ヘンデル「シッラ」:英雄が来ては溺れる海辺かな
演出:彌勒忠史
演奏:ファビオ・ビオンディ&エウローパ・ガランテ
会場:神奈川県立音楽堂
2022年10月29日・30日
10/29
ヘンデル先生ばかりがなぜモテる💖な今シーズンでありますが、この公演もコロナ禍で2年以上待たされたものだ。
無料配布の「神奈川芸術プレス」というPR誌があって2019年10・11月号にビオンディのインタビューが載っていて、上演予定が2020年2月末からになっている。同じ冊子の中の記事を読んでやなぎみわのパフォーマンスを見に行ったのがもう大昔のように思えるぐらいだ。
私は29日公演の方に行った。神奈川県立音楽堂は5年ぶりだった。あまりに久しぶりにステージを眺めてこんなに狭かったっけ👀と改めて驚いた。これでは少しでも大きな舞台装置を入れるような演出は不可能だろう。
となると、演出家の腕の見せ所となるわけですね……(^^)
美術や衣装は歌舞伎調を取り入れていた。ズボン役(ハカマ役?)は隈取もして、衣装のおかげで小柄な女性でも体格カバーできるのが効果的だった。女性役も含めて歌手の方々はきれいなキモノを着て心なしか嬉しそう。
ただ全体的にはなんとなく外国人観光客にウケそうな「ナンチャッテ日本」ぽい感が否めずであった。
本作は上演記録がなく、さらにヘンデル先生にしては時間が短いとのことで、劇場ではなくマイナーな場所でこそっと上演されたかもしれないそうな。
ストーリーは「英雄色と権力を好む」そのままの将軍が周囲をひっかきまわして迷惑をかけるというもの。
音楽面は充実の一言。エウローパ・ガランテは演奏では全く文句はなく、ビオンディは過去の同じ会場でのオペラ上演と同様に弾き振りしながら弓を指揮棒代わりに振り回していた。
チェンバロ、チェロ、テオルボについてはやはりバロックでは芯でありキモとなる楽器なのだ、というのがダイレクトに伝わってきた。
歌手の方は錚々たるメンツ--なのだが、オペラにうとい私はあまり知識なく(^^;ゞ
でも、冒頭シッラ役ソニア・プリナ、続いてレピド役ヴィヴィカ・ジュノーのアリアの連続波状攻撃に「キタ~ッ⚡」という衝撃が押し寄せたのは間違いない。その後もいろいろと聞きごたえあり過ぎであった。
特にレピド&フラヴィア(ジュノー&インヴェルニッツィ)の「夫婦」デュエットには大いに泣けた。
演出面はステージが狭くてもうまくやっていたと思った。ただ、事前のプレトークで構造上ろくに装置が使えないとか、仕方なくプロジェクション・マッピングで、などと言い訳を先にするのはどうなのよ。デウス・エクス・マキナだって別に上からじゃなくて、どこからどんな風に出てこようと工夫次第ではないのか。
狭い舞台と言えば東京文化会館の小ホールだって相当なものだが、あそこでもちゃんとヘンデルのオペラを上演している(『デイダミーア』『アリオダンテ』)。……まあ、当時の上演形式なので振りを付けて出たり引っ込んだりするだけとはいえ。
ところで神様の代わりにラストに女性ダンサーたちが上から布を伝って降りてきたのだが、左側の人が急降下し過ぎでまるで落下してるように見えた。私の周囲の客席からは悲鳴が上がったんだけど、あれわざとじゃなかったのかな?? 事故になったら大変なところだった。
和風テイストの演出や美術のバロックオペラについては過去にも存在している。しかし今回「和服着てあの歩き方はない」などと非難が起こった(特に歌舞伎ファンはキビシイね)。
が、見てて正直これは日本国内より海外での方がウケると思った。今の時代「ナンチャッテ日本」を海外の演出家がやれば「文化盗用」と言われそうだが、日本人がやるなら問題なしだ(多分)。
そしてNHKのカメラが入っているのを見て、これ収録して海外向けに売るつもりかなあなどとうがった見方をしてしまった私を許してチョーダイ。
ともあれ、演出の評価がどうであろうと見て聴いて満足できたのは確か。簡単に比較はできないけど、チケット代も新国ヘンデルの約半額だしな💸
なお、NHK-BSで1月に放映があるということとトランペット奏者の交代があったというお知らせは、もっと目立つところに何枚も掲示してほしかった。全く気付かなかった(;一_一)
来年はBCJが『ジュリオ・チェーザレ』をやると決まっている。しかも先日、新国でタイトルロールやってたキーラントが今度はコーネリアとな。さらにトロメーオだった藤木大地がニレーノだ。
この演目ばかり人気があるのはなぜだっ(?_?) とはいえティム・ミードのチェーザレは見て(聞いて)みたいのう。
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