二人のキャラクターが孤絶した状態で争い、一人がスターゲイトに達する)。エガース監督は「灯台は男性のシンボル」と語っているが、ディスカバリー号も「精子の形に似ている」などと言われてましたな。
某場面はアルドリッチの『キッスで殺せ』の終盤だろう。他にも私の見ていない映画の引用が幾つもあるようだ、ベルイマンとか--。
ラブクラフトの映画化ってあるのかな(^^?
怪異譚と言ってしまえば収まりは付くが、解釈には困る作品である。
単純に考えてみると、ヘテロな男が二人狭い場所に閉じ込められればマウントを取り合った挙句、結局こうなるしかない💥ということだろうか。あまりに日常的に接近して暮らしていると、自我が溶解していく危険があるのかもしれない。
デフォー&パティンソンはほぼ二人芝居、お疲れさんです。
監督は……モロに自分の嗜好丸出しである。ああ、こういうのが好きなのだなというのが分かっちゃう。
陰鬱なモノクロ、冒頭の霧笛に始まる周到なサウンドデザイン、これに関しては映画館じゃないと迫力を楽しめないだろう。映画館での鑑賞を推奨したい。
パンフレットは灯台日誌(?)風デザインで分厚くて凝った装丁である。なぜか中に6ページにわたって伊藤潤二の紹介マンガが掲載されている。こういうのは普通チラシに載せるものだけど、なかなかにコワイ。
個人的には吉田戦車で見てみたい。あとパロディ調の青池保子で少佐とZの組み合わせ--あまりにもモロかしらん。当然第三の男は部下Gだろう。
さて、私は観ている間まったく思い至らなかった解釈があるのだが、ネタバレなので行を開けて書く。
★★注意! 以下ネタバレがあります
自己責任でご覧ください★★
他の人のツイッターでの解釈だが、老灯台守と若者は同一人物だというのだ。
な、なるほど!(ポンと手を打つ)
老人とは若者の罪悪感の表れであり脳内に出現したもので、そもそも灯台が実際に存在するのかも怪しい……というのである。
確かに二人が互いに語る過去はなんだか似通っているし、老人が若者のことを何もかも見透かしているというのもある。
ラストシーンもそれまでの状況からするとおかしい。現実とは思えない。
何より、若者が乗って逃げ出そうとしたボートを老人が壊してしまうのだが、その後の口論では彼は「お前が壊した」と事実と逆のことを言うのである。しかも若者はそれに反論しない。
二人ともボートを壊した犯人ということで、自分と自分で闘っているのである。
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