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2022年5月

2022年5月19日 (木)

「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」「ザ・バットマン」:歳をくっても青二才

220519a「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」
監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド
米国2021年

「ザ・バットマン」
監督:マット・リーヴス
出演:ロバート・パティンソン
米国2022年

最も能天気に始まった本『スパイダーマン』シリーズ、一年目は部活にパーティ、二年目は修学旅行、そして三年目は--一気に雰囲気チェンジ⚡ 能天気なお子ちゃまメンタルだった若者が、全てを手放し自己の確立と自立への道を歩むというシビアなものであった。

思いがけない邂逅と、全てを覚悟した最後の決断。ついにこれで学校も「卒業」だ。これまでのシリーズを知る人間には、涙と感動でスクリーンを見る眼が曇るのは必至だろう。

……とは思うものの、心の隅で「やり過ぎじゃないの?」とか「なんだかなあ」などと感じちゃったのも否定できぬ。そこまで畳みかけて感動させたいか??というのは言い過ぎかな。

やはりこれはスパイダーマンが本当に好きな人にこそふさわしい映画なのだろう。
私のように各シリーズを適当につまんで見ている人間には向いてないようだ。そもそも過去作復習するの面倒くさい、などと思っている段階で失格だ~。

それにしても豪華出演陣には目がくらむ✨ 一体これで採算がとれるのか(?_?)などと心配しちゃったが、公開するなり特大大大ヒットで、あっという間に取り戻せたらしい。
まあ、とりあえずウィレム・デフォーとアルフレッド・モリナのファンは見て損なしとだけは言っておこう。

ただ、クライマックス後の状態がどういうものなのか今一つよく分からなかった。少なくともIDは存在しているんだよね。そうじゃなきゃ不法入国者と同じになっちゃう。

それにしてもパラレルワールドにマルチバース💥両方揃ったらもはやなんでもありじゃないの、などと思ったりして。


220519b 続いて『ザ・バットマン』、SNS上の略号は「ザバ」だ。
これまでのバットマンは表の顔は推定年齢30代、富豪の軽薄なプレイボーイだった。しかし、この度のシリーズでは一転してバットマンなり立てホヤホヤのまだ2年。当人は、若くて資産があるのに暗い洞窟内で孤独に暮らすヒッキーの変人として市民に認知されている。
冒頭数分見ていると「あー、今度の主人公は鬱陶しいヤツだ」と悟れる仕組みだ。

出だしはサイコホラー風に始まるのだが、主人公の謎の解明方法は旧弊なハードボイルド式だ。つまり、怪しいと思われる関係者に突撃👊し、新たな方向を示唆する証言を得て、またその対象に突撃して新たな証言を--というのを繰り返していくのである。
これではいくらリドラーが謎を出しても甲斐がないだろう。

しかも相手がシリアルキラーだったのがいつの間にか社会に不満を持つテロリストになり、最後にはバットマンに個人的恨みを抱く●人になってしまう。一体お前は何がしたいんだ。
格差問題持ち込んで「持たざる者の不幸」と言っても、たくさん持ってる奴もやはり不幸で陰々滅滅とした顔をしてるのだからどうしたらいいのかね。

街は暗い割には普通にニューヨークにしか見えず、格闘シーンは妙にモサモサしている。これはわざとだろうか?

折角のパティンソンはマスクをかぶっている時は2割、かぶってない時も前髪のせいで5割ぐらいしか顔が見えない。困ったものよ(-_-メ) これでは『ライトハウス』の方がよほどたっぷりパティンソンを眺められるぞ。ヒゲはやしてるけどな。
リドラーやペンギンはほとんど顔が分からず、中身が誰でも変わらないのではとか思ってしまった(^^;

良かったのはゾーイ・クラヴィッツとジェフリー・ライトかな。
キャットウーマンのマスクは鼠小僧っぽかった。ネズミならぬ猫娘かっ=^_^=


以上の二作に描かれたような若いモンを生暖かく見守ってやれないというのは、自分がまだ未熟者だということであろう。猛省したい。

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2022年5月 9日 (月)

「愛すべき夫妻の秘密」:笑うべきドラマの笑えない事情

監督:アーロン・ソーキン
出演:ニコール・キッドマン
米国2011年
アマゾン・プライム視聴

アーロン・ソーキンの監督脚本最新作は日本では配信のみで劇場公開がなかった。米国では劇場でも上映されたが、賞レース参加のためだったようだ。
その甲斐あってか中心の3人が俳優賞にノミネートされた作品である。

個人的にはシットコム女優ルシル・ボールを主人公にした映画だというので是非とも見たかった。というのも、子どもの頃にTVで『ルーシー・ショー』は毎週やってて大好きだったのだ。また高橋和枝の吹き替えがピッタリ過ぎで、毎回欠かさず楽しみにして見ていた。もう懐かしさの極み✨だ。

しかし、アーロン・ソーキンであるがゆえにそう一筋縄ではいかない。
映画は彼女の主演ドラマ『アイ・ラブ・ルーシー』のとある回が作られる一週間を舞台にしている。昔の時代なので、スタジオに客を入れてその前で演じて生放送する。脚本の検討から放送まで、それを一週間単位で繰り返していくのである。(過程が詳細に描かれていて面白い)

その問題の一週間に「危機」は訪れた。新聞が彼女に関するスキャンダルをすっぱ抜くのかもしれないのだ。それは「赤狩り」と「浮気」である。その二つに彼女とその夫(ドラマ内でも夫婦役を演じる)の過去の総てが凝縮されている。

才能あるが型破りで映画女優としては成功できなかったルシル、キューバ移民で苦労人だがモテ過ぎミュージシャンの夫。彼らは同じ家に暮らしながら完全すれ違い夫婦生活を送っていた。
その解決法が連続ドラマでの「夫婦共演」だった。彼女はそのために努力を尽くす。しかし、その関係が突然やって来た危機の下でどうなったのか、顛末を描くという次第である。

見始めて『アイ・ラブ・ルーシー』は夫婦出演なのに、どうして私が見てた『ルーシー・ショー』では「赤毛の未亡人」だったのかと最初疑問に思ったが、そういうことだったのかい(~o~)

迫りくる新聞発表のタイムリミット、脚本と演技の細部にわたってこだわりぬいた変更に次ぐ変更。そしておなじみ喋りまくるソーキン節の登場人物たち(字幕読むのが追い付かねえ~💦)。
加えて当時のTV業界が今では考えられないようなタブーを抱えていたのにもビックリだ。「妊娠」「出産」という設定は禁止、妊婦は登場人物になれない。「年下の夫」も「キューバ人」もダメ。
それらをぶち破ったのがルシルなのである。知らなかった(!o!)
キャサリン・ヘップバーン風な常にパンツルック、恐れを知らず妥協もしない。

ドラマに登場する「ルーシー」を演じるニコール・キッドマンはあまりにそっくりなので衝撃を感じたほどだった。ウン十年も前に見たTVの印象が脳内にまざまざと蘇ってくる。特にイタリアでブドウを踏むというネタで笑いを取る場面、ああいう感じである。
他に夫役バルデム、共演者役シモンズも好演。ソーキンより完全に役者の映画だ。

加えて、疑似回想ドキュメンタリー風の語りを入れる手法はかなり疑問だった。当人たちはとっくに亡くなっていて、役者が演じているのだからなんだかなあ。
邦題は見てみると「そういう意味で付けたのか」と理解はできるが、やっぱり訳わかんないタイトルである。なんとかしてくれ💢

それにしても米国でも若いもんは彼女のこと知らないだろう。やはり映画賞の投票者の大部分を占める高い年齢層向けか。

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