「シチリアを征服したクマ王国の物語」(字幕版):食われる前に騙れ
監督:ロレンツォ・マトッティ
声の出演:レイラ・ベクティ
フランス・イタリア2019年
原作はイタリアの作家ブッツァーティの児童文学、フランス在住のイタリア人監督がアニメ化したものである(言語は仏語)。
見ればアッと驚くのはうけあい、とにかく物語も語り口も絵柄もぶっ飛んでいる。
町を回っては芝居を見せる旅芸人の老人と少女の二人組。一夜の寝床を求めて洞窟に入ると、巨大なクマが突如出現する。食われないために二人はクマが登場する持ちネタを必死で披露しようとする。
それは、クマの王の息子が人間にさらわれてしまい亡国の危機に陥る。そのため人間の支配するシチリアへと向かうという波乱万丈の物語だった。
独特の造形・色彩による自然描写に目を奪われる。全体のイメージもキリコのパロディあれば、戦争場面はロシア構成主義が元ネタだろうか。
雪玉を転がし幽霊と踊る。変なものが色々と登場し、イノシシ風船と化け猫には笑ってしまった。魔術師にシチリアの大公--人間も怪しいキャラに欠かない。
次々と起こる奇想天外⚡子どもが吹替版で見ればさぞ楽しいことだろう。
でも、お話の方は色々と含蓄がありそうで一筋縄ではいかぬ。語り手が変わると、当初予定されていた「本編」だけでは終わらない。語り方の巧みさが面白さを2割増ししているようだ。
後から知ったが、原作には少女(たち)は登場しないそうだ。また、後半の展開も映画のオリジナルらしい。どうりでなんとなく今どきのファンタジーぽい感じがした。
とはいえ、突飛な面白さは保証付き。82分という長さもちょうどよい。
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