「藝大プロジェクト2023 仮面 第2回 パルナッソスの山のいただき」:床を目指せ!
「藝大プロジェクト」とは、毎年特定のテーマを設けて多角的視点からアプローチを試みる企画とのこと。もう10年以上前からやっていて、過去には「元禄時代」や「シェイクスピア」の公演に行ったことがある。
今年のテーマは「仮面」で第1回は「アジアの伝統芸能」だったそう。この日の第2回はヨーロッパ編でイタリアの古典仮面喜劇コメディア・デラルテを取り上げたものだった。
ヴェッキ作曲のマドリガル・コメディ『ランフィパルナーソ』を再構成してストーリーを分かりやすくしたとのこと。で、マドリガル・コメディというのは作品によってはコメディア・デラルテの定番キャラクターを登場させて音楽劇として上演したそうな(なんだか少し分かりにくい)。
音楽はあくまで歌手や奏者が担当、役者は芝居パートを専念ということらしい。
芝居パートはほとんどが現役の藝大学生である。それも建築科とか絵画科もいてかなりシロートな若者たちだった(もちろん台詞は日本語)。
一方、合唱・器楽部門勢の多くはプロも含む卒業生や教員で、指揮は野々下由香里がやっていた(珍しい?)。さらに7人中鍵盤が3人という編成である。
恋人たちとその親たちのバカバカしい騒ぎを描いて約1時間。最初はどうなるのかなと不安だったがドタバタのノリも良くなり、奏者やコーラス隊もずっこけポーズに加わったりして笑わせてくれました。
アルレッキーノ役の人は芝居と合唱の両方を忙しくこなして感心した。女中役の人はかなりコメディ演技がうまかった。なんと藝大でチェンバロ専攻している人だそうな。
これからのご活躍を期待しております(^^)/
さて、ここからは苦言モードになります。
このコンサートについて3000円のチケット代を取る価値があるのかという感想を見かけた。確かに正直なところ「学園祭」企画ノリの印象は否めない。
この直前に聞いた北とぴあ音楽祭ではカテリーナ古楽合奏団4500円、スティラ・マリス3000円である。奏楽堂は大学内専用ホールだから会場代もそんなにかからないはずだよね(あくまでも推測)。果たして3000円の価値があったかはビミョーだ。
第1回のアジア編は海外から二つ団体を招いたそうで、充実した内容に見える。そちらに予算を取られてしまったのかね。
しかもパンフの解説はあたかもコメディア・デラルテは半分素人が右往左往しながら直前にでっちあげるコントであり、観客はそれを応援してはげましてやるものだと思っても仕方ないことが書いてある。そんなことはないだろー💢 やる前から予防線を張ったのだろうか(?_?)
加えて肝心の「仮面」について考えさせるところがほとんどなかったのも問題だった。
また会場がデカすぎなのも凶と出た(1100人収容)。芝居の空間というものは難しい。熟練していない者がやるにはスペースが広すぎる。
優れた役者や音楽家(ジャンルを問わず)はその身体の発するパワーをもって広い空間を制御する能力を持つものなのだとヒシと感じた。
この公演を見て大昔にマドリガル・コメディ見たのを思い出した。東京の夏音楽祭でクレマン・ジャヌカン・アンサンブルが出演した時である(他にはラ・フォンテヴェルデぐらいかな)。
この時はドミニク・ヴィスは歌と役者の双方をやっていて、もっと飛び回るようなアクションをやりたかったけど専門家じゃないからと止められたらしい。
とりあえず学生の皆さんはヴィスの足元の床ぐらいには及ぶよう目指して頑張ってくだせえ。
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