カヴァリエーリ「魂と肉体の劇」:宗教的エンタメ劇
演奏:古楽アンサンブル・エクス・ノーヴォ
会場:シアター・カイ
2022年11月5・6日
1600年というオペラ黎明期にローマで生まれた音楽劇を、演出家を入れて演劇用のホールで上演という画期的な公演である。私は二日目に行ったが、満員御礼だった。
内容はオペラ以前オラトリオ未満な対話歌劇とでも言ったらいいのだろうか、抽象的な概念が人格となって宗教&道徳問答を繰り返すというものだ。この公演で存在を初めて知った。
エクス・ノーヴォの前回公演『ラ・ペッレグリーナ』同様、録音よりも実演でないと面白さが分かりにくそうな内容である。
抽象的なキャラクターたちは二者で対話したりコーラスしたりで、ソロ自体は少ない。耳だけで聞くのと、目の前で演じられるのとではかなりイメージが異なるだろう。従って、「劇」に力点を置いた上演方針は吉と出た。
地上で「永遠の生命」か「現世での快楽」かと思い悩む「魂」と「肉体」のカップル。二人の前にそれぞれの立場から様々な者が説得に現れる。
ここが歌手の皆さんのパフォーマンスの見せどころ聞かせどころだ。
敵陣営の「快楽」トリオがやって来て踊りつつ、現世は良いとこ楽しいぜ~🎶と歌う。お茶目でカワイイ感じの振付に笑えました(^O^)/
さらに「現世」と「現世の命」カップルは、羽振りよさげなチャイニーズマフィアとその情婦風で派手にイチャイチャしながら出現し、この世での成功を約束する。
神のいる「天上」と対置されているのは「地獄」ではなく「現世」。ということは現世をそのまま生きれば地獄への道がセットになってついてくるということか。
こんなにも強調されているということは、実際には地上のご利益を追及する人々が多かったということだろう。
今も昔も同じですね⚡
そのような各種の誘惑を払いのけて神への信仰を固くゲットするのが三幕構成で描かれる。
楽譜には演出家としても活躍したカヴァリエーリの細かい指示が書かれているとのこと。そのような当時の上演のありようを想像させる演出とパフォーマンスだった。
多くの歌手は複数の役を掛け持ちで、コーラスしたり、踊りつつ歌ったりとご苦労さんです。見てて聞いて楽しかった🎵
会場は演劇用のホールなので当然音響はデッドなのだが、却って音や声がダイレクトに伝わり聞きやすい面もあった。器楽隊とは正反対にある座席に座ってしまったので、演奏中の姿がよく見えなかったのは残念だった(音はよく聞こえた)。
このようなレアな作品を見せて(聞かせて)もらってありがとうございました~ヽ(^o^)丿
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