「美男におわす」
埼玉の数少ない文化的施設である県立近代美術館にて「美男におわす」展を見てきた。
この美術館はトガった内容の展覧会が多いので(今回の前には「ボイス+パレルモ」展をやっていた)こんなとっつきやすい印象のテーマでやるとは驚きであった。
内容は近世以降の日本美術に描かれた美女ならぬ「美男」を追及するという、ありそうでないものだ。
展示物は近世の浮世絵、近代の日本画・挿絵、現代のマンガ(とゲーム)、現代アート作品からなっている。
特に浮世絵、日本画、挿絵に見る美男の系譜には思いのほか重点が置かれていた。ずっと辿っていくと、既に近世から近代にかけて市民の美男像が形成されているのが分かる。美術史的にも見ごたえがあった。
月岡芳年の描く美男を見ているとついニヤニヤ笑いが浮かんでしまい、マスクのおかげで周囲から見られずに済んでヨカッタ。
少女マンガのコーナーはそもそも美男が頻出するジャンルであるためか、竹宮惠子(ジュネ誌の表紙など)、よしながふみの『大奥』、『パタリロ』に限定されていた。
現代アート作品の多くは大作が最後の部屋に展示されていた。ただ、近世・近代の作品が数が多くリキを入れて見過ぎたので、たどり着いた時には疲労困憊してしまった(~_~;)
以前はこんなことなかったのに、トシは取りたくないものである。
ここ数年の新しい作品が多く、初めて見る作家がほとんどだった。
目立つ場所に「肉食男」と「草食男」を対比して描いた木村了子のド派手で巨大な屏風が鎮座していた。肉食草食といっても恋愛のことではなく、文字通りの「食」である。
右側には派手な若者たちがヒャッハーと牛を追い回してその肉でバーベキューしている。反対側は農作業にいそしむ(でもなんかイヤらしい)若者たちがいる。こんな派手な屏風を購入して置ける場所が果たして日本に存在するのか、などと思ってしまった。
あと、なぜか朝日新聞の近藤康太郎記者を思い浮かべちゃうのは私だけかな(^^; 九州の支局で田んぼを耕し米を作ったかと思えば、次は山の中で猟師をやってる人である。
このコーナーでは「美男」の美をそのまま描くのではなく、距離を置いた位置から検証するような視線で見ているような作品が多かった。
もはや、美術において素直に美男を賛美することは不可能な時代なのだろうか。
他には、金子國義の「殉教」はイヤらしさが充満(誉め言葉)。舟越桂の人物像はどうもいつも静かに怪しい気を放っていて、今回も不気味に感じた。
図録を買おうか迷ったが、いつも買ってはそのまま読まずに放置してしまうから止めたのであった。
さて、失敗したのは美男展の方を見終わって「よし、次はコレクション展だーっ」と地下の展示場に突入💨しようとしたら「作品入れ替え中」で閉まっていたことであった。あまりの衝撃にそのままスロープの床に倒れた。
←宮島達男の作品は今日もコインロッカーの中でカウントしている。
しかし、美術館のサイトには何の記述もないのはどーしたことよ(ほかの常設作品についても)💢
| 固定リンク | 0