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2023年4月

2023年4月29日 (土)

「ルソン・ド・テネブル第一回演奏会」:雨の総武線無情

230429 会場:すみだトリフォニーホール小ホール
2023年4月7日

キリスト教の受難節に伝統的に演奏されたという「ルソン・ド・テネブル」、この時期に実際に聞いてみようという演奏会である。昼の部はイタリアとベルギーからドゥランテとフィオッコという作曲家の作品がだったらしいが、根性がないためパスして夜の部のフランス編だけ聞きに行った。
しかし雨は降るし、ただでさえいつも混んでいる総武線はトラブルでしばらく止まっていたらしく、遅れた上に人がギュウ詰めになっている。結局2本見送ってから乗った。
会場につく前から既にエネルギー激減状態だー⏬

夜の前半はF・クープラン。合間に他の作曲家の器楽を挟むという構成である。彼の「ルソン・ド・テネブル」は録音は多く出ているけど、なかなか実演で聞く機会は少ない。通常はソプラノ(またはカウンターテナー)で歌うのが多く、プログラムでもそのように記載されていた。しかしなぜか開演前に突如音楽監督の村上惇が現れ、急きょ第1ルソンのみ彼が歌うことになったというグチまじりの告知があったのである。
テノールというのは珍しいけど、実際聞くと何やらより濃密な味わいが感じられた。突然の代打ご苦労さんです。
どうなるかと思ったら「第3」では「第1」で予定されていたソプラノの人が無事に復活していた。何があったのか(?_?)

後半は歌手交代してシャルパンティエ作曲のルソン。闇に沈み込んでいくようなクープランに比べて、こちらはリコーダー2本(宇治川朝政&井上玲)が加わったせいか華やかな響きがあった。
器楽演奏されたマレの組曲も良かった。前半から唯一通しで参加していたガンバの平尾雅子はさすがの貫禄である。

会場は残響が少ないと言えるか(?)。歌手の声がダイレクトに客席に届くような印象である。それだけに歌う方は難しいかもしれない。

タイトルに「第1回演奏会」ということは毎年やるのだろうか(^^? 第2回もやるなら聞きたいもんである。


帰りはホームを間違えて「東京行き」に乗ってしまった。仕方ないので大人しく東京駅まで乗って行った。しかし東京駅の乗り換えは渋谷と同じくらいに魔窟であった。やはり総武線に祟られている💀

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2023年4月23日 (日)

「キングメーカー 大統領を作った男」:光の一寸先は闇

監督:ピョン・ソンヒョン
出演:ソル・ギョング、イ・ソンギュン
韓国2021年

限りなく実話に近い韓国政治サスペンスである。
モデルは後に大統領となった金大中とその選挙参謀、ただ人物の名前などは少し変えてあるそうだ。
理想主義の政治家と現実主義者の手法の差と対立みたいなのを想像して行ったら若干違った。むしろ『ユダ&ブラック・メシア』に近い。つまり光の側に立つ人間と常に影である人間の愛憎入り混じった相克である。

主人公は自分を政治家に売り込むが、彼がどんな人間かは冒頭のニワトリの話と、手紙の中の薬草で早々に示される。その後、前半はユーモアまじりで展開する。なにせ最初にやるのは「自作自演ネガティブキャンペーン」だ(^▽^;)
しかし彼は功績を挙げても脱北者ということで表舞台には出られないのであった。そして同時に操作されやすい大衆に内心怒りを抱いている。

まさに理想主義者の政治家は陽、表に出られない主人公はその陰から出られない。彼らの心中を暗示する照明の使い方がうまい。そして二人の役者の演技も、である。
後半は暗転して政治の暗い領域へと突入していく。ラストシーンの微かな幻想味が心を揺さぶる。

この手の史実が絡んだ政治劇はもはや韓国映画の十八番と言っていいだろう。恐れ入りました~💫
それにしても主人公の手法が政敵になぞり返されてしまう件りはコワイ(>y<;) 「政界の一寸先は闇」は日韓共通であるよ。

 

なお、問題の爆破事件の犯人の件だが……他にいるんだよねっ(?_?)

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2023年4月20日 (木)

東京・春・音楽祭2023「福川伸陽(ホルン)&古楽の仲間たち」:紙チケ無敵

230420 演奏:レ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウ
会場:東京文化会館小ホール
2023年3月24日

今期ハルサイは2公演行った。最初はこちらである。
バロック・ホルンの福川伸陽を中心にオーボエ三宮正満、リコーダー太田光子、ヴァイオリン高田あずみ、フォルテピアノ川口成彦などなど総勢11人豪華出演陣のコンサートだった。
福川氏によるとバロックホルンのリサイタルは初めてとのことだ。

全員総出演のヘンデル『アルチェステ』(未上演の芝居らしい)の序曲に続き、テレマン、グラウンなどホルンが登場する作品が様々な編成で演奏された。
管楽器の輝かしい音がプリッとした感じで鮮やかに響く✨ その中でファゴットは常にドスが効かせていた。

途中で楽器の紹介があり、川口成彦のフォルテピアノはポルトガルの楽器の複製とのこと。音がチェンバロぽいのが面白い。装飾も大変に美しいものだった。

ただ選曲がプレ古典派寄りだったので、私の好みには少し時代が新しすぎたかな(^▽^;)
なので後半のヴィヴァルディ、バッハの方がよかった。特にバッハのブランデンは弦を中心に聞いてしまいがちだが、管楽器がドーンと前に出てくるとまた違った印象で、これまでとは異なった聞き方ができた👂


ところで今回QRコードのチケット買ったのだけど、当日読み取り機のトラブルがあってかなりイライラした。(そもそも読み取りが変なのに、客のスマホの方が悪いと決めつけている対応)
二台あっても係員が一人だから、片方がトラブルになるともう確認する人がいないんだよね。極端な話、チケットがなくても入れてしまう。
やっぱり紙チケット無敵ということか。

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2023年4月12日 (水)

「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」:衝撃の3分30秒

230412b 監督:シャンタル・アケルマン
出演:デルフィーヌ・セイリグ
ベルギー1975年

1975年作ながら昨年日本公開。10年に一度の「英国映画協会史上最高の映画100選」2022版で突如の第1位選出--。
ある意味、超話題作である。ケーブルTVのチャンネルでアケルマン監督特集をやっていたので録画して見た。ちょうどこの時期ヒュートラ渋谷でも特集上映をやっている。

話題の所以の一つは上映時間200分❗で、しかもそのほとんどが主婦の平凡な日常を延々と長回し固定カメラで撮っていることにある。
主人公のジャンヌは40代半ばの未亡人で高校生の息子とアパートに暮らしている。彼女の三日間--正確には1日目の午後から3日目の夜までをひたすら追う。
バスタブを洗う、靴をみがく、夕食の支度をする(昼食が手抜きのサンドなのは主婦あるあるだ)、買い物に出る等々が繰り返され、カメラはじっとそれを執拗なまでに撮り続ける。
これがアイドルの密着配信映像だったらどうだろう。親しみが増すだろうか。でも、ここでは見れば見るほどジャンヌは遠くなっていくようだ。

そもそも彼女は規則正しい繰り返しの生活を信条としているらしい。息子が今夜は遅いから日課の散歩をやめようと言っても「ダメ」と許さない。訪問者さえ定刻通りにやって来るのだ。
その時間通りの生活が2日目にズレていくのはたまたま外部の偶然のせいか、それとも彼女の内面に何事かの変化が生じたためだろうか。もしきっかけがあるとしたら息子との会話かもしれない。

家事の反復は退屈か? 少なくとも自分で行なうよりは、それをただ眺めている方が退屈と思える。それをあえて見せるのはなぜなのか。
切れ味があまり良くなさそうなナイフの皮むき場面はなんとなく緊張感を感じてドキドキする(ピーラー使わないのか)。だが、皿洗い場面に至っては見えるのは流し台に向かうジャンヌの後ろ姿だけ。後は長々と水音とブラシのシャッシャッという音を聞かされるのみなのだ。

恐らくは「定刻通り」「同じ行為」こそが彼女の本質であり拠って立つ全てなのだと思える。従って最後の「事件」が起こった理由は、相手が「いつも通り」ではなかったからだろう。それは許せないことだ。
日常に潜む瑕疵、それが大きくなって壊れゆく--そんな様相を描いているのか。しかし作品内では何事も断定されず、ゆえに観客も何も断言できない。

今回、私は家のTVで録画を数日かけて鑑賞という邪道な方法を取った。これではちゃんと見たことにはならないと言われてしまうかも。本来は映画館のスクリーンでイッキ見するべき映画であるはずだ。
しかし正直言って、映画館だったら途中で眠りこけないという自信はない(ーー;) いや、眠りこける自信があると断言しよう。目が覚めてもまだ同じ場面(もしかしたら翌日の💦)だったりして……。
ちなみに台所で肉をこねる場面の経過時間を確認したら(本当に肉をこねているだけ)3分半もあった。

見ていてアケルマン監督は自分の母親をモデルにしたのではないかと思った。少なくとも、スピルバーグの母親(食器を洗わなくていいように毎回使い捨てにする)みたいだったらこんな映画は作るまい。
そもそも監督がこの映画を撮った時は25歳だという⚡ ジャンヌよりも高校生の息子の方に年齢が近いのである。

それとM・ハネケがかなり影響受けているのが分かった。ジャンヌが室内や廊下を行き来する様子に、『ピアニスト』の主人公が自宅でペチペチとサンダルの音を立てて歩いている姿がすぐに思い浮かぶ。
破壊の場面を延々と映した『セブンス・コンチネント』はもろに「主婦」から「家族」へとの拡大版といえる。しかも「3日間」ではなくて「3年間」だ。
--という発見もあった。

今回、アケルマン特集放映したザ・シネマはHPやツイッターでほとんど宣伝してないのはちと残念。もっと宣伝すれば映画マニアが全国で8人ぐらいは加入してくれたかもよ。

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2023年4月 8日 (土)

「リコーダーによる17、18世紀のイタリア音楽」:雨の上野に力限りの縦笛が響くのだ

演奏:太田光子ほか
会場:上野学園1507教室
2023年3月18日

上野学園古楽研究室主催のコンサートということで、校舎の15階まで上がって行った。太田光子を初めとするリコーダー3人+ガンバ+チェンバロという組み合わせで、前半ルネサンス期、後半はバロックの作品というプログラムである。

冒頭はフォンターナのソナタで開始。太田氏のソロが冴えまくる。
その後はルネサンス当時の誰もが知っている流行り歌を最初に演奏して、続いて別の作曲家が変奏曲にした作品をやるという趣向。これも面白かった。

3番目に登場したチェンチ作歌曲「逃げろ逃げろ、あの空から」を元にしたマリーニのソナタ。これを聞いたら、なんだかTVドラマ『グッド・ファイト』のテーマ曲が似ているような気がしたのだけど、気のせいですかね(?_?) こちらもリコーダーを使っているためかもしれないが。元の歌詞もドラマの内容に合っているような。(器楽演奏だけど、曲ごとに歌詞の解説をしてくれた)

休憩後は一転してバロックモード。サンマルティーニはヘンデルのオペラのオーボエ奏者だがリコーダーも吹いたそうな。A・スカルラッティで3人リコーダーを吹きまくった後は、ヴィヴァルディのフォリアに突入。ヴァイオリン2人のところをリコーダーで演奏ということで、16小節の変奏が20回展開するその間、力の限りに吹き続けねばならぬ。
は、肺活量が~(~o~)
太田&浅井愛コンビの力投ならぬ力奏に感動であった。

途中でハプニング発生⚡ 櫻井茂のガンバの弦が切れそうになり、なんと客の目の前で弦の公開張り替え作業を行うという一幕があった。
「まるでサキイカのよう」とヨレヨレに裂けた弦を、皆で感心して眺めましたよ(^^;

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さて会場は校舎の15階にある練習室兼教室?なのだろうか。そもそも校舎への入口が分からず(生徒の玄関口とは異なる)、私も含めて門番の守衛さんにみんな尋ねてたもよう。ご迷惑ですいませんでした~m(__)m
ガラス張りの部屋で見晴らしが素晴らしい。この日は、普段ならば冴えない灰色の低層ビル群が雨にけぶって風情ありげに見える。遠くに浅草名物の金色の✖✖✖があり、スカイツリーはどこかと思ったら半分雲に隠れていた。

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2023年4月 4日 (火)

「戸谷成雄 彫刻」

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会場:埼玉県立近代美術館
2023年2月25日~5月14日

文化果つる地埼玉で数少ない文化施設である県立近代美術館。今期の企画展を始まってすぐの時期に行ってきた。
これまで全く知らなかった人なのだが、秩父にアトリエがあって主に木を素材にした彫刻家とのことである。
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木材をチェンソーで削ったり、作品の一部を燃やしたりした大掛かりな作品群が代表作のようだ。「木彫」というイメージを超えている。
1980年代、海岸に角材などでできた造形物を幾つも並べて一斉に火をつけるというパフォーマンスの記録映像があった。夕方から夜にかけて炎の光景が美しい。

素材は他にも色々あり、石膏を使った作品が軽さが感じられて興味を引く。ポンペイに題材を取った棺のような初期作品はなかなか迫ってくるものがある。


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⬅こちらは地下のスペースにデンとすえられた巨大な立方体。細い隙間が幾つも走っているがそこを覗いてもほとんど中を窺うことはできぬ。
しかし上から見ると全く異なるイメージが出現する--⬇230302tb



木製の巨大な象(というよりマンモスか)があってかなりの迫力だった。遠目にはワラのように見える表面は照明によってかなり印象が変わりそう。巨大すぎてスマホで撮るのをあきらめたが、一見の価値はある。
人によって好みは違うだろうけど、私は木彫の奥の奥へ達しようとする作品よりも少し外れたものの方が多彩なイメージが感じられて面白かった。

館内はほぼ貸し切り状態でしたよ💦
常設展は私が行った時期、模様替え中で休止期間(=_=) 地下ではグループ展を一つしかやってなかったのでそもそも人が少なく静かだったせいもあるだろうが……。
埼玉県民はもちろん県民でない人も見に行きましょう(^O^)/

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2023年4月 1日 (土)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2023年4月編

事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。

*1日(土)Stabat Mater 悲しみの聖母(澤江衣里ほか):日本聖公会志木聖母教会
*7日(金)バッハ マタイ受難曲(バッハ・コレギウム・ジャパン):東京オペラシティコンサートホール ♪8日・9日公演あり
*  〃  聖週間に味わう ルソン・ド・テネブル:すみだトリフォニーホール小ホール ♪昼・夜公演は別プログラム
*12日(水)2 本のリコーダーで巡るヨーロッパ諸国漫遊 ルネサンス・バロック編(海野文葉&細岡ゆき):八幡山の洋館
*14日(金)「憧憬の地 ブルターニュ」展記念コンサート2(大竹奏ほか):国立西洋美術館講堂
*15日(土)トリオバロック喫茶 店主のリクエスト曲 チェンバロ製作家木村雅雄氏を讃えて(大塚照道ほか):早稲田奉仕園スコットホール
*  〃   アンサンブルヴェルジュ カウンターテナーとバロック・チェロを迎えて:日本ホーリネス教団東京中央教会
*16日(日)二つのトレブルとバスによる三声のコンソート集(PRISM consort of viols):日本ホーリネス教団東京中央教会
*18日(火)時空を超えて届くヨーロッパからの手紙(鷲見明香ほか):日暮里サニーホールコンサートサロン
*20日(木)ダウランド(ヴォクス・ポエティカ):ムジカーザ
*21日(金)スパニッシュ・ハープと奏でる古のスペイン2(ラ・フォンテヴェルデ):としま区民センター小ホール
*22日(土)ソプラノ・ガンバと楽しむフルート音楽(コルテ・デル・トラヴェルソ):スペース415
*26日(水)斎藤秀範バロック・トランペットコンサート:ルーテル市ヶ谷センター
*30日(日)ガンバとリュートで巡るヨーロッパの旅(福澤宏&野入志津子):日本ホーリネス教団東京中央教会


NHK-BSP「クラシック倶楽部」にて4日(火)に「一行の詩のために~つのだたかしと望月通陽の世界」の再放送あり。音楽・アート・文学を横断する完成度の高い番組。一見一聴の価値はあります👀👂
ETV「クラシック音楽館」では23日(日)「鈴木雅明の北ドイツ オルガン紀行」。

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