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2022年1月

2022年1月30日 (日)

映画落穂拾い2021年後半編その3

220130a まだまだ続くよ2021年分です(^^ゞ

「TOVE/トーベ」
監督:ザイダ・バリルート
出演:アルマ・ポウスティ
フィンランド・スウェーデン2020年

トーベ・ヤンソンの半生を描く伝記もの。世評がよかったんで大いに期待して行った。実際見てみるとウムムム……(=_=)であった。
映像のセンスや編集、音楽の使い方、役者も良し。でも結局「ムーミン」関連作品を彼女自身がどう考えていたのかはよく分からない。
とりあえず人気が出て金を稼げるとか、やっぱり絵画が本業と思ってたのかね。

思い出したのは『ミス・マルクス』である。「父の娘」という点が似ているし、踊りまくっちゃう場面が出てくるのも同じ。業績よりも私生活の恋愛話に重きを置いているという部分もだ。
ヤンソンは熱情が過ぎて重苦しくなるタイプのように思えた。

昔の女は父(特に業績を残している人物ならなおさら)の権威というものが大きくて、苦労せざるを得なかったのだなあ、と見ていてため息が出てしまった。
だが実際は母親も画家として影響を多く与えたとのことである。この奔放なクリエイターにまつわる虚実混ざった一編と考えた方がいいようだ。


220130b「声優夫婦の甘くない生活」
監督:エフゲニー・ルーマン
出演:ヴラディミール・フリードマン、マリア・ベルキン
イスラエル2019年
TV視聴

ソ連国家崩壊寸前に声優のユダヤ人シニア夫婦がイスラエルに移住をする。当時こういう人は多かったらしい。
といっても様々な苦労があった。なにしろかの地は約束された夢の国ではなく、ガスマスクが配布されるような常に臨戦態勢の国家だったのだ(!o!)
加えて「夫婦の危機」「声優稼業」「映画愛」などのテーマをドッキングしてユーモア含みで展開する。

しかしそれ以外の要素は過去にあったネタをつなぎ合わせたんじゃないかという疑念が巻き起こる。「こういう話どこかで見たな」「元ネタあり?」みたいな既視感満載である。つまらなくはないけどさ。
最後は突然「やはり映画を愛す」みたいな話に回収されちゃって、これでいいんですかっ!?

まあ、奥さん役がキュートだから全て大目に見よう(偉そう(^^;ゞ)。90分強という長さがちょうどいいような内容である。

それにしても、ソ連からの移民相手専門のビジネスが成り立っているというのに驚いた(人数が多かったからかな)。


220130c「カムバック・トゥ・ハリウッド!!」
監督:ジョージ・ギャロ
出演:ロバート・デ・ニーロ、トミー・リー・ジョーンズ、モーガン・フリーマン
DVD鑑賞

堂々3人のベテラン俳優を揃えた本作、見てて思ったのは「これって出演料と釣り合うのかしらん💨」であった。
ストーリーだけ取ればドタバタ喜劇である。しかし人情もので泣かせの感動作、映画ファンには受ける映画製作ネタ、さらに古き良き西部劇への哀惜という要素を加えた挙句、そのどれにも足らずという結果になっているではないか。

演出のせいか脚本のせいか、1974年という時代背景も生かせず迷走という言葉が浮かぶ。やっぱりプロデューサーのせいかな(^^?
正直、エンドロールにフェイク予告が流れる『殺し屋尼さん』の方を見てみたい。(主人公たちが作って世のヒンシュクを買ったというB級アクションもの)
映画ネタならなんでも受け入れる心優しい映画ファン向け。

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2022年1月27日 (木)

「木の器クリスマスコンサート2021」:鳥か笛か

220127 主催:木の器
会場:近江楽堂
2021年12月25日

毎年恒例、宇治川朝政&福間彩による木の器主催クリスマスコンサート。前年は中止になってしまったが今回は無事に開催である。コロナ禍対策ということもあって、声楽はなしで、ゲストにチェロ懸田貴嗣と新顔参加のリコーダー井上玲を迎えてリコーダー2本の共演となった。

演目はテレマンやオトテールなど笛向けの曲と、クリスマスにちなんだ曲(フランスの伝統歌、コレッリのクリスマス協奏曲)の二種類だった。
テレマンの二重奏ソナタは宇治川&井上のタテ笛の演奏がとてもよかった。全体的に二人の微妙に異なる演奏スタイルの差が垣間見えて面白かった。
それからモンテクレール「鳥のさえずり」は鳥の声を模した曲だが、紙芝居(?)付きで大いに笑えました(*^▽^*) 干支に合わせてウシの曲とかトラの曲とかやると面白いかも……古楽でそんなのあるかな?
久し振りに器楽アンサンブルを心行くまで楽しめた。

懸田氏によるランゼッティのチェロ曲があったのに対し、福間氏の鍵盤ソロがなかったのは残念だった。次回はお願いします。
それから、恒例のクリスマスプレゼント🎁抽選もいつか当たりたいぞ。


会場内はかなり感染予防に気を使い、登場する時やマイクで話す時にはマスクをしていた。
そもそもマスクの付け外しは面倒なようで、過去にリュートや鍵盤で外すのを忘れたまま弾いた人を目撃したことがある。管楽器用に付けたまま吹けるような、口の所に切れ込みが入ったマスクってのはどうだろう。(冗談です)


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2022年1月22日 (土)

「アンテベラム」:パニック!逆襲の奴隷農園(仮題)

監督:ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ
出演:ジャネール・モネイ
米国2020年

*後半にネタバレ感想があります。

完全ネタバレ禁止⚡作品である。
米国の南北戦争最中の頃か、黒人奴隷たちが農園で南軍兵たちに監視されつつ綿摘みをしている。映画はその一人の女性の日々を追う。
虐待を受け、理不尽な暴力を振るわれる。農園の一隅にある、燃え盛る炎をちらつかせる小屋がとても不吉だ。

一方、現代の米国で平和な家庭生活を送る社会学者にしてベストセラー作家の朝が並行して描かれる。冷静に社会を論じてマスメディアでも人気で大統領候補とも囁かれる彼女は、オプラ・ウィンフリーとナオミ・クライン(←白人だけど)を合わせたような人物だと言えるだろう。
ジャネール・モネイがこの両者を演じている。

この二つの隔絶した時空の謎はなんなのだろうか?……という答えが分かった時にナルホド❗やられた~と思うのは間違いない。
伏線が巧みに張ってあり、セリフも複数の意味に解釈できるようになっていて、それらがちゃんと回収される。お見事である。

それにしてもこりゃ恐ろしい話だ(>y<;)
製作年は2020年となっているから米国の議事堂襲撃事件より前に作られたのだけど、観れば明らかにあの事件を連想するだろう。不吉な予言のように思える。

前半の歴史・社会派スリラー調から終盤はバイオレンス・アクションになってしまって、落差が激しいという意見も見かけた。確かにモネイの暴れ方はやり過ぎ感が大きいけど、彼女の最後の咆哮に爽快感を感じたのも事実だ。やったれーっ( `ー´)ノ

以前、『ゲット・アウト』をDVDで見た時に特典映像に「もう一つの結末」があった。そちらの結末を選んでいたら現代社会の恐怖を描いたとして高く評価されたかもしれないけれど、代わりにあれほどはヒットしなかっただろう。そして、見て「快」を感じるのはオリジナルの方なのだ。
同様にジャンル映画として成立させるために強調する部分の、リアルさのさじ加減は難しいと言わざるを得ない。

とりあえずアマプラのTVシリーズ『地下鉄道』(バリー・ジェンキンズ監督脚本)、第2話まで見て止まってたけど早く続きを見ようと心に誓った。こちらはホラーではなく「純文学」的である。あと、やはりオクテイヴィア・E・バトラー読むべきかな。


以下、ネタバレ感想行きます。


★ ★ ★ ネタバレ注意 ★ ★ ★


映画の結末まで見た人だけお読みください。


「農園」はユダヤ人収容所を想起させる不気味な場所である。
火葬の小屋(窯をのように見える)の存在、また折角つんだ綿をわざわざ焼かせる作業(←これも伏線ですな)など。

連れて来られる黒人のほとんどは若い女であり、一部が知的な職業の男だ。もし「兵士」たちが単にアフリカ系を気に入らないというなら、ラッパーとかギャングのボスを連れてきて貶めてやってもいいようなもんだが、そういう選択をしないところに奴らの本質が透けて見える。
特に主人公は大統領になると期待されていた溌溂とした女性である。後から連れてこられた若い女が無抵抗でおびえる主人公を半ば非難するように「あなたはリーダーだと思っていたのに」というセリフでそれが示唆される。彼らはそのようなマイノリティの女の存在が許せないのだ。
ラストで彼女はやはり無抵抗のままに終わる人間ではないことが示される。

また、彼女は講演先のホテルで予約したレストランでひどい席に案内される。あるいはホテルの部屋はきちんと掃除がされていない。白人の友人の部屋はちゃんとしていたのに、である。
掃除の件は議員の娘が仕組んだことではあるが、これらは黒人の「日常あるある」ではないか。差別とは明言できないような小さな出来事でも、積み重なると神経を削られていくに違いない。
恐ろしいのはそんな小さなトラブルが「農園」と地続きに見えるということだ。つまり「陰謀」なのか「偶然の悪意」なのか区別が付かない。

多分、米国の黒人にとってはこれは決して絵空事ではなく、リアルな悪夢かつ恐怖なのだろう。奴隷制の復活はいつでも起こりうる。過去にあったのだから。

さて、もう一つレストランでの「ナンパ事案」はどうなんだろう(?_?)
私はてっきり誘った男(顔が映らない)が、議員のムコの奴だと思ったのだが違うかしらん。それとも単にガボレイ・シディベに息抜きのお笑いタイム💨を演じさせただけなのかな。謎である。

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2022年1月15日 (土)

「ソフィオ・アルモニコで綴るアン・ブーリンの音楽帖」:幽閉されて捨てられて

220115 エリザベス1世の母の足跡をたどって
演奏:ソフィオ・アルモニコ&佐藤裕希恵、瀧井レオナルド
会場:霞町音楽堂
2021年12月19日

前田りり子を中心とするルネサンス・フルート集団ソフィオ・アルモニコは今回、古楽+ひとり歴史芝居に挑戦。しかも脚本家付きという本格的なものだ。
主役は英国王ヘンリー8世の王妃アン・ブーリンである。

とはいえ、はてアン・ブーリン……どんな人だっけ(^^;? などと言ってる客のためにメンバーの相川郁子による詳細なリキの入った解説がもれなくついているのだった。
いち英国貴族の娘ながら若くしてフランドルやフランスの宮廷に身を置き、英国に戻って2番目の王妃になる。ただし前王妃との離婚問題で大騒動。
将来エリザベス1世となる女児を産むが王はあっという間に裏切って、最後には断頭台へ送られたのだった。

ここではエリザベス役の佐藤裕希恵が母の足跡を回想するという形になっている。
と共に、その波乱万丈な人生の様々な場所で流れていた音楽が演奏された。ブリュメル、ド・ラ・リュー、セルミジ、ジョスカンなど。中にはアンやヘンリー8世が作った曲もあり。
最後はエリザベスの宮廷時代のダウランドの悲しい歌曲で終わる。

大陸で二つの宮廷で暮らしたアンは文化の最先端を吸収して相当に先端的だったわけだ。封建的な時代に毀誉褒貶にさらされながらも思うように生きた人物であるという、舞台からの熱~い思いが伝わってきた。奏者と客席の距離が近いせいもあったかも(^^) 構成など完成度も高かった。
佐藤裕希恵のパフォーマンスもよかった。リュート担当の瀧井レオナルドとの短いけど夫婦共演部分あり。

アン・ブーリンが主人公の映画で『1000日のアン』(1969年)というのがあって見てみたいのだが、DVD買うしか見る方法がないという……。残念である💧


この時はオミクロン株侵入以前だったので、座席は以前のように密着してしていた。そばに雑音発生者がいてマイッタ。音がしなくなったなーと見ると眠っている。おまけに途中でスマホチェックしたりして。しかも楽器を持っている人物なのである。自分が演奏している時にそういうことされて平気なのか💢 サントリーホールP席事件みたいに暴れてやろうかと思ったぐらいだ。

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2022年1月13日 (木)

「漫画家の自画像」

220113 著者:南信長
左右社2021年

本を開くまでは「ふむふむ、よくマンガ家が描いている自画像を見比べた本ね」と簡単に思っていた。しかし実際読んでみたらそんな単純なもんではなかった。

正確にはマンガで描かれたマンガ家について様々な角度から論じた書である。その多くは作品内で個性あるキャラクターとして活躍している。それをジャンル分けし、歴史をさかのぼり他作品と比較・分析する。

まずご本人が自分を描いたものがあれば、同じ人物を他のマンガ家から見たものもある。手塚治虫のように自作のフィクション内に登場させたり、ノンフィクションとしての自伝や評伝マンガの場合もある。私小説ならぬ私マンガ、埋め草的な近況報告、さらには独自ジャンルを形成するエッセーマンガも忘れてはならない。
小説だとここまでキャラクター化して作品内に出てくるのは珍しい。マンガの特性ゆえだろうか。

一方で、連載雑誌の目次や巻末コーナーに登場するワンカットの自画像、さらに過去にはスター・アイドルさながら本人が顔出しするリアル写真もあった。(当時は住所も平然と載ってましたな(^▽^;)
加えて、実在人物が登場するのではないが業界マンガにマンガ家マンガ、さらにマンガ家入門マンガなどなど、ネタは尽きず面白い。
おまけに年譜、系譜図、索引付きまで付いているではないか(!o!) 読み応えあり&資料としても役立つ。

ここまで広範囲に資料をさかのぼり調べるのは非常な苦労だっただろう。頭が下がっちゃうm(__)m
早速、とり・みきからSNSで「エッセーマンガを始めた時期は自分の方が早いのではないか」という意見が流れてきた。チェックが大変だ~👀

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2022年1月12日 (水)

いつまでもあると思うな!親と岩波ホール

昨日1月11日の午前、岩波ホールの「2022年7月29日(金)を以て営業終了のお知らせ」がSNSで広がり映画ファンを震撼させた。
昨年初めに改装工事をしたばかりで(ついでに1階のチケット売り場もなくなったが)予想だにしなかったことである。

物理的には神田神保町にある200席ぐらいの単館ロードショーのホールであるが、他所では絶対に取り上げないような製作国や内容の作品を公開した(初期だとサタジット・レイやワイダなど)。ここで上映された後に各地のミニシアターに回っていくので、一地域の映画館ということだけでなく影響は甚大だろう。
近年ではワイズマンの『ニューヨーク公共図書館』が結構なヒットをしたはず。その後地元のミニシアターでも上映されて客がかなり入っていた。

ただ問題は観客の年齢層の高さ。40・50歳代はまだ若手✨みたいな感じである。どの映画か忘れだが、見まわしたら40代ぐらいの人が二人ぐらいいるだけで、あとは年寄りばかりということがあった。
それと最前列以外は必ず前の客の頭がかぶってくるという座席の構造もツラい。元は多目的ホールだというから仕方ないとはいえ。従って最前列はいつも早い者勝ちの争奪戦であった。

高齢者が多いといっても、渋谷のル・シネマあたりとはいささか客層が異なるという印象だった。じゃあどこと同じかというとウムム……ポレポレ東中野か? いや、あそこは若いお客さんも多いですが(^▽^;)
そういやル・シネマも長期休館に入る予定……。

なお最初に私が行ったのは1977年『惑星ソラリス』である。その後あまり縁がなかったのだが(B級アクションやSFものが好きだったので)、2010年代に入ってからは行くことが多くなった。
『ヴィオレット』『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』『女の一生』あたりはよくぞ上映してくれたという印象だ。
ここは客の入りに関係なく最初に決めた期間は上映し続けるという方針らしいが、『ヴィオレット』なんか上映が始まったばかりの頃に行ったのに客が少なくて「大丈夫か!?」とドキドキしてしまった(;^_^A
『女の一生』に至っては見せてくれただけでオンの字だ。同じステファヌ・ブリゼ監督の次作『アット・ウォー』は某Kフィルムが買って数回特集上映しただけ。その後お蔵入りという状況だもんなー。(折角字幕付けたのなら見せてくれよっ👊)

終了の原因はコロナ禍で高齢者が来なくなったということである。でも確かにコロナ禍もあるだろうけど、ここ数年の傾向として中高年以上の客層が大きくなってきたため、岩波ホール以外でもその世代向けの作品上映に力を入れてきてパイを取られてしまったという可能性もあるのではないか。(あくまでも勝手な推測) もっとも、映画館の経営とは全く別の方面から閉館が決められたという一部報道がある。
『ナポリの隣人』(2019年上映)なんかモロに高齢者向けの親子感動もので別に他の映画館でかかっても不思議ではない内容だし、しかも出来があまりよくなかった。

220112b 私が最後に行った『ペトルーニャに祝福を』(昨年6月)は北マケドニア映画という点では他館ではやってくれそうにない。しかし実際見てみると『ブックスマート』を支持するような若い女子にウケそうな話だった。どう見てもシニア向けとは違う。
でもいくら若い世代向けに宣伝しても岩波ホールじゃ見に来ないだろう。難しいもんである。

というわけで最後の10年ぐらいしかお世話になってないけど、閉館は残念の一言であります(+_+)ゝ

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2022年1月 9日 (日)

今さらながら2021年を振り返る

220109a 振り返ったからどうということもないですが、一応振り返ってみるのであります。
最近はブログの更新は完全に追いつかず、ほとんど書かずに飛ばしてしまうという情けない状況になりました。

【映画】
以下に選んだ10本は大体見た順。完成度より個人的好み優先。ドキュメンタリーが豊作年のため多くなってしまった。なお大作ものはレンタルかTVで見ようと思ってほとんど見ていない。
それと老人脳のため1~3月ぐらいに見た作品はだいぶ内容忘れちゃったんで、候補に入れられなかったですよ(+o+)トホホ

「アメリカン・ユートピア」:映画としてというより、そもそも元のパフォーマンスの出来がすごい。
「ライトハウス」:監督は子どもの頃「ブルー・ベルベット」と「時計じかけのオレンジ」を見たそうである。三つ子の魂百までも。恐ろしいね~( ̄д ̄)
「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」:洋楽ファン必見。
「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」:DVDスルーはあんまりだいっ。
「コレクティブ 国家の嘘」:あっと驚く展開。実際に起こった事件とはとても思えねえ。
「ほんとうのピノッキオ」:「ピノキオ」って子どもの頃絵本で読んだけど、こんな話じゃなかったはず。
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」:ここ数か月の賞レースに絡むのは必至。
「フリー・ガイ」:このご時勢の中でもポジティブなのが身にしみたです。
「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」:こういうウサン臭い人間がいっぱい登場するドキュメンタリー大好きだーヽ(^o^)丿
「レイジング・ファイア」:年の最後にキタ~ッ💥

★部門賞
*監督賞:今年は該当者なし(> <;)……と思ったけどやっぱりジェーン・カンピオン(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)にしよう。
*男優賞:ベネディクト・カンバーバッチ(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
 今年は大活躍。「モーリタニアン 黒塗りの記録」の助演も入れたい。(「クーリエ 
最高機密の運び屋」も見たい)
*女優賞:ジョディ・フォスター(「モーリタニアン 黒塗りの記録」)
 もはや貫禄。

*ベスト・カップル:ウィレム・デフォー&ロバート・パティンソン(「ライトハウス」)
*ベスト・アンサンブル:キングズリー・ベン=アディル、イーライ・ゴリー、オルディス・ホッジ、レスリー・オドム・Jr(「あの夜、マイアミで」)
 屋上の場面が男子中学生たちがジャレているようで笑った。

*最優秀悪役賞:ニコラス・ツェー(「レイジング・ファイア」)
*最優秀妹賞:フローレンス・ピュー(「ブラック・ウィドウ」
*最驚キャラクター賞:「ほんとうのピノッキオ」のカタツムリ侍女
*最長脚部賞:ガル・ガドット(「ワンダーウーマン1984」)
 私に3センチぐらい長さを分けてほしい。
 
*最凶邦題賞:「ホロコーストの罪人」
 「最凶」というほどでもないが、原題と似ているようで意味が異なるのでかえって誤解を招く--ということで。

*ちゃぶ台ひっくり返し賞:「プロミシング・ヤング・ウーマン」
 この賞は、見終ってあまりの内容に思わず「なんじゃ、こりゃ~。観客をなめとんのか!」(ノ-o-)ノ ~┻━┻ガシャーン と、ちゃぶ台をひっくり返したくなる気分になった映画に与えられる栄光ある賞である。(あくまでも個人的見解)
これも「ちゃぶ台ひっくり返す」というほどでもないが、全編なんだかなあという内容のため。

★トホホな出来事
入場する時に検温(手首で測るヤツ)したらなんと37.7度❗ ビックリした。とりあえずニ、三分後に測りなおすということで、コート脱いで(暖かい日だった)待ってて再度検温したら、今度は36.5度だった。
……なんなんだよ(--〆)


【コンサート部門】
コロナ禍で外国人演奏家の来日公演は中止になったものが多かった。それでも行った回数は一昨年よりは増えた。
「Vanitas vanitatum 空即是色」
「イタリア~狂熱のバロック歴遊」
「大塚直哉レクチャー・コンサート 6 聴くバッハ、そして観るバッハ」
「フルートとハープ 600年の変遷」
「ソフィオ・アルモニコで綴るアン・ブーリンの音楽帖」

コンサートではないけど
*「一行の詩のために~つのだたかしと望月通陽の世界」
 NHK-BSP「クラシック倶楽部」で放映された番組。音楽、アート、文学の世界が完璧に融合した完成度高い内容だった。また再放送されたら見てくだせえ(^^)

★古楽関係の出来事
*近江楽堂休止
 改修工事とのことで、なるべく早い復活を願っております。
近江楽堂で聴くチェンバロの音は格別のものがあった。最初に楽器から直に発するシンッとした音が届き、それから円形の壁を伝わってボヤボヤと広がるうちに、聞く者の内側で甘美な響きへと変わる。こんな場所は他に知らない。

*訃報・江崎浩司
 年の瀬に流れてきて驚いた。タブラトゥーラでも一番の「若手」だったので全く予想だにせず……💦 このような過去の記事を発見した。この時、ご当人も含めて「2031年」が普通に来ることを誰一人として疑わなかっただろう(T^T)


【録音部門】
発売年に関係なくこの一年間に気に入ったものということで。
*「ラメント」(ダミアン・ギヨン&カフェ・ツィマーマン)
*「ルクレール トリオ・ソナタ集」(ヨハネス・プラムゾーラー&アンサンブル・ディドロ)
*「ジョスカン・デプレ 世俗歌曲集」(クレマン・ジャヌカン・アンサンブル)
*「パレストリーナ 教皇マルチェルスのミサ」(ビューティー・ファーム)
*「ヴェネツィアの鏡」(ル・コンソート)

220109b *「フォー・フリー」(デヴィッド・クロスビー)
*「ワールド・オン・ザ・グラウンド」(サラ・ジャローズ)
*「ゴーン、ジャスト・ライク・ア・トレイン」(ビル・フリーゼル)
 二十数年前のアルバムだけど、あまりに変なジャケット絵に正気が保てず中古盤で買ってしまった(先に音は聞いていた)。ところで「フリーゼル」と「フリゼール」の二種類の読みがあるが、どちらが正しいのかな(?_?)


【その他部門】
「一度きりの大泉の話」(萩尾望都)
 昨年最大の衝撃の書であった。その後も過去の話が流れてきて衝撃冷めやらぬ、である。

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2022年1月 3日 (月)

「モーリタニアン 黒塗りの記録」:正義のための不正義

監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:ジョディ・フォスター、タハール・ラヒム、ベネディクト・カンバーバッチ
イギリス・米国2021年

あるモーリタニア人男性が家族の目の前で突然連行され、911事件の首謀者として逮捕された実話--と書いたところで疑問に思ったのが、はてモーリタニアってどこら辺なのよ(爆)。今さらながらであるが、アフリカ北西部で西サハラ、アルジェリア、セネガルなどに隣接し、土地の9割が砂漠とのことである。

彼はグアンタナモ米軍基地に移送され尋問を受ける。
数年後、裁判が行われることになり男とその弁護士、米軍側の起訴を担当する中佐の三者から経緯が描かれていく。

弁護士たちはわざわざ飛行機に乗ってキューバまで行かねばならず、男に面会しても警戒され不信感露わな態度を示される。さらに資料を請求すれば「ノリ弁」状態だ(黒塗りって日本だけじゃないんですね💥)。
将校の方も資料請求しても機密情報として却下される。これでは起訴できない。
ということで双方にとって迷宮状態になるのだった。

そもそもは裁判前の調査という地味な作業が中心の話である。最終的には役者の演技合戦が中心となる。
困惑・狂乱を熱演のタハール・ラヒム、あくまで筋を通す実直を絵に描いたような中佐役カンバーバッチ。とはいえさすがに年季の差か、信念を持つベテラン弁護士というより頑固ばーさんに見えるジョディ・フォスターには二人とも勝てなかったようである。彼女がエンドロールに登場する実物とはかなり異なった印象の外見にしたのもわざとかな。

判決後の後日譚もなかなかにひどい。もはや正義のためには正義を逸脱しても構わないとしか思えない。そんなことは許されるのだろうか。
マクドナルド監督の手腕は着実な描写の積み重ねで十分に発揮されていた。
ただ、見てて拷問前と「現在」の区別が付けにくいのが難点だった。

グァンタナモでの拘束の様子はなかなかに辛い。
拷問場面が必ず出てくるだろう、いつ出てくるのかとドキドキしていたけど(なら最初から見るなって話だが)、フラッシュが炸裂するので要注意だろう。冒頭に注意書きを出すべきレベルではないか⚡
なお同じ問題を別方向から取り上げたのが『ザ・レポート』である。

ついでだけど、カンバーバッチのシュッとした背筋の軍人姿勢は、日本の役者さんが兵士を演じる時にはぜひ参考にしてもらいたいですね(^◇^)

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