« 【旧盤紹介】「バロック・ギター・トリオ」 | トップページ | 「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」:主役はどっちだ? »

2021年10月 7日 (木)

「ホロコーストの罪人」:善き隣人の犯罪

監督:アイリク・スヴェンソン
出演:ヤーコブ・オフテブロ
ノルウェー2020年

ノルウェーでユダヤ人家族に起こった実話を映画化。辛い話で、見てて涙でマスクの内側が濡れてしまったほど(T^T)クーッ

主人公は若いボクサーで、親の意向に反して宗教熱心ではない。ノルウェーの国旗を背負って試合をし、結婚相手もユダヤ人ではない女性を選んだぐらいだ。
しかし、いくら自分ではノルウェー人だと思っていてもナチスドイツが侵攻して占領下に入ると、見逃してはもらえない。

劇的なことが起こるわけでもなく、静かに調査・確認・峻別・隔離が進んでいくところが怖い。市民がユダヤ人に対してを面と向かって罵倒するわけではないが、粛々とお上の意向に従って排斥に協力する。

収容所への移送計画を立てる警察副本部長は立派な集合住宅に住んでいて、隣室はユダヤ人の弁護士一家である。恐らくは、日常は善き隣人として付き合いをしているのだろうがいざとなれば平然と迫害を行うのだ。
そんな描写がとても恐ろしい(>y<;)
そしてラストの突然の無音シーンがさらに恐怖と衝撃を与えるのだった💥

ノルウェー政府が「強制連行」(直接虐殺したわけではないからだろう)の罪を認めたのは、なんと今から10年前だそうだ。それを考えるとよくぞここまで厳しく描いたという印象だ。推測するに、占領下で命令されて仕方なくアウシュヴィッツに送ったんだから罪はない--というような理屈があったのだろうか。
原題は訳すと「最大の犯罪」だそうで、邦題は似て非なるものだと言いたい。

主人公が国内の収容所で将校からボクシングの相手をしろと言われる場面がある。
それで思い出したのは、『生きるために』(1989年)という映画だ。ギリシャが舞台でウィレム・デフォーが実在したユダヤ人のボクサーを演じていた。
そちらではナチスの将校たちの前で試合をやらされるのだが、ボクサーのどちらか片方が死ぬまで終わらないという恐怖の試合だったですよ……👊

| |

« 【旧盤紹介】「バロック・ギター・トリオ」 | トップページ | 「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」:主役はどっちだ? »