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2021年12月

2021年12月28日 (火)

ラモー「アナクレオン」:酒と愛の神の日々

211228 北とぴあ国際音楽祭2021
演奏:寺神戸亮&ラ・ボレアード
バロックダンス・演出・振付:ピエール=フランソワ・ドレ
会場:北とぴあ
2021年12月10・12日

北とぴあ音楽祭恒例のオペラは去年コロナ禍で開催できなかったリュリの『アルミード』--のはずだったが、またも痛恨の延期となってしまった。
ダンス担当のドレだけ来日してラモー『アナクレオン』をやることになった。

前半はルベルやリュリ、ラモーの舞曲の聞きどころ見どころを集めて名曲選だった。ドレと松本更紗による様々なバロックダンスがたっぷり楽しく入り、歌唱部分は波多野睦美が担当した。
締めはコレッリの「フォリア」、寺神戸亮が踊る代わりにヴァイオリン・ソロを弾きまくって拍手喝さいを浴びた。
例年楽器二刀流を披露する上尾直毅は、今年はチェンバロのみならずミュゼットにタイコも叩いてた?もよう。三刀流ですな(^^ 目指せ!来年の四刀流🎶

後半にタイトルの『アナクレオン』に突入。「アクト・ド・バレ」という形式の作品で、一幕ものの気軽なオペラ・バレということである。
ギリシア神話がらみの他愛のない話で、主役の酒好き&女好きの詩人を与那城敬が軽い喜劇風のツボを押さえて歌って大いに笑わせてくれた。愛の神役の湯川亜也子となると、もはや貫禄の域だった。
二人はバロックダンスが繰り広げられる舞台隅で、オーボエ担当の三宮&荒井コンビと酔っ払い仕草を繰り広げて聴衆の一部の笑いを誘っていた。
合唱の出番が少なくて、本当はもっと聞きたかったところだ。

この時期、ドレ氏はよく入国できたものである。オミクロン出現直前だったのだろうか。間一髪というところである。
来年こそはリュリの『アルミード』を見たい聞きたいぞっ✨
今回は一旦「アルミード」でチケットを発売してから差し替えたので、郵送で客に問い合わせ書を送ってチケットを交換したりして裏方作業が大変だったろうと思われる。裏方スタッフはご苦労さんでしたm(__)m


ところで、この数日前に行ったオペラシティ・コンサートホールはブラボーが飛んでいたしブッフェもやってたのに、北とぴあの方はかなり厳しかった。ブラ禁の放送が入り、時間差退場を実施。ロビーでも会話お控えくださいのアナウンスがあり(守ってる人は少なかった)。ホールによって方針がまちまちなのかしらん。
昨年は「トイレの洗面台の蛇口が旧式の手で回すヤツ」だとケチをつけたが、さすがにオート方式になってましたな。

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2021年12月18日 (土)

映画落穂拾い2021年後半編その2

211218a「ジャスト6.5 闘いの証」
監督:サイード・ルスタイ
出演:ペイマン・モアディ
イラン2019年

イランの犯罪サスペンスもの。
冒頭の追跡劇からつかみはオッケー。大物麻薬ディーラーを追う部長刑事が逮捕のためにはなんでもあり、違法でもキニシナイという強引な捜査を繰り返す。
ようやく捕まえたはいいけれど、相手はしたたかな犯罪者なんでそのままでは終わらない。

前半が刑事編、後半は犯人編となって一本で映画二本分の濃縮度である。あまりの濃さに見終わってどっと疲れた。面白かったけど(;^_^A
まだ監督32歳、二作目だって? そうとは思えぬ完成度である。イラン映画界から目が離せません。

スラムの一斉摘発、ギュウ詰めの拘置所、留守電の会話、トイレ、ラストの●●シーンなど印象的な場面が多数あった。
でも、突如登場したあの3人の太った男たちは何(^^?
あと「日本」が何度も出てきたのは意外。日本スゴイぞ(ほめられません)。


211218b「ウォーデン 消えた死刑囚」
監督:ニマ・ジャヴィディ
出演:ナヴィド・モハマドザデー
イラン2019年

『ジャスト~』と同時期に公開されたイラン映画。あちらは映画館で見たけど、こちらは後からDVD鑑賞した。

古くて取り壊し予定の刑務所、ただ今引っ越し作業中だ。囚人も移送する。ところがその合間に囚人が「一人足りな~い(>O<)」案件が発生。しかも死刑囚だ。昇進を控えた所長は必死に捜索するも要として行方知れずとなる。
人ひとり、一体どこに消えたのか。

所長が中間管理職の悲哀みたいなのを背負ってて笑えるところが多数ある。女性の保護司が来るとカッコつけたりして。
『ジャスト』はシリアスで暴力度大だったけど、あちらに比べるとずっと気軽に楽しめた。
ラストでもうひとひねり欲しかったとはいえ、エンタメ作でもイラン映画あなどれぬと感じ入った。

なお所長役は『ジャスト』ではギャングの凶悪ボスをやってた人。事前に知らなきゃ分かりません❗


211218c「83歳のやさしいスパイ」
監督:マイテ・アルベルディ
チリ・米国・ドイツ・オランダ・スペイン2020年

予告を見た時に「えっ、これ本当にドキュメンタリー?フィクションじゃないの」と思ったけど、見終わってからもやはり「これドキュメンタリーなのかね💨」と思った。

探偵社が老人ホームに潜入調査するにわか調査員を募集。その段階からクルーが撮影していて、ある高齢男性が選ばれる。
ホームに入ると、人柄が良さで周囲の入居者にモテモテ状態になる。
その調査活動を密着取材して追ううちに、高齢者と家族の在り方の問題があぶりだされてくるのだった。

--という結論はいいとして、元の依頼者の意図が不明な上に、先にホームに取材カメラが入っている(目的を偽った?)のは変な感じ。大体、入居者がメモ帳持って廊下ウロウロしていたら怪しいと思わないか。

この内容(結構シリアス)で映画として老人ホーム側や関係者が公開を許可したのも驚きである。なんだか現実を舞台にしてその場にいるシロートがドラマを演じているみたい。(リアリティ・ショーか?)

などなど謎な点は多いが、主人公の人物像が好感度大なので他の些細な点は帳消しになっちゃう。取材対象である主人公がドキュメンタリーとして肝心というのは『ハニーランド』と似ている。
この映画も『コレクティブ』と同じ時にアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネートされた。なおチリの作品がアカデミー賞候補になったのは初めてとのこと。

映画館は、見た後に身につまされる世代の中高年層多数だったですよ(;^ω^)
私も身につまされました。

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2021年12月14日 (火)

「クロード・ル・ジュヌのシャンソン」:黄昏のバラ園にいにしえの恋愛歌が流れるのだ

211214 北とぴあ国際音楽祭2021参加公演
フランス16世紀後半の美しき世俗歌
演奏:カルテット・プロヴィゾワール
会場:旧古河庭園・洋館
2021年12月1日

恒例🎵北とぴあ音楽祭で旧古河庭園の洋館の一室を使った古楽コンサートである。
歌うはカルテット・プロヴィゾワール……はて?聞いたことがない名前だなあ、と思ったけどメンツは鏑木綾、小坂亜矢子、村上惇、小藤洋平の4人による四声の声楽アンサンブルなのであった。

ル・ジュヌはフランスのルネサンス後期に活躍した作曲家で宮廷にも採用されたという。しかしプロテスタントだったので投獄されたこともあるとか。
この日は世俗歌曲ばかりを取り上げたコンサートだった。(休憩なし70分)
聞いているともちろん地域の違いはあるけど、後世代である初期バロックのモンテヴェルディと比べて、全く異なっている部分、似ている部分など色々と浮かび上がってきて考えさせられた。

洋館の一室で間近に聴く歌声は格別の味わいであった。
曲の合間には、解説に加えてそれぞれ4人の得意技の専門知識(フランス語の音節についてとか、作詞をしたマロについてとか)を駆使した話を披露。リラックスした雰囲気で楽しめた。

本当は去年やるはずだった公演なのがコロナ禍で延期になってしまい、この日は復活戦だったとのこと。無事に開催できてヨカッタです(*^^)v

洋館のバラ園はもう12月なので花の数も少ない。夕方が迫ってきていたのでそそくさと帰ってしまい、よく見られなくて残念だった。
ウチに帰ってCDの沼をゴソゴソと漁ったら、ル・ジュヌの録音が3枚出てきたが、どれも宗教曲ばかりだった。プロテスタントだったのにカトリックのミサ曲を作っていたわけだ。プロテスタントはつらいよ💧である。

なお、久しぶりだったので会場は土足禁止だったのかどうか忘れてしまい、行ってみたらやはりスリッパに履き替える方式だった。(事前に靴下に穴が開いてないか要チェックですね👀)
こういう情報はチケットに書いてくれたらありがたい。足の悪い高齢男性が来ていて、奥さんと娘さんが二人がかりで懸命に靴を履き替えさせていて大変そうだった。

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2021年12月11日 (土)

「アイダよ、何処へ?」:敵と共に生きる

211211 監督:ヤスミラ・ジュバニッチ
出演:ヤスナ・ジュリチッチ
ボスニアヘルツェゴヴィナ・オーストリア・ルーマニア・オランダ・ドイツ・フランス・ノルウェー・トルコ2020年

またも辛い映画を見てマスクを涙で濡らしてしまった(;_:) 歳取って涙もろくなったのかしらん。
舞台はボスニア紛争時の都市。安全地帯のはずの町にセルビア軍が乗り込んでくるが、国連は何も手を打たない。一応、武力行使はしないと約束のポーズはしているものの、彼らを怖れた何千人もの住民が国連軍の基地めがけて逃げてくる。(実際、市長などは早々に殺害されている)

現地で雇われた女性通訳の目(と耳)を通してその恐ろしい事件の一部始終が描かれる。見る前の予想と異なって、国際紛争問題を大局的に捉えるというのではなく、あくまで自分の家族を救おうとする彼女個人の視点を通して全てを見ている。そして彼女と共にカメラが疾走する。
しかし昔の教師時代の教え子が敵の武装兵士になっているのに出会うのは怖いのう。

セルビア軍にいいように手玉に取られる国連軍。結果は選別、排除、殺戮……。
かつてのユダヤ人虐殺はもちろん、現在のアフガニスタンをも想起させてウツウツしてしまう。基地から撤収が始まった時に、現地スタッフの彼女に向かって「行けるのは本人だけ。家族は連れていけない」という通告もアフガンと同じじゃないですか(>y<;)

今もなお禍根を残す事件について、監督は相当の剛腕&大胆さである。公開後、主演の夫婦役を演じた役者(セルビア人)たちは自国で非難されたらしい。
ただ、前に公開された監督作『サラエボ,希望の街角』も見たけど、それと同じく希望のある結末になっていたのがよかった。思わずホッ(^。^;)とした。


この時に予告で『皮膚を売った男』をやっていた。これで『アナザーラウンド』『少年の君』『コレクティブ』、この「アイダよ」と昨年のオスカー国際長編映画賞候補作が全て公開されて洋画ファンとしてはメデタイ限りである。

*一部、事実と異なった部分を訂正しました。

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2021年12月 5日 (日)

映画落穂拾い2021年後半編その1

いったん中断していました落穂拾いシリーズですが、ちゃんと感想を書こうとするとやたら時間がかかってしまい、更新の回数が減ってきたので、取り合えずメモ程度でも載せておこうと復活しました。
内容は手抜きです(^^ゞ

「キーパー ある兵士の奇跡」
監督:マルクス・H・ローゼンミュラー
出演:デヴィッド・クロス
イギリス・ドイツ2018年

五輪中継を見なかった代わりにスポーツものを、ということで選んでDVD鑑賞した。
第二次大戦中、ドイツ軍の捕虜が英国の収容所に入れられ、そこでサッカーのキーパーとしての才能を見出される……という、無さそうで実際にあったオドロキの実話である。

敵国で生きていくことの困難や恋愛ドラマのほかに音楽、小道具なども注目である。細心に復元された大戦前後の生活や、敵国民選手の登場でブーイングに揺れるサッカー場など見どころは多い。

ただ肝心の主人公の内奥が曖昧にしか描かれてなくて、見てて彼はどういう人間なのかどうもよく分からなかった。
実話だから却って深入りできない部分があるのか--なんてうがって見たくなっちゃう。

敵対する男が二人殴り合いをして和解--とまではいかなくとも互いに理解する、という場面あり。これはあの『ライトハウス』にもあった図式ではないか❗
男同士の関係では定番なんだろうか(^^? 愛情はこぶし👊から💕


「パーム・スプリングス」
監督:マックス・バーバコウ
出演:アンディ・サムバーグ
米国2020年

TV放映視聴。公開当時「傑作」と評している意見が幾つかあって期待したが、実際見てみると「よくできたB級」ぐらいだった。(期待しすぎた?)
まあ、この手の映画は他人に激推ししたくなるものだから仕方ないか。

当人のみならず、親族にとっても他人にとっても様々な思い(と行為)が交錯するというイベントが結婚式だろう。それとタイムループを引っかけたアイディアは面白い。「終わりなきハレの日」がダラダラと続く中に安住するのか、そこから跳躍するのか。
二人の男女の関係に重ねた展開が明確なメッセージを観客に届ける。

--なんだけど、やはりそこの見せ方があか抜けないのがB級かどうかを分かつようである。もちろんB級で構わんという意見もあるだろう。

ここまで来ると「量子力学」は「魔法」とほとんど変わらないターム化している。
ループ内には主人公たち以外に少なくともあと二人いる、ということでいいのかな(^^?


211205「東京クルド」
監督:日向史有
日本2021年

辛い映画を見てしまった。難民申請中で入管の仮放免状態であるクルド人の若者二人を取材したドキュメンタリー。
小さい頃から家族と日本で暮らしていたのは同じだが、来日の経緯や家庭の状況はそれぞれ異なる。しかしこの国で生きづらさの壁にぶち当たるのは同じである。
進学もできず働くことも許されず……となったら「ヒモ」稼業でもやれというのか。ふざけるなと言いたい。
しかしそれが現実だ。

文明国ならば出自の如何を問わず未成年者には保護や教育を与えるのが当然だろう。まあ、「文明国」じゃないからな……(`´メ)
自分の国が非文明国で恥ずかしいっ💦
東京入管はそびえたつ昏い監獄のようだ。あるいは『指輪物語』の塔みたい。
入学式の「日の丸君が代」がすご~く皮肉だった。

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