ディミトリス・パパイオアヌー「トランスヴァース・オリエンテーション」
会場:彩の国さいたま芸術劇場大ホール
2022年7月28日~31日
ギリシャ出身のアーティストであるパパイオアヌー(どういうイントネーションで読んだらいいのか未だに分からず)、アテネ五輪の開閉会式の演出を手がけて一躍有名になったというのは後で知った。
それまで名前も知らなかった彼の振付・演出を担当するこのパフォーマンスを見ようと思ったのは、音楽ホールのコンサートに来た時に記録映像の上映会をやっていて、そのポスターがとても「変」だったからだ。(これとかこれですね)
さて実際見てみると……「夏だ!牛だ!全裸祭りだ、ワッショイヽ(^o^)丿」というのは半分は冗談だけど、残り半分は正しい、かも。やはりとてつもなく「変」(一部お笑いあり)だった。
そもそも見せるのがダンス・パフォーマンスではなかった⚡ 「素人には到底できないような動作」である。
現場猫に注意されそうな危険な脚立の使い方をしてドキドキしたかと思えば、金網だけで出来た簡易寝台に身体ごと二つ折りになって挟まって、そのままウロウロした挙句バタンと倒れて解放されるとか(なぜ怪我しないでいられるのかよく分からない(;^_^A)。
内容は一貫したテーマがあるとはいえ、色々なエピソードをつないだような形式を取っている。なんとなく昔TVで見たコントを思い出すところもあったりした。
ミノタウロスの伝説を元にしているようなのだが、恐ろしいほどのイメージの現出を生身のパフォーマーたちを使ってやってしまうのがすごい。
当然ながら照明や装置もハイレベルで凝りに凝っている。
ただそこに描かれているのは泰西名画のような美的構図であり、ほとんどのパフォーマーたちの均整の取れた肉体であり、完璧で隙がない。そして鑑賞する側に西洋文化のシンボルとかアレゴリーの知識がないと理解しにくい点があるように感じた。
あと個人的に失敗したのは座席の選択である。前から5列か6列目ぐらいだったか。舞台全体が視角に入らないし、床面を見ることもできない。特にラストの〈水〉の場面の展開が完全に分からなかった。私の周囲では背を伸ばして必死に見ようとしていた人多数だった。
少なくとも中央から後ろ半分の座席でないと無理だろう。まあ「全裸」をよく観察したければ別だが(^▽^;)
音楽は全てヴィヴァルディを使用--というのも個人的に注目点だったが、曲を流すというより部分的に引き延ばしてサンプリングしたような使い方だった。ある意味、ヴィヴァルディの特質に即した使用法かもしれない(と言っちゃっていいかな💀)。
かように刺激的で、言語に変換できない表現が色々とあったパパイオアヌー。しかし、それとは別の文脈で一番印象的だったのは、巨大発泡スチロールの場面である。行楽地(?)みたいな明るい浜辺で男女がキャイキャイ騒ぎながら楽し気に上に乗りながら転がしていく(これ自体、普通の人間には無理な動作)。
その後に今度はネクタイ姿のビジネスマン風の男が現れて、一人でヒイヒイ言いながら小さ目のスチロールを、やはり上に乗って舞台の端から端まで転がしていくのである(これまたシロートにはできない)。
これを延々と見せられながら、私の頭の中に思わず「社畜」という言葉が浮かんだ。つらい、つら過ぎる……(T^T)
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