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2021年12月18日 (土)

映画落穂拾い2021年後半編その2

211218a「ジャスト6.5 闘いの証」
監督:サイード・ルスタイ
出演:ペイマン・モアディ
イラン2019年

イランの犯罪サスペンスもの。
冒頭の追跡劇からつかみはオッケー。大物麻薬ディーラーを追う部長刑事が逮捕のためにはなんでもあり、違法でもキニシナイという強引な捜査を繰り返す。
ようやく捕まえたはいいけれど、相手はしたたかな犯罪者なんでそのままでは終わらない。

前半が刑事編、後半は犯人編となって一本で映画二本分の濃縮度である。あまりの濃さに見終わってどっと疲れた。面白かったけど(;^_^A
まだ監督32歳、二作目だって? そうとは思えぬ完成度である。イラン映画界から目が離せません。

スラムの一斉摘発、ギュウ詰めの拘置所、留守電の会話、トイレ、ラストの●●シーンなど印象的な場面が多数あった。
でも、突如登場したあの3人の太った男たちは何(^^?
あと「日本」が何度も出てきたのは意外。日本スゴイぞ(ほめられません)。


211218b「ウォーデン 消えた死刑囚」
監督:ニマ・ジャヴィディ
出演:ナヴィド・モハマドザデー
イラン2019年

『ジャスト~』と同時期に公開されたイラン映画。あちらは映画館で見たけど、こちらは後からDVD鑑賞した。

古くて取り壊し予定の刑務所、ただ今引っ越し作業中だ。囚人も移送する。ところがその合間に囚人が「一人足りな~い(>O<)」案件が発生。しかも死刑囚だ。昇進を控えた所長は必死に捜索するも要として行方知れずとなる。
人ひとり、一体どこに消えたのか。

所長が中間管理職の悲哀みたいなのを背負ってて笑えるところが多数ある。女性の保護司が来るとカッコつけたりして。
『ジャスト』はシリアスで暴力度大だったけど、あちらに比べるとずっと気軽に楽しめた。
ラストでもうひとひねり欲しかったとはいえ、エンタメ作でもイラン映画あなどれぬと感じ入った。

なお所長役は『ジャスト』ではギャングの凶悪ボスをやってた人。事前に知らなきゃ分かりません❗


211218c「83歳のやさしいスパイ」
監督:マイテ・アルベルディ
チリ・米国・ドイツ・オランダ・スペイン2020年

予告を見た時に「えっ、これ本当にドキュメンタリー?フィクションじゃないの」と思ったけど、見終わってからもやはり「これドキュメンタリーなのかね💨」と思った。

探偵社が老人ホームに潜入調査するにわか調査員を募集。その段階からクルーが撮影していて、ある高齢男性が選ばれる。
ホームに入ると、人柄が良さで周囲の入居者にモテモテ状態になる。
その調査活動を密着取材して追ううちに、高齢者と家族の在り方の問題があぶりだされてくるのだった。

--という結論はいいとして、元の依頼者の意図が不明な上に、先にホームに取材カメラが入っている(目的を偽った?)のは変な感じ。大体、入居者がメモ帳持って廊下ウロウロしていたら怪しいと思わないか。

この内容(結構シリアス)で映画として老人ホーム側や関係者が公開を許可したのも驚きである。なんだか現実を舞台にしてその場にいるシロートがドラマを演じているみたい。(リアリティ・ショーか?)

などなど謎な点は多いが、主人公の人物像が好感度大なので他の些細な点は帳消しになっちゃう。取材対象である主人公がドキュメンタリーとして肝心というのは『ハニーランド』と似ている。
この映画も『コレクティブ』と同じ時にアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネートされた。なおチリの作品がアカデミー賞候補になったのは初めてとのこと。

映画館は、見た後に身につまされる世代の中高年層多数だったですよ(;^ω^)
私も身につまされました。

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