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2023年6月

2023年6月30日 (金)

「フルートコンチェルトの饗宴」:エアコンの冷風にも負けぬ!豪華プログラム

230630 演奏:コルテ・デル・トラヴェルソの皆さん、プロムジカ使節団
会場:旧奏楽堂
2023年6月10日

コルテ・デル・トラヴェルソはフルート奏者6人によるコンサート・シリーズとのこと。いつもは交替で企画を立て、サロン的な雰囲気でやっているらしい。今回は第20回記念ということで、大々的に開催された。
友情出演でもう一人フルート補強、さらに弦+チェンバロでプロムジカ使節団6人も加わり、昼夜別プログラム2回公演という大盤振る舞いだ。

ただ、メンバーの前田りり子急病(?)降板のため結局フルート6人体制で行なうこととなった。私は諸般の事情により昼公演だけ鑑賞した。
バッハの管弦楽組曲に始まりグルック、後半はルクレール、クヴァンツのそれぞれフルート協奏曲というプログラム内容である。フルートの独奏者は曲ごとに交替で登場した。

ルクレールの協奏曲というのは初めて聞いたかもしれない。最初は軽妙にして洒脱な雰囲気で、あれっこんな雰囲気の作曲家だったっけ❗❓と驚く。ところが、曲が進むにつれて段々と本性が現れてくるというか(^O^;)……剣呑な方向へ行くのであった。面白かったです。
クヴァンツについてはコメントを差し控えさせていただきたい😶 息子バッハをやった夕方の回も頑張って聞けばよかったかな。


会場は冷房が効いていて最初は気持ちよかったけど、段々と寒くなってきた((+_+))
家へ帰ってしばらくしたら右肩が痛くなってきて、なぜだろうと思ったらどうもエアコンの風が直撃したせいらしい。

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2023年6月24日 (土)

「ほの蒼き瞳」:元祖オタク探偵(助手)

監督:スコット・クーパー
出演:クリスチャン・ベイル
米国2022年

ネトフリ映画限定公開で鑑賞。
クリスチャン・ベイルが引退した元捜査官を演じるというミステリーである。見に行った理由は、同じ監督主演コンビの前作『荒野の誓い』が面白かったからだ。

時は1830年、設立されて間もないウエストポイント陸軍士官学校で猟奇的で異常な事件が起こる。そこで校長が専門家に頼むが一番と、近隣に住む引退した元捜査官に調査を依頼することに。
折しも生徒として若きエドガー・アラン・ポーが在校していた。成り行きで彼は捜査の助手を務めることになる。

昨今のミステリー作品で歴史上の人物が探偵役を務めるという設定が増えているが、これもその一つだ(原作は小説)。
全体的にはホラー&サイコミステリーの体裁を取っていて、ポーの作品にあるような事件や人物が登場するものの雰囲気はドライで、全く幻想的でも耽美的でもない。そういうところはあくまで厳密な謎解きモードを死守している。

謎の顛末はそういう方向に転がっていくのか(!o!)と意外だったが、ネタバレになるのでこれ以上は言えぬ🈲
日本でも原作が出ているとのこと。かなり厚い文庫上下巻らしい。もっと詳しく当時の士官学校生活などが書かれてるのだろうか?
ポーはかなりひ弱でロマンチストかつオタクっぽい若者に描かれている。しかし実像を調べてみたら若いうちから大酒のみで博打好き、年齢を多くサバ読んで士官学校に入学--となかなかの無頼なタフ野郎ではないですか💥 これまた意外よ。

ジリアン・アンダーソンがなかなか登場しなくて、出てきたら出てきたでエーッ(+o+)だった。シャルロット・ゲンズブールとロバート・デュヴァルに至っては見てて気付かなかった(;^_^A

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2023年6月23日 (金)

「春は野や丘を飾り」:中央線にも春

230623 名匠に彩られた旋律2
演奏:スティッラ・マリス
会場:武蔵野スイングホール
2023年5月31日

女性4人組(声楽1+器楽3)アンサンブルのコンサート、第4回目とのことである。ただし私が聞くのはこれが初めて。
ルネサンス末期からバロック初期にかけての歌曲や器楽曲で、過去に他の作曲家が修飾を付けたものや、あるいは今回新たにメンバーが修飾したものを聞かせるという趣向だ。

取り上げた作曲家はディンディア、カッチーニなど。タイトルになっている原曲はパレストリーナである。曲の途中で他の舞曲を間に挟んだり、器楽奏者も共に歌う場面などあり、自由なところが面白かった。
方向性としてはなんとなくラ・レヴェルディを思い浮かべたりして(^^)

この日使われていたハープもやはり弦が3列並んでいるというものだった。1600年ごろイタリアで使われていたそうな。
皆さんのお衣装がそれぞれに春っぽい色彩で素敵でした~✨ 5月末だからまだギリギリ「春」よね。

昼夜公演の昼の方に行ったが客がかなり少なかった。2回やると分散してしまって仕方ないのかな。


中央線は普段乗りなれないので急行・各停乗り換えにキョロキョロ👀してしまった。沿線の町並みはやっぱり大都会(@_@) 埼玉県民には眩し過ぎよ。

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2023年6月19日 (月)

「対峙」:話せば分かる、分からない、分かる時、分かれば

230619 監督:フラン・クランツ
出演:リード・バーニー
米国2021年

教会の一室に集う二組の夫婦。最初は曖昧でぎこちない会話が見えない中心部を避けるようにグルグル回って続くうちに、やがて核心へと踏み込んでいく。
彼らは数年前に起こった学校での銃乱射事件の被害者と加害者の両親である。対面して話し合いを行なうという、いわゆる修復的司法のヴァージョンの一つなのだろうか。基本的に主要人物は4人だけだ。

やがて4人の誰もが最初に見た通りの人物ではないことが明らかになる。
そして夫婦であってもまた一心同帯ではなく、その間にピリピリと亀裂が走る。観客は一体誰に感情移入して見ればいいのか分からなくなってしまう😱 どの人物にも安易な共感はできない。

あまりにも緊張でドキドキして見ていたので、途中でスクリーンサイズが変わったのも気が付かなかった(^^;ゞ
ラストの後にさらにもう一押しあるという脚本もうまい。脚本兼監督は本業は俳優で、初監督作品とか。なんとなく演劇向けな話なのはそのせいか。
「幸せになりたくない!」は衝撃的だった。

「花」を初めとして小物(写真、ティッシュ……)の使い方もよかった。あの最後のテープも。
ただ、被害者の母が部屋を出る時に眺めていた絵が、次のカットで消えてたのはどういうことよ(?_?) まさかのウッカリミスとか🆖
時折響くノイズみたいな音はなにかな? 劇伴音楽か区別が付かなかった。

それにつけても、同じシーンを何テイクも撮っただろうにあのテンションをずっと再現できるのは驚いた。役者ってすごいものだとつくづく感じる。
加害者の母役は『ハンドメイズ・テイル』のリディアおばさんだったのね(!o!) どこかで見た顔だなあと思いつつ分からなかった。

この作品で思い出すのは、昔の警察ドラマ『ホミサイド』である。いつものキャストが登場しない異例のエピソードがあった。
一回見たきりなので記憶が曖昧なのだが、自助グループらしき集まりで殺人事件被害者の家族数組が一室で心中を語り合う。舞台は動かず、その室内で始まりそして終わる。

話すうちにそれぞれの立場や状況の違いが露わになってきて、最後にはなぜかつかみ合いのケンカになってしまう。そして何の救いもなく終了するのだった。

 

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2023年6月17日 (土)

「ペーパーシティ 東京大空襲の記憶」:燃える歴史

230616 監督:エイドリアン・フランシス
オーストラリア2021年

東京在住のオーストラリア人監督によるドキュメンタリー。東京大空襲で家・財産や家族を失ったサバイバー3人を中心にその記憶をたどり、慰霊碑建立や補償を国に求める運動を続ける姿を取材したもの。ただし3人のうち2人はすでに亡くなっているらしい。

私の実家は東京の下町にあって近隣の地域が空襲にやられたが、広い国道があってそこで火は止まった。もし火勢が道を越していたらすべては燃えて消え失せていただろう。まさに運命の変転を生み出した根源である。
取材時期は2015年頃で、やはり直接の体験者の言葉は迫力がある。しかし国は慰霊碑どころか被害者の調査さえ行っていないという。
そしてラスボスのようにあのAbe氏の影が背後に見え隠れするのであった。

厚労省(?国会だったかな)前でアピールを行なっていると街宣車がやって来て「文句があるなら空襲やったアメリカに言え~」と叫んでいたけど、その理屈だと徴用工とか慰安婦問題は日本に跳ね返ってくるんじゃないの❗❓
それから、立派で大きな防空壕を作ったが中に入った人たちはみんな窒息したという話が怖かった。

テーマや取材対象は文句を付けようがないのだけど、一方素材をそのまま投げ出したままのような粗っぽさを感じた。もう少し構成や編集を考えてくだせえ。

マイナーなドキュメンタリーの割には結構客が多かった。ただし年齢が上過ぎて白髪頭どころかハゲ頭の方々も……。
と思ったら、なんと私の行った当日の朝にNHKの番組で紹介されたかららしい。……じゃなくて朝日新聞の「天声人語」で紹介されたからのようだ。
おかげでイメージフォーラムのスタッフは普段映画館に来慣れていない高齢の方々への対応に追われていたもよう(;^_^A

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2023年6月14日 (水)

「セールスマン」:天は自ら支払う者を助く

230613 監督:アルバート・メイズルス、デヴィッド・メイズルス、シャーロット・ズウェリン
米国1969年

60年代末の米国、雪のボストンから常夏のフロリダへ、高価な美麗聖書を売り歩く4人のセールスマンに密着するドキュメンタリー。

メイズルス兄弟というのはドキュメンタリー映画史では有名な監督らしい(『ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・シェルター』も担当)。自ら撮影も担当し、ナレーションや音楽なしの手法の開拓者だという。その代表作の一つがこれである。

各地でモーテルに泊まりながら車で移動するというハードな毎日を送るセールスマンたちに貼り付き、さらに一緒に家へ入り込んでセールストークや手練手管もバッチリと収録している。
当然、相手の住人の許可を得ているんだろうけどよく撮れたなあと感心してしまう。当時は機材もデカいだろうし。

お高い聖書にもかかわらず売りつける相手は決して豊かそうではない人々だ。
「欲しいんだけど、うーん、うーん」さんざん逡巡した挙句に一ドルも余裕がないと断るシングルマザー。セールスの押しの一手を見るより、なぜそんなに分厚い聖書を欲しがるかの心理に興味がわく。昔の日本での「百科事典」「文学全集」のようなステイタスを示す「家具」の代わりなのだろうか。

4人のうち最も辛辣で口の悪いベテランが「もうやってらんねー💢」とブチ切れてどうするのか--と突然の展開。この稼業はつらいよと言えばそれまでだが、夢も希望もない殺伐とした郊外の町に住む人々の生活と共にジワジワと迫ってくるものがある。

チラシには「神と会社のため」聖書を売るとあるが「金と会社のため」の間違いではないかな(^^;

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2023年6月10日 (土)

「スパニッシュ・ハープと奏でる古のスペイン2」:個性発揮プログラム

演奏:ラ・フォンテヴェルデ
会場:としま区民センター小ホール
2023年4月21日

昼の回の方に行きました。
振り返れば1回目は今は休止中(と信じたいぞ)の近江楽堂であった。その時は鈴木美登里+男性4人という布陣だったが、今回はソプラノ1名増となっていた。

独唱から全員での合唱曲まで、歌の内容も世俗・宗教曲取り混ぜて色々とバラエティに富んだ曲が次々と演奏された。もちろんハープのソロもあり。
取り上げられた作曲家はゲレーロ、ロボ、ムダーラなど。初めて聞いたホセ・マリンは歌手だが、暴行・窃盗・殺人罪で捕まった人物とか--大変だ~⚡

ラストに演奏されたマテオ・フレチャ作「ポンプ」は昔どこかで聞いたような、ハテ(^^?と思ったら、クレマン・ジャヌカン・アンサンブルのコンサートだった(多分)。
船乗りたちが嵐のため遭難しかけ、神に必死で祈って九死に一生を得るもすぐに忘れてどんちゃん騒ぎをするという爆笑曲。ラ・フォンテヴェルデの面々もECJに負けずに個性豊かですね(*^^*)

前回やった「リウ、リウ、チウ」をアンコールでまた聞かせてくれたのが嬉しかった🎵


CDの販売コーナーがあって、担当スタッフのおにーさんが声をからして宣伝していたけど、通路の隅の方だったので今イチ(いや今ジュウぐらいか)客の反応が薄かった。お疲れさまです。

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2023年6月 4日 (日)

「時空を超えて届くヨーロッパからの手紙」:現代からの返事

230604 演奏:鷲見明香ほか
会場:日暮里サニーホールコンサートサロン
2023年4月18日

ヴァイオリン鷲見明香・ガンバ小池香織・ハープ曽根田駿の三人組による器楽曲のコンサート。曲は16世紀の終わりのルネサンスからバロックへの転換をくっきりと表す作品が選ばれている。
ルネサンス期は多声の歌曲に分割装飾して楽器も演奏していたが、17世紀になって「それぞれの特性と技巧を生かした器楽曲」が発展したということだ。ドラマティックかつ直接的に訴える表現に変わっていったそうだ。

前半はイタリア、スペイン編でハープによるルッツァスキから始まりオルティス、フレスコバルディ、マリーニ……と独奏、合奏織り交ぜて続いた。
ラストはイ・コルという鍵盤奏者によるオルガン版「ラ・フォリア」をさらにガンバとハープに編曲しなおしたものという複雑な(?)由来の曲だった。ただ、鍵盤曲を他の楽器に編曲するのは当時よくあったらしい。小池氏のガンバがなかなかの迫力であった。

後半はもっと北寄りの国々から。ダウランドあれば、シェンク、シュメルツァーもあり。
曽根田氏のハープによるフローベルガーの「フェルディナンド4世に捧げる哀歌」は、通常はチェンバロで演奏されるものだろうが、比べると澄んだ浮遊感があり「この透明な悲しみを😢聞いて~」的に聞こえた(^^;)
使用のハープはアルバ・ドッピアというイタリア発祥のもので、弦が三列並んでいるらしい(遠目にはよく分からない)。なんだかとても弾きにくそうな……( 一一)

シュメルツァーのヴァイオリン・ソナタとなるとコンサートの終曲にふさわしい展開で、特に鷲見氏のヴァイオリンは怒涛の激演とでも呼びたくなるものだった。
拍手(*^^)//""パチパチ

全体に、編成を色々と取り換えて各楽器だけでなく演奏者の「特性と技巧」を見事に引き出していた。人数は3人でも聞きごたえは非常に大きかった🌟

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2023年6月 2日 (金)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2023年6月編

個人の好みで適当に選んでリストアップしたものです(^^ゞ
事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。

*3日(土)アレッサンドロ・スカルラッティ オラトリオ「カインまたは最初の殺人」(古楽アンサンブル エクス・ノーヴォ):J:COM浦安音楽ホール コンサートホール
*4日(日)古楽っておもしろい6 田園の愉しみ~フランスバロック音楽への誘い(古楽団あおば):アートフォーラムあざみ野レクチャールーム
*7日(水)テレマン=パリ・カルテット 新しい四重奏曲集2(ムジカ・レセルヴァータ):杉並公会堂小ホール ♪横浜公演あり
*9日(金)スペイン音楽の黄金時代 16&17世紀(ファミ・アルカイ&荘村清志):王子ホール
*10日(土)フルートコンチェルトの饗宴(コルテ・デル・トラヴェルソ):旧東京音楽学校奏楽堂 ♪プログラムが異なる1日2回公演
*  〃   目覚めよ 美しい人 宮廷と田園のフランス(鈴木美紀子&つのだたかし):東京都民教会
*16日(金)「スプレッツァトゥーラ」発売記念演奏会(イ・フィラトーリ・ディ・ムジカ):日暮里サニーホールコンサートサロン
*17日(土)合唱団エレウシス 第1回演奏会:武蔵野市民文化会館小ホール
*23日(金)18世紀イタリアのリコーダー音楽(高橋明日香&辻文栄):東京聖十字教会
*24日(土)難曲探検隊 リコーダーソナタ1(大塚照道ほか):えびらホール
*28日(水)深大寺で聴く古のうた 恋のから騒ぎ イタリア古典の巻(櫻田亮ほか):深大寺本堂
*30日(金)Poesia Amorosa イタリアの詩人と17世紀の音楽(アンサンブル・プリンチピ・ヴェネツィアーニ):豊洲センターシビックホール

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