ヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」:待ち望んだ英雄は(以下略)
指揮:リナルド・アレッサンドリーニ
演出・衣装:ロラン・ペリー
会場:新国立劇場オペラパレス
2022年10月2日~10月10日
新国立劇場が二年に一度バロックオペラやると発表してこれが最初の演目になる--はずが、コロナ禍で延期。二年以上待たされた中、遂に上演である。メデタイヽ(^o^)丿
指揮は当初の予定通りアレッサンドリーニということで、期待はふくらむじゃあ~りませんか。
舞台の設定はエジプトにある博物館の収蔵庫らしい(時代は明示されてないが現代? 少なくとも20世紀)。大勢の職員が行き交う中、収蔵されている美術品や遺物の間からチェーザレやクレオパトラなどいにしえの登場人物が幻の如く出没するという次第である。
そこに繰り広げられるは「政治」ならぬ「性事」……歴史を前提にしたといっても完璧に色恋沙汰にシフトしたエロさ爆発な描写の演出となっている。
博物館が舞台ならば植民地からの収奪というような観点が出てくるかと思ったら、そういう方向は全くなかった。
クレオパトラがチェーザレを誘惑する場面ではロココ調絵画の額に入って描かれた人物に扮したり、展示用ガラスケースに入って対面したり、横倒しの巨大なファラオ像の上で歌ったり--と大掛かりな舞台装置を生かしたスペクタクルな展開には目を奪われる。
チェーザレ役はマリアンネ・ベアテ・キーランド。上背があって外見的には「英雄」として申し分ないのだけど、声はやや線が細く押しが弱い印象だった。実は過去にBCJのコンサートで2回見て(聞いて)いたのだけど、完全に忘れていた。まあ、10年以上前だからしょうがないよね💨
クレオパトラ役の森山真理はそもそも役柄自体目立つせいもあるだろうが、歌唱・演技さらに加えてエロ度において会場の目と耳の引き付け度が一番高かった。
二人のカウンターテナー勢の活躍も目立った。クレオパトラの弟にして政敵トロメーオに扮した藤木大地は尊大かつキモい憎まれ役にひたすら徹して、ご苦労さんです。
また、村松稔之は従者ならぬ侍女としてコメディ部分を背負って笑いを巻き起こしていた。2幕の冒頭のアリアも大いに受けたもよう。
一方、疑問だったのは折角アレッサンドリーニを連れてきたのに、モダンオーケストラ(東フィル)を使っていたこと。通奏低音部門は古楽勢を起用しているのにもかかわらず、である。なんなのよ💢この中途半端さ。
この布陣を決定したのは新国の音楽監督だろうから、そんなに古楽奏者が信用されてないってことですかね、とイヤミの一つも言いたくなる。
そのせいか、煽り立ててナンボなヘンデル先生のオーケストレーションが全く生彩のないものになっていたのは極めて残念であった。
後からよくよく考えてみると、結局これは元々パリ・オペラ座でやった企画のうち、アレッサンドリーニとタイトルロール歌手、演出、美術・舞台装置等を日本に持ってきたってことだよね。(なお、延期前の予定ではチェーザレがアイタージュ・シュカリザーダ、クレオパトラはミア・パーションとのこと)
なんとなく、アレッサンドリーニが「お雇い外国人」ぽいポジションに見えたのは私の眼が曇っているせいだろうかニャ(ΦωΦ)
大掛かりな舞台装置、20人もの助演陣、歌手の皆さんのパフォーマンス(それぞれ差はあれど)は良いとして、肝心なところが足りなかったというのが結論である。
なお、私の座席の前の列に背の高いおじさんがずらりと並んでて、頭がかぶって見えねーよ(`´メ)とストレスがたまる中での鑑賞であった。
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