「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」:長いタイトルには巻かれろ
監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
出演:ミシェル・ヨー
米国2022年
長い邦題を略して「EEAAO」。「エブエブ」とは絶対に言わんぞ。もっとも、実際見てみるとこの長~いカタカナ題名にするしかないと分かったけどな。
かつて『スター・ウォーズ』えぴ4が日本公開されるまで一年間待たされたことを未だに根に持って恨んでいる💀 が、さすがにこの情報時代に同じようなことは起こるまいと思っていた。
なのに、また公開まで一年待たされる事態💢 よもやこんなことが起こるとは誰が想像するかってーの。なんなんだ(`´メ)
一年分の期待が堆積する中、実際見てみたらなんと予想を超える質量詰込みの内容だった。
マルチバースということだけでも色々な世界が登場してきて大変なのに、夫婦の危機、母娘の対立、老親介護、アジア系移民の悩みにLGBTの困難、さらに過去の映画パロディ頻出--大ネタ小ネタ詰め合わせのジョークてんこ盛りだ~。
タイトル長いのも伊達じゃないほどで、油断してると置いてけぼりになる。映像注視してるとセリフの字幕読むのがおろそかになり、セリフの意味に気を取られると映像の進行に追いつかない。どうしたらええんじゃい(~o~)
配信やDVDなら「10秒戻し」を何度も繰り返したくなるだろう。これでは監督(&脚本)の手腕に大いに疑問を抱きたくなる。もっとうまく作れる人は作れるんじゃないの?とか。
達者な俳優たちがとっかえひっかえ色んな役を演じるのは面白いが、SFネタの理解に集中して見ていたらいつの間にか母娘が和解していたので、あれれ(?_?)と焦ってしまった。どうも脳ミソの老化現象甚だしい人間には、この映画は理解すべきことか多過ぎて容量超過である。
テーマ的に一番問題なのは、夫たる男と夫婦ではない世界も存在するのに、どこまで行っても母と娘の関係だけは変わらないということ。岩になってもやっぱり親子だというのは「あり」なのだろうか。なんだかゾッとしてしまった。
思春期(とそれ以降)の娘と衝突して荒ぶる反発に対抗するには、他の世界にある自分のパワーと能力をかき集めなくてはならない。それほどにエネルギーが必要だ。
しかし娘の方から見れば、母親は母であるということだけで膨大な力があるのだから他の世界から補充なんかしないでくれ❌と言いたいだろう。
現実のこの事件なんかまさに母親が「あらゆること」について「至る所」に出現して娘の邪魔したわけだ。コワイ(>y<;)
そしてラストは……「モンスターを倒した」だもんな。怪物なのはどっちだ?
あと、変態的な行為を行なって積み重ねることによって別次元の力を得る、というのは「善行を行ない積み重ねることで宗教的階位を昇る」というのと同じではないだろうか。そういう意味ではかなり(新興)宗教っぽい設定だと思う。
「母娘決戦」の舞台が宗教原理主義に支配されている世界なのは、故なきことではないのかも。
字幕が分かりにくいのもいささか疲れる要因だった。「フランス訛りで失礼」というのがが誤訳らしいと複数の意見あり。また、祖父が階段で「彼女が行くのを止めさせるな」というセリフの字幕が出て来た時には、意味を5秒ぐらい考えこんでしまった。
こりゃ「彼女を邪魔させるな」だよね。
--と色々書いてきたが、この映画を面白がれるかどうかは結局のところ「指がソーセージ」だというような設定を受け入れられるかにかかっていると思う。
だって、指がソーセージ(それも魚肉ソーセージっぽい)だよっ( ̄д ̄)
ランディ・ニューマンが声の出演をしていたと後から知った。見ていた時には全く気付かなかった。彼は大昔に『サボテン・ブラザース』でサボテンの声🌵やったぐらいだから不思議ではないけど。
取りあえず、そのうちWOWOWあたりで放映されたらリモコンボタンを駆使しつつもう一度見直す予定。
アカデミー賞の主要部門(計7部門)は結局下馬評通り本作が獲得した。まさにこの年を代表する作品の顔といえよう😶(昨年は『コーダ』だった。なんだかマイノリティ枠を回しているような印象が……)
昨年授賞式の暴力沙汰の暗~い影を払拭するために、長年の不遇をかこったけれどそれを乗り越えて成功をつかんだという感動物語へと盛り上がっていったという印象である。
これはそのように意図したというより、誰もが無意識に望んでそうなったように思えた。もはや授賞式自体が一つの物語として提供されているのだろう。
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