見たら今イチだった! 世評は当てにならない映画その3:「サントメール ある被告」
監督:アリス・ディオップ
出演:カイジ・カガメ、グスラジ・マランダ
フランス2022年
事前に伝わって来た評判がよくても実際見てみたら、自分にはどうもなあ~という案件の最後です。
ヴェネチア映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)を取り、絶賛する人も多数の作品。
セネガルからの留学生が幼い娘を海で殺害した実話の裁判劇である。だからといって社会派作品というわけではなく、様々な文化と概念が衝突する混乱を突き詰める思弁的な作品だった。
裁判場面は法廷での発言をそのまま再現したということで、事件の謎が明確に解かれるわけではない。
厳然たる差別が証言者を通して表出する。特に大学教授の発言はひどい。犯人の学生の話すフランス語は完璧だが文章だと不十分だなどと証言する。
並行して監督の分身とおぼしき作家が、傍聴を通して悶々とする様子が描かれる。犯人と自分を重ねて見ているのだ。彼女が自らの母や現状を受け入れる過程が主眼だろう。
しかし、肝心の犯人はほとんど語らず何を考えているのか分からない。普通の法廷ものだと弁護士と面会したり話したりする場面が出てくるが、この映画は全くそういう部分がない。作家のリアクションを通して観客は「恐らくそうなのであろう」と推測するしかないのだ。
ということで、起伏が少ない上に作品のテンポが自分に合わず、気を緩めると眠気のループに入りそうになっちゃう。特に法廷内の映像は動きが少ないこともあり。
また、自らの子を殺したギリシャ神話の王妃メディアについて、パゾリーニの作品をかなり長々とそのまま作中で使用しているのには「こんなんでいいんかい😶」と驚いた。「引用」を越えている。自分の言葉や映像で表現しようという気はなかったのだろうか。既存曲の使い方も『アフターサン』っぽい。
最後に弁護士が語る「キメラ現象」にはおぞけを振るってしまった。女は妊娠すると胎児の細胞が体内を回り脳にまで達するというのである。
な、なんだって~~(>O<)ギャーッ
でも、胎児の遺伝子って半分は相手の男のものだよね……。すると、3人の男と付き合っては別れ、それぞれ子どもが生まれていた場合3人分の男の遺伝子が体内に残っているということか💀 嫌になって別れた相手でも遺伝子が残ってるなんて恐ろしい。
なお、映画は母を称揚する言葉と共に裁判を傍聴する女たちの顔を一人一人映していくが、子どもというのは父親もいなくちゃ生まれないんじゃないの(?_?)
お願いだから母と娘の無限の円環に私を入れないでくれ❌
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