「熊は、いない」:国境線は見えずとも消えているわけではない
監督:ジャファル・パナヒ
出演:ジャファル・パナヒ
イラン2022年
イラン政府から映画製作禁止&出国禁止中にもかかわらず、新作を発表するパナヒ監督である。近年の作品同様、自ら自身を模した役で主演している。
主人公は出国できない監督、でも映画は撮る。舞台は隣国で偽パスポートでさらに遠くへ逃げようとするカップルの話だ。自分は行けないからスタッフを送り込み国境近くの小さな村からリモート監督している。
加えてその作品は演じている二人の役者自身が、作中の境遇と重なっているという半分ドキュメンタリーのようなものらしい。冒頭から事実と虚構が錯綜する。
しかし、当然ながらそんな田舎の村ではネット環境は極めて悪い。パソコン持ってウロウロヽ( ̄△ ̄ゞ=ヾ ̄△ ̄)ノ さらに怪しい政府の回し者が出没する。果たして映画は完成できるのか。
自らをネタに混乱と偏狭と抑圧を描く根性は大したものと言わねばなるまい。テーマや展開はかなり絶望的なものだが、なぜか飄々としてシニカルである。
村人たちは「先生」と呼んでくれるがその実際は--と最初からイヤミが炸裂💥こういうところが好きだ~。そして村の閉鎖性が主人公をどんどん詰めてくる。
闇に溶け出す国境。気付かないうちに越えている。しかし見ている者はどこからか見ているのだ。追い詰められる者はどんどん追い詰められる。おまけにここは熊が出るかもしれない🆘 もはやどこにも行き場なし。そんな状況だ。それが観客にも伝わってくる。
それでも儀式の場で余計な一言を言わずにいられないのが彼の本分だろう。
そんな性格のせいではないだろうが(多分)、なんと本作完成後に監督は収監されてしまったという。早期の釈放を願う。
ところで後から騒動のタネになるあの「撮影」は実際のところどうだったのかな。あの場面、よく覚えていないのよ。
一番タルくて気を抜いたような場面が重要だったとは……(~_~)ウムムム
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