映画落穂拾い2023年前半編その3
今年が終わるころになってようやく前半期分を終了(;^_^A
偶然にも「特集 ナチスはこんなこともしたのか」となりました。
★「ヒトラーのための虐殺会議」
監督:マッティ・ゲショネック
出演:フィリップ・ホフマイヤー
ドイツ2022年
事前にSNSで流れてきた感想はあまりはかばかしいものではなかったが、実際行ってみると終始面白く見られた。まあテーマ自体は「面白い」どころではないのだけど。
1942年1月ベルリン郊外、美しい湖畔の邸宅に召集されたのは軍人と役人15人+記録係の秘書。実際に行われたこの会議のテーマは--「ユダヤ人をどうするよ」(>y<;)
「ユダヤ人問題」の解決への計画が示される中でも、みな自らに有利に進め面子を立てようと互いにけん制するのは忘れない。同じ軍部内でも角突き合う。結論へと達せたのは淡々と仕切る議長のハイドリヒの力業であろうか。
アイヒマンが作成したという実際の議事録に基づき、音楽も一切なし。カット割りで人物のキャラクターと心理を浮かび上がらせていく。
冷酷な内容を全くの合理性で(さすがドイツ人、と言っちゃっていいのか😑)進めていくギャップがこの映画の最大の見どころだろう。
場所が固定しているので演劇向きという指摘はなるほどである。「15人の企む男たち」というところか。実際に面白い芝居になるかは不明だ。
ただ、人物の名前と所属がほとんど覚えられないのは困ったもん。せめて机の前にプレート置いてほしかった(^▽^;)トホホ
ウクライナのバビ・ヤールでの「先行事例」の話題が出て来たのは、ロズニツァ監督のドキュメンタリー見ていたので興味深かった。
しかし「貴重な資源を奴らのために費やすのはもったいない」なんて、今の日本でも全く同じこと言っているヤツがいるではないか。「経済性」とか「合理的」言説には要注意である。
「小学生程度の読み書きと算数ができればよい」というのも言ってた作家が昔いたなあ。偏見が同じなら考えることも同じらしい。
★「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」
監督:ヴァディム・パールマン
出演:ナウエル・ペレス・ビスカヤール、ラース・アイディンガー
ロシア・ドイツ・ベラルーシ2020年
ようやく見た。なんで公開されてすぐ行かなかったかというと、ユダヤ人収容所で自分はペルシャ人だと偽ってドイツ人将校をだます……というハラハラドキドキな設定が小心者の私には耐えられなーい(>_<) なので、見るかどうか迷っていたからである。
というわけで見るとやっぱりドキドキした💓
二人が心を許して会話している(ように見える)のが、成り行きででっち上げた架空の言語によるというのが極めて皮肉だった。大尉役の人は演技賞ものだろう。
それ以外に、ドイツ人の立場から収容所という狭い職場で「あるある」なトラブルが描かれているのが珍しい。男女のイザコザ、反抗的な部下、威張る上司など種は尽きない。
疑問点は医者がなぜ真実を知ってたのに大尉に言わなかったのかということだ。
それから、森の中で出会って主人公に忠告した老人は何者? 第一次大戦時の生き残りなのかな。
事前に実話だとばかり思い込んでいたが実際はフィクションが原作らしい。そうするとラストを「こんな人間がいたら」という願望と祈りを感じるか、それとも「いくらなんでもこんな人間がいるわけない」とバカらしく思うか微妙なところである。
★「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」
監督:フィリップ・シュテルツェル
出演:オリヴァー・マスッチ
ドイツ2021年
ツヴァイクというと伝記作家、としか知らなかったがこれは彼が生前最後に完成させた小説が原作とのこと。
ナチスが台頭するウィーンから米国へ逃走するユダヤ人の男、その途上で幻想と回想が交錯する。正直、これほど晦渋な内容とは思わなかった。
タイトルからするとナチスを知的な企みで出し抜くみたいな壮快話に思えるが、実際は混乱がグルグル渦巻いていた。主人公がホテルで遭った「待遇」はあまりに恐ろしい。だが何が現実なのかも判然としない。ラストがそれに拍車をかける。あの場面も原作にあるのだろうか。
なお船中のバーテンダーは明らかに『シャイニング』入ってますな。
ほぼ出ずっぱりで精神(と肉体)が崩壊する過程を演じたO・マスッチはお疲れさまでした~m(__)m
メンタルにグイグイ来るので調子悪い時は避けた方がいいかも。
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