「ミセス・ハリス、パリへ行く」:花もゴミも踏み越えて
監督:アンソニー・ファビアン
出演:レスリー・マンヴィル
イギリス2022年
日頃ファッションに縁のないわたくしですけど、チラシを飾る平凡そうなオバサマと美しい緑のドレスを見てつい行ってしまいました。
それにこのオバ……失礼、女優さんよくよく見たら『カササギ殺人事件』の主役の人じゃないの。おまけに『すべてが変わった日』ではダイアン・レインをいぢめるコワイ悪役もやってたわよね。
ロンドンで働く家政婦が職場でふと目にしたディオールのドレスに憧れて欲しくなり、金をためて遂にパリまで行ってしまうという一種のファンタジーです。
似たような感じの映画は『ボブという名の猫2』がありましたわね。あちらと同じく敵役は一人だけ(イザベル・ユペール扮する支配人)で、他はみんな優しい人ばかり。
折しもパリの名物とされる?ストの真っ最中です。それもゴミ収集案件とあって異臭充満する道路を越えてディオールに行けば、中は別世界。平凡な庶民のオバサンはそもそも想定外🆖状態なのでした。
蛮勇を奮って本店に突入する彼女はアクティヴで見てて元気が出ちゃう。スタッフやモデル、お針子たちとも知り合い、ゴミの山に埋もれているとはいえパリの街を駆け抜けていきます。
そして身分や階層に関係なく、現金握った新しい時代の消費者として出現して旧弊なディオールの体制を揺るがし、団体交渉まで率いてしまうハリス夫人はまさに「革命的」というところかしら。
もはや「家政婦」も透明人間でなくて立派な市民の一人なのです。
……というのがテーマらしいんですけど、それが明確に脚本には書かれているのかもしれません。でも演出はあくまでも彼女を「いい人」として強調し、オブラートにくるんだ夢の世界の出来事風に描いています。ここら辺は塩梅が難しいわね。
ということで、基本的には役者たちの演技を楽しむタイプの作品だと思いました。モデルのナターシャ役の人がかわいいです(#^.^#)
着る機会もないのになんでドレス欲しがるの?という疑問を結構見かけましたけど、これって愚問ではないかしら❗❓ でもまあ、結局無駄ではなかったということね。
ディオールじゃなくても彼女が普段着てた花柄のシャツとエプロンが素敵なので、ぜひ私に譲ってほしい(^O^)
難点はロンドンの家政婦仲間の友人が「マジカルニグロ」っぽいこと。それとサイズが完全に異なる人にドレスが着られるのはおかしいですよ。
なお、最初になぜこの映画を「ファンタジー」と断言したかというと、原作がポール・ギャリコだから--じゃなくて「駅の待合室で寝てて荷物が盗まれない」からです。そんなことあるわけないじゃないのっ💢
観客のほとんどが中高年女性でした。ヒロインが60歳という年齢なのも珍しいし、やっぱり花とファッション(とゴミ)の都パリですもんねー。憧れちゃう(*^^*)
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