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2023年12月

2023年12月31日 (日)

「知られざる名曲を求めて3 ヨハン・クリストフ・ペープシュ」:ヘンデルには負けぬ!国産カンタータ

231231 演奏:アントニオ・カルダーラ記念アンサンブル
会場:日暮里サニーホール
2023年11月9日

ペープシュとはヘンデルと同時期に英国で活躍した作曲家。正直なところ初めて聞きました(^^ゞ 一般にはヘンデルの人気を脅かした『乞食オペラ』の音楽担当(序曲の作曲とアリアの編曲)として知られるらしい。
現代の知名度の差はヘンデルが王侯貴族階級相手だったのに対し、ペープシュは市民階級対象に活動していたからだそうな。しかし彼は初めて「カンタータ」という名称で英語のカンタータを作ったという先駆者である。

というわけで彼の英語カンタータと器楽作品を演奏。マルっと全曲ペープシュというコンサートは滅多にないとのことだ。このアンサンブルの公演は第一回を見たことがある。
メンバーはメゾソプラノ曽禰愛子、リコーダー細岡ゆき、ガンバ&チェロ島根朋史、チェンバロ寺村朋子の4人。島根氏のガンバはバスとトレブルの2種類あり、計3種を弾き分けていた。

トリオ・ソナタについてはどうしてこれが「知られざる」なの❓と思っちゃうほどの完成度の高さだった。また、トレブル・ガンバがヴァイオリンのような音を出すのは初めて聞いた(!o!)
カンタータについてはヘンデルのような劇的というより、パーセルの曇りなき明瞭さを感じさせた。これこそ伝統の英国風か。いずれにしてももっと演奏されるようになるといいですね。

謎だったのは字幕の歌詞対訳と配布のプログラム掲載の訳が微妙に異なっていたこと。なぜだ💥


会場に来た時はスマホチケットで小トラブルあり。帰りは山手線を逆方向に乗ってしまった(-_-;) トホホである。

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2023年12月29日 (金)

「X エックス」「Pearl パール」:ミア、恐ろしい子!

「X エックス」
監督:タイ・ウェスト
出演:ミア・ゴス
米国2022年

「Pearl パール」
監督:タイ・ウェスト
出演:ミア・ゴス
米国2023年

『X』、前から気になっていたのをTV放映で見た。そうしたらどうしても続編の『Pearl パール』も見たくなってしまった。
なぜ『X』で迷っていたかというとスプラッタホラーは超苦手だからだ。しかしあらすじ聞くと興味をひかれる……とグダグダしていたけど遂に見た! 前半は順調に見られたものの後半はギャーッ⚡と叫びたくなった。どうせ殺すならサッサとやってくれ~。

テキサスのド田舎の農場を借りたポルノ映画の撮影隊6人。母屋には老夫婦が住んでいて、当然なことに怪しさ満載である。その後は数々のホラー過去名作の引用場面が続く。といっても私はこのジャンルはあまり見てないので『シャイニング』以外は「何かの引用らしい」としか分からぬ。
教訓:外を歩く時は最低靴だけは履きましょう。イテテテテ(>_<)

とはいえ面白かった🈵
下手すると高齢者への偏見を増加させそうな内容である。でも「二役」によって避けているのがうまい。
ポルノ映画で一旗揚げようという気概がいかにも1979年という時代を反映している。あとベトナム帰りの存在とか。


さてその続編--というか正しくは前日譚である『パール』である。内容は「余はいかにしてコワイ老婆になりしか」。農場の老夫婦が殺人鬼になる因縁と過程を描く。
時代は1910年代、田舎の農場に暮らしていても歌って踊れる輝くスターを目指すパール。厳し~い母親の目をかいくぐってオーディションに参加して栄光への道を踏み出そうとする。

期待し過ぎたせいか今一つな印象だった。もっとパロディでハッチャケてるのかと思ったら、満たされない田舎娘の怨念がドヨーンと襲ってきて、見てて少し疲れた。
ここまで濃いこだわりの描写で展開していくとは😶 車椅子の父親、風呂場、映写室、納屋、オーディション、特に畑のカカシの場面は(!o!)オオ
パール役のミア・ゴスにはオスカー候補になってほしかったなあ。今作では製作と脚本も兼ねているから才人には違いない。

母親についての解釈が二通りあって直接的には娘への虐待に近いのだが、猛毒母ゆえなのかそれとも娘の本性を知っててわざと厳しくしていたか明確にはされていない。私は後者の説を取りたい。
なおワニの寿命を調べたら大きいものは人間と同じぐらいらしい。ということはあの沼に住んでいるヤツは……💀
あの時ワニも若かった~♪

三作目は「X」のヒロインがまた登場するとの噂。今度は父親が出てくるのかな。公開時に見るかどうかは考え中だ。


さて、女優を目指すパールを見て誰でも思い出す(多分)であろうのが『ガラスの仮面』の北島マヤである。
ということで、ミア・ゴス版『ガラかめ』を考えてみました~っ(;・∀・)
なお、単なるイメージで実年齢などは考慮してません。

北島マヤ:ミア・ゴス
姫川亜弓:ケイト・ブランシェット
月影先生:シャーロット・ランプリング
速水真澄:マシュー・グード
桜小路優:ジョシュ・ハッチャーソン

秘書水城:ジャネール・モネイ
青木麗:エリザベス・デビッキ

演出家小野寺:ケヴィン・スペイシー(いつの間にかしれっと復活)
黒沼龍三:ブレンダン・グリーソン
姫川歌子:ヘレン・ミレン
北島春:イメルダ・スタウントン
鷹宮紫織:クリステン・スチュワート

乙部のりえ:ジェニファー・ローレンス
小林源造:ジャファル・パナヒ(特別出演)
里見茂:ティモシー・シャラメ

皆さんも考えてみましょう🌟

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2023年12月20日 (水)

「ジョルディ・サヴァール&エスペリオンXXI」:全ての舞曲はフォリアに通ず

231220 ルネッサンス&バロックのダンスと変奏 旧大陸、そして新大陸から
会場:三鷹市芸術文化センター
2023年10月31日

三鷹のホールに来たのは十年ぶりぐらいだろうか。満員御礼だったもよう。
サヴァールの前回の来日は5年前だが、その時のメンバーから1名抜けた4人編成だった。超絶技巧のギターとパーカッションは同じで、ローレンス・キングはますます怪しげな風体になっていた。

スペインを中心に欧州各地(英国も含む)に広がる舞踏曲、さらには新大陸まで境目なくステージ上に乗せていくプログラムだった。そして最終的に結局はフォリアに行き着く。
サヴァールはすっかり油気が抜けてますます枯淡の域に入っているような印象だった。外見だけでなく演奏についてもだ。残りの3人がそれに即興で付けていく次第である。
もっとも彼は指揮者としては今年にベートーヴェンの録音を出しているくらいだからまだまだ元気で精力的ですな。

後方の席というわけではなかったがもう少し近くで見た(聞きた)かった。周囲にオペラグラス使っている人が何人かいたほどだ。現代の「ダンスナンバー」というものとは全く異なるノリである。異郷の風がすーっとしみてくるような、と言ったらいいか。

今回もマヨラル氏が様々なパーカッションを使用。口琴やバウロンが登場し、さらに白くて短い薬のすりつぶし棒みたいのを2本を打ち合わせるというのはなんという楽器なのか。世界にパーカッションの種は尽きまじよ。
9時終演予定がなんと40分オーバー。この日の公演が一番長かったらしい。さらにその後のサイン会は長蛇の列だった。
やっぱりサヴァール元気である🌟


席の周囲に強い整髪料の匂いがずっとたちこめていてマイッタ(@_@) しかも発生源らしき人物が見当たらないという……💦
会場配布の曲目表はパートごとのタイトルと曲集と曲名と作曲家名がゴッチャになっていて、パッと見に非常に分かりにくかった。なんとかしてくだせえ。

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2023年12月17日 (日)

「マイ・エレメント」&「私ときどきレッサーパンダ」:移民二世女子の憂鬱と爆発

231216「マイ・エレメント」(字幕版)
監督:ピーター・ソーン
声の出演:リーア・ルイス
米国2023年

そもそも恋愛ものはどうも苦手だし、近作を見てると「もうピクサー印はいいかな~」と全く見るつもりなかった。しかしネットでは好評ばかり流れて来るので「本当に面白いんかい(・・?」と見に行ったら……本当に面白かった!

四種類の元素人間がそれぞれテリトリーに別れて暮らす都市とは、もろにニューヨークっぽくて人種のアレゴリーだろう。
過去に火気人間のヒロインの両親が旅立ってきた地は中華風である。では都市を最初に作り上げた水気人間は白人なのか。

そんな設定で今さら『ズートピア』みたいな移民ネタやられてもなーとは思ったものの、実際にはそれぞれ水・火・土・風のエレメントの表現や小ネタの連続の見事さに思わず感心。特に水のピチョン💧とした描写や炎の燃え上がる様子はあまりに見事で理屈を超えるものがあった(土と風は出番が少ないだけにちと手抜きか)。

ヒロインは両親の作り上げた店を手伝って働き、有能でしっかり者で勝気だけど常に今一つ自信がない。不安定なため時折感情のコントロールができず燃え上がる爆発的発作を起こす。
そういう若い女性が親の期待(特に父親)にどう応えるのかという問題と、移民二世の葛藤がうまく合わせ技で描かれている。最後にそれにカタを付ける。

恋愛ものとしても楽しかった。貧しい下町で生まれ育ち何かと切羽詰まっているようなヒロインに対し、相手の水男は涙もろくて汗かきでいかにも育ちのいいボンボン風という組み合わせ。互いに補強し合っている関係である。
それにしても水男の涙もろさがあそこでああなるとは想像だにせず。
久々に泣いて笑ってピクサー印に満足できましたヽ(^o^)丿

さて字幕版に関しては日中にはやらず夕方以降だけで、しかも小さめのシアターなのでほぼ満員。当然子どもはいなくて若者率なんと98%だ❗ えっ、もしかして私が場内でよもやの最高齢?(思わず周囲を見回す)
ウッソー、そんなのイヤ~~っ(゚д゚)!
ま、照明落ちて暗くなってしまえば分からんけどな。

隣の若いカップルの女性の方に気を取られた。作中の笑うべきところで笑い、小ネタには律儀に反応し、意外な展開の場面では「あーっ」と声を小さく出し、もちろん最後は号泣。(私もマスクの隅を濡らしましたよ😢)
彼氏の方もヨシヨシとかしてないで一緒に泣いてやれよ、コノヤロー( -o-)/☆

彼女こそ映画の理想的な観客であると感じた。
日頃、平均年齢高過ぎなミニシアターをうろついてて「ピクサー新作だって?最近今イチだよなー」みたいなアラ探しモードで最初から斜めに見ているような、自称ファンの濁った眼と心とは全く異なるのである。
深~く反省しました。

なお、なぜ海外アニメを上映館や回数が少なくても字幕版で見るかというと、大手のアニメは映像の完成よりも声優のセリフを先に録音する方式を取っているからだ。そのオリジナルを味わいたいのよ。
もちろん字幕優先といっても例外はある。『シンプソンズ』とか『ダウントン・アビー』(実写だけど)はさすがに吹替だわな。


「私ときどきレッサーパンダ」(吹替版)
監督:ドミー・シー
声の出演:ロザリー・シアン
米国2022年

CATVで視聴。残念ながら吹替版しかなかった。
『マイ・エレメント』と設定が似ているが、同じピクサー印でもこちらはもっと若い子向けだった。
主人公はトロントに住む中国系の女の子13歳。家業を手伝い、母親の前ではよい子である。

一方、学校では個性的すぎる友人たちとつるみ、アイドルに夢中でお転婆に過ごす--という毎日だったはずが、ある朝目を覚ますと自分が寝床の中で一匹の巨大なレッサーパンダに変わっているではないかっ💥
すったもんだの挙句、感情をコントロールできずに爆発させるとパンダが発現することが分かった。
……ということは、パンダにならないためにはこれからは全てを抑えて大人しく生きていかねばならぬ。これが「大人の女」になるための規範を象徴していることは言うまでもないだろう。
しかも母親が常に監視モードの恐るべきストーカー過保護母なのだ。コワッ(>y<;)

思春期と反抗期と女の子らしくなければならないプレッシャーがパンダ現象に凝縮されている。そして恐ろしくもぶっ飛んだ方向へ物語は展開する。女の子たちのアイドル熱狂ぶりもすごいが、それと同じくらい破壊の描写がこれでもかと来て迫力である。
ただ屈託のないラストがヤングアダルト向けという印象だ。

時代は2002年に設定されている。恐らくスタッフたちの子ども時代にあたるのだろう。お懐かしやたまごっち。スマホは存在せず金持ちの少年だけがケータイを持っている。
それにしても、一番ありそうでなさそうなのは友人3人の存在。あんな友達なかなか作れないよねえ。( -o-) sigh...


この二作の共通点は非常に大きい。登場する家族設定と同様、監督も東アジア系だ。
『マイ・エレメント』ではヒロインは父親の意に沿おうと頑張る。こちらでは娘が母の意図に押しつぶされそうになるも、立場を理解して互いに歩み寄り仲良くなる。
しかし『パンダ』の主人公の成長した姿がやがてそのまま『エレメント』になるのは間違いない。
さて、彼女が将来異なる民族の彼氏を連れてきたら母親はどうするだろうか😑

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2023年12月 7日 (木)

「シェイクスピアの春夏秋冬」:人生に回答あるか

231206 演奏:レ・タンブル&ハルモニア・レニス
会場:日本福音ルーテル東京教会
2023年10月25日

毎度のことながら人出が多くてまいっちゃう新大久保。二つのグループが合体した5人組で、そのうち鍵盤奏者が2人(楽器は3台🎶)という珍しい編成のコンサートが行われた。なお残り三人はヴァイオリン、ガンバ、リコーダーだ。
同内容のプログラムは2017年に聞いたが、今回はさらにその進化系となっていた。

ヒュームの「問いかけ」という曲に始まり、春夏秋冬それぞれを象徴するシェイクスピアがらみの小曲を5~6曲まとめて演奏する。四季を人生になぞらえ、芽吹きの春から夢見る夏、実りの秋、厳しい冬へと続く。ラストは再度ヒュームの「答え」となって、演奏しつつ一同退場していくのであった。

おっと休憩後、「秋」の前にバードの「人生とは何か?」の挿入も忘れてはならぬ。春→冬はまさに人生の流れそのものである。

季節を象徴するカラーに統一した服やアクセサリーをそれぞれ取り替えては聴衆を楽しませてくれました。
秋の収穫祭ではレイヴンズクラフトの酔っ払いソングが酒ビンやグラスと共に歌入りで披露され、会場は盛り上がった。でも会場は教会なんだけど……いいのかな(゚∀゚)

231025t チェンバロの片方は中国趣味でとても美しいものだった。陶器みたい✨

楽器だけでなく教会のステンドグラスもスマホで撮りまくっている人がいて(開演前や休憩中)、しまいには注意されていた。同じような写真をそれこそ何十枚……百枚以上は確実。そんなに撮ってどうするの(?_?)

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2023年12月 2日 (土)

映画落穂拾い2023年前半編その3

231202 今年が終わるころになってようやく前半期分を終了(;^_^A
偶然にも「特集 ナチスはこんなこともしたのか」となりました。

「ヒトラーのための虐殺会議」
監督:マッティ・ゲショネック
出演:フィリップ・ホフマイヤー
ドイツ2022年

事前にSNSで流れてきた感想はあまりはかばかしいものではなかったが、実際行ってみると終始面白く見られた。まあテーマ自体は「面白い」どころではないのだけど。

1942年1月ベルリン郊外、美しい湖畔の邸宅に召集されたのは軍人と役人15人+記録係の秘書。実際に行われたこの会議のテーマは--「ユダヤ人をどうするよ」(>y<;)

「ユダヤ人問題」の解決への計画が示される中でも、みな自らに有利に進め面子を立てようと互いにけん制するのは忘れない。同じ軍部内でも角突き合う。結論へと達せたのは淡々と仕切る議長のハイドリヒの力業であろうか。
アイヒマンが作成したという実際の議事録に基づき、音楽も一切なし。カット割りで人物のキャラクターと心理を浮かび上がらせていく。

冷酷な内容を全くの合理性で(さすがドイツ人、と言っちゃっていいのか😑)進めていくギャップがこの映画の最大の見どころだろう。
場所が固定しているので演劇向きという指摘はなるほどである。「15人の企む男たち」というところか。実際に面白い芝居になるかは不明だ。
ただ、人物の名前と所属がほとんど覚えられないのは困ったもん。せめて机の前にプレート置いてほしかった(^▽^;)トホホ

ウクライナのバビ・ヤールでの「先行事例」の話題が出て来たのは、ロズニツァ監督のドキュメンタリー見ていたので興味深かった。

しかし「貴重な資源を奴らのために費やすのはもったいない」なんて、今の日本でも全く同じこと言っているヤツがいるではないか。「経済性」とか「合理的」言説には要注意である。
「小学生程度の読み書きと算数ができればよい」というのも言ってた作家が昔いたなあ。偏見が同じなら考えることも同じらしい。

「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」
監督:ヴァディム・パールマン
出演:ナウエル・ペレス・ビスカヤール、ラース・アイディンガー
ロシア・ドイツ・ベラルーシ2020年

ようやく見た。なんで公開されてすぐ行かなかったかというと、ユダヤ人収容所で自分はペルシャ人だと偽ってドイツ人将校をだます……というハラハラドキドキな設定が小心者の私には耐えられなーい(>_<) なので、見るかどうか迷っていたからである。
というわけで見るとやっぱりドキドキした💓

二人が心を許して会話している(ように見える)のが、成り行きででっち上げた架空の言語によるというのが極めて皮肉だった。大尉役の人は演技賞ものだろう。
それ以外に、ドイツ人の立場から収容所という狭い職場で「あるある」なトラブルが描かれているのが珍しい。男女のイザコザ、反抗的な部下、威張る上司など種は尽きない。

疑問点は医者がなぜ真実を知ってたのに大尉に言わなかったのかということだ。
それから、森の中で出会って主人公に忠告した老人は何者? 第一次大戦時の生き残りなのかな。

事前に実話だとばかり思い込んでいたが実際はフィクションが原作らしい。そうするとラストを「こんな人間がいたら」という願望と祈りを感じるか、それとも「いくらなんでもこんな人間がいるわけない」とバカらしく思うか微妙なところである。


「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」
監督:フィリップ・シュテルツェル
出演:オリヴァー・マスッチ
ドイツ2021年

ツヴァイクというと伝記作家、としか知らなかったがこれは彼が生前最後に完成させた小説が原作とのこと。
ナチスが台頭するウィーンから米国へ逃走するユダヤ人の男、その途上で幻想と回想が交錯する。正直、これほど晦渋な内容とは思わなかった。

タイトルからするとナチスを知的な企みで出し抜くみたいな壮快話に思えるが、実際は混乱がグルグル渦巻いていた。主人公がホテルで遭った「待遇」はあまりに恐ろしい。だが何が現実なのかも判然としない。ラストがそれに拍車をかける。あの場面も原作にあるのだろうか。
なお船中のバーテンダーは明らかに『シャイニング』入ってますな。

ほぼ出ずっぱりで精神(と肉体)が崩壊する過程を演じたO・マスッチはお疲れさまでした~m(__)m
メンタルにグイグイ来るので調子悪い時は避けた方がいいかも。

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