「プリズン・サークル」
著者は犯罪者の更生プログラムを描く『ライファーズ』、元受刑者が参加するプロジェクトのドキュメンタリー『トークバック 沈黙を破る女たち』を作って来た監督である。
最新作の『プリズン・サークル』では日本の刑務所で唯一行われている犯罪者更生プログラムを取材した。これはその書籍版だ。雑誌「世界」に連載したものをさらに加筆している。
取材に至った経緯、行われたプログラムの詳細な内容、映画では入れられなかった個人の背景やその後、さらに他の研修生のエピソード、取材の困難さ(色々とあったらしい)も描かれている。
「映画」後の状況については、現在は当時のスタッフが去ってプログラムも縮小されてしまったそうな。ショックである(!o!) 残念の一言だ。
以前とある研究者がこの映画について「性犯罪者に対しても同じようなスタンスが取れるのか」とやや批判的な意見を述べていた。ここでは、映画に登場しなかった性犯罪者たちについても一章割かれている。(なぜ映画には登場させなかったか理由もあり)
また、エピローグの著者の「告白」には驚いた。表現者と現実との相克というようなものを感じた。生きることはつらい……などと思ってしまった。
この本を読めば映画のシーンが頭に浮かびあがると同時に、また別の情景が見える。小説と映像化の関係だけでなく、ノンフィクションにおいても文章には文章、映像には映像なりに描けるものがそれぞれに存在するのだと実感した。
映画を見てない人、見た人の双方にオススメである。
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