« 「ペーパーシティ 東京大空襲の記憶」:燃える歴史 | トップページ | 「春は野や丘を飾り」:中央線にも春 »

2023年6月19日 (月)

「対峙」:話せば分かる、分からない、分かる時、分かれば

230619 監督:フラン・クランツ
出演:リード・バーニー
米国2021年

教会の一室に集う二組の夫婦。最初は曖昧でぎこちない会話が見えない中心部を避けるようにグルグル回って続くうちに、やがて核心へと踏み込んでいく。
彼らは数年前に起こった学校での銃乱射事件の被害者と加害者の両親である。対面して話し合いを行なうという、いわゆる修復的司法のヴァージョンの一つなのだろうか。基本的に主要人物は4人だけだ。

やがて4人の誰もが最初に見た通りの人物ではないことが明らかになる。
そして夫婦であってもまた一心同帯ではなく、その間にピリピリと亀裂が走る。観客は一体誰に感情移入して見ればいいのか分からなくなってしまう😱 どの人物にも安易な共感はできない。

あまりにも緊張でドキドキして見ていたので、途中でスクリーンサイズが変わったのも気が付かなかった(^^;ゞ
ラストの後にさらにもう一押しあるという脚本もうまい。脚本兼監督は本業は俳優で、初監督作品とか。なんとなく演劇向けな話なのはそのせいか。
「幸せになりたくない!」は衝撃的だった。

「花」を初めとして小物(写真、ティッシュ……)の使い方もよかった。あの最後のテープも。
ただ、被害者の母が部屋を出る時に眺めていた絵が、次のカットで消えてたのはどういうことよ(?_?) まさかのウッカリミスとか🆖
時折響くノイズみたいな音はなにかな? 劇伴音楽か区別が付かなかった。

それにつけても、同じシーンを何テイクも撮っただろうにあのテンションをずっと再現できるのは驚いた。役者ってすごいものだとつくづく感じる。
加害者の母役は『ハンドメイズ・テイル』のリディアおばさんだったのね(!o!) どこかで見た顔だなあと思いつつ分からなかった。

この作品で思い出すのは、昔の警察ドラマ『ホミサイド』である。いつものキャストが登場しない異例のエピソードがあった。
一回見たきりなので記憶が曖昧なのだが、自助グループらしき集まりで殺人事件被害者の家族数組が一室で心中を語り合う。舞台は動かず、その室内で始まりそして終わる。

話すうちにそれぞれの立場や状況の違いが露わになってきて、最後にはなぜかつかみ合いのケンカになってしまう。そして何の救いもなく終了するのだった。

 

| |

« 「ペーパーシティ 東京大空襲の記憶」:燃える歴史 | トップページ | 「春は野や丘を飾り」:中央線にも春 »