「モーリタニアン 黒塗りの記録」:正義のための不正義
監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:ジョディ・フォスター、タハール・ラヒム、ベネディクト・カンバーバッチ
イギリス・米国2021年
あるモーリタニア人男性が家族の目の前で突然連行され、911事件の首謀者として逮捕された実話--と書いたところで疑問に思ったのが、はてモーリタニアってどこら辺なのよ(爆)。今さらながらであるが、アフリカ北西部で西サハラ、アルジェリア、セネガルなどに隣接し、土地の9割が砂漠とのことである。
彼はグアンタナモ米軍基地に移送され尋問を受ける。
数年後、裁判が行われることになり男とその弁護士、米軍側の起訴を担当する中佐の三者から経緯が描かれていく。
弁護士たちはわざわざ飛行機に乗ってキューバまで行かねばならず、男に面会しても警戒され不信感露わな態度を示される。さらに資料を請求すれば「ノリ弁」状態だ(黒塗りって日本だけじゃないんですね💥)。
将校の方も資料請求しても機密情報として却下される。これでは起訴できない。
ということで双方にとって迷宮状態になるのだった。
そもそもは裁判前の調査という地味な作業が中心の話である。最終的には役者の演技合戦が中心となる。
困惑・狂乱を熱演のタハール・ラヒム、あくまで筋を通す実直を絵に描いたような中佐役カンバーバッチ。とはいえさすがに年季の差か、信念を持つベテラン弁護士というより頑固ばーさんに見えるジョディ・フォスターには二人とも勝てなかったようである。彼女がエンドロールに登場する実物とはかなり異なった印象の外見にしたのもわざとかな。
判決後の後日譚もなかなかにひどい。もはや正義のためには正義を逸脱しても構わないとしか思えない。そんなことは許されるのだろうか。
マクドナルド監督の手腕は着実な描写の積み重ねで十分に発揮されていた。
ただ、見てて拷問前と「現在」の区別が付けにくいのが難点だった。
グァンタナモでの拘束の様子はなかなかに辛い。
拷問場面が必ず出てくるだろう、いつ出てくるのかとドキドキしていたけど(なら最初から見るなって話だが)、フラッシュが炸裂するので要注意だろう。冒頭に注意書きを出すべきレベルではないか⚡
なお同じ問題を別方向から取り上げたのが『ザ・レポート』である。
ついでだけど、カンバーバッチのシュッとした背筋の軍人姿勢は、日本の役者さんが兵士を演じる時にはぜひ参考にしてもらいたいですね(^◇^)
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