「ブラックベリー」「AIR/エア」:むかしむかし男たちがおってな
★「ブラックベリー」
監督:マット・ジョンソン
出演:ジェイ・バルシェル
カナダ2023年
*アマプラ鑑賞
ブラックベリーと言えばスマートフォン出現直前にやたらと流行っていたケータイというイメージだ。しかし日本ではあまり使われなかったせいもあって実物を見たことはない。よく見かけたのはTVドラマ『ロー&オーダー』無印で、打ち切りになる寸前あたりで刑事たちがやたらと使っていたのだった。どれほどの流行り具合かというと一時期ケータイ市場で45%のシェアを占めたそうな。
これはカナダ産元祖スマホとも言うべきブラックベリーの栄枯盛衰を描いたご当地カナダ映画だ。ただしあくまで「実話にインスパイアされ」た内容……のわりには全て実名で登場する。
舞台となる時代は1996年から2008年まで、息もつかせず目まぐるしく展開するが主要な人物は3人のみで、しかも彼らの私生活など余計な事は描かれない。
そもそもスタトレ・オタクの二人が起業したRIM社。マイクは優秀な開発者だが外交性には欠け、一方相棒のダグは陽気で喋りまくる超オタク技術者である。
彼らが起業して生ぬるく運営していたヲタ集団会社に、他企業から流れ着いたパワハラの塊のようなモーレツ営業マンが共同経営者となり、急発進して強引に売り込みを始める。
これがほとんどアイデアだけで何の形にもなっていないものをモデル(というか模型)を作ってプレゼンし、なんとか金を引き出そうとするという綱渡りのような行為だ。まさしく絵に描いたモチを売り込むのだから。
金が全て、金がなくちゃな(~o~) さもなくばいかなる発想も天才も技術も無意味❌ 実現できはしない。そのことが容赦なく描かれる。
売り込みの甲斐あって、マイクは複数の機能を持つモバイル端末というアイデアを考案実現し一時代を築く。会社は大きくなったがもはやオタクの楽園のような環境ではない。
そしてiPhineの登場が全てを打ち砕くのだった。
最後にマイクが行なった新製品のプレゼンの場面は、時代の先端にいた天才がその座を滑り落ち、もはや追いつくことができないことを残酷なまでに見せつける。
思わず、盛者必衰の理をあらわす~🈚などと唱えたくなっちゃう。私はこの業界について知識がないが、この無常さにはいたく感じ入ってしまった。
そしてラストに至って判明する、真の勝者が誰であるかという皮肉も効いている。どうしてこんな事態になるのか分からない。弱肉強食の一寸先は闇である。
大いに気に入ったヽ(^o^)丿……けどカナダ映画でほとんど役者は知られてないし、ブラックベリーというもの自体日本ではポピュラーではないので、配信スルーは仕方なかったのだろうか。残念である。
暑苦しい相棒ダグを演じているのは監督ご本人だ。
SF映画オタクで会話の7割ぐらいは映画のセリフを引用。『インディ・ジョーンズ』から懐かしや『ゼイリブ』、リンチ版『砂の惑星』。さらに『ウォール街』を参考に相棒にビジネス交渉指南をする。
恐ろしいことにこういう人間が実際いるんだよね~😑
使われている当時のロックは有名曲というよりマイナーな曲が多い。監督はロックについてもマニアなのか、それとも使用料を節約したのかね。
マイケル・アイアンサイド、どこに出ているのか?と思ったらかなり恰幅がよろしくなっていたようで(;^_^A 一瞬誰なのか分からなかった。とりあえず健在でよかった。
★「AIR/エア」
監督:ベン・アフレック
出演:マット・デイモン
米国2023年
*アマプラ鑑賞
同じ製品開発の内幕ものとして『ブラックベリー』が陰ならこちらは陽という評判作。確かに外からはうかがい知れぬ裏話を描くというのは似ている。公開時に見損なったのでやはり配信で鑑賞。
1984年当時、業績不振だったナイキはバスケ部門での浮上を目指して新人の若者に目を付ける。彼に契約してもらうために新たなシューズを開発してなんとしても売り込まねばならぬ。
そのためにはまず彼の親(特に母親)にアタックすべし💨
成功したという結果は既に分かっていてもドキドキさせられる。バスケもシューズもよく知らない人間が見てもだ。「プロジェクトX」を思い出させる。
テンポよい畳みかけ具合といいカメラワークといい、ベン・アフレックの監督としての才能は疑うべくもないだろう。
ジョーダン役を正面から出さないのは正解だと思える。なぜなら彼は人間じゃなくて「概念」になるということなのだから。
それにしてもまだ高校を出る前から成果を上げることを期待されていて、既に決まっているようにそれを実現しなければならない--というのは大変なことだ。まあ、実現できるからこそ天才なのだが。
ナイキ公認だろうとはいえ、ライバルのコンバースやアディダスあんな風にクサしていいのか💦と思っちゃった。
キング牧師の原稿の話は後半のあそこへ繋がるのだと、他人の感想での指摘を読むまで気が付かなかった(^^;ゞ
脇を固める母親役ヴィオラ・デイヴィス、クリス・タッカーなども印象に残る。
バルバラ・スコヴァの名前がクレジットにあってどこに出てたのか❓と思ったらアディダスの社長役だった。シューズ・デザイナー役はスカルスガルド兄弟の一人らしい(何人兄弟なのよ)。なにげに豪華出演陣である。
1984年当時の懐かしいヒット曲が多数使われていて、相当に権利使用料かかったのではないか。そこら辺は『ブラックベリー』に大きな差をつけているかも。
さて内幕話を描くこの二作、描いている対象は同じようでもテーマは異なる。『AIR/エア』は勝利を描くが、『ブラックベリー』はそこに意味はないことを示す。
私はどちらを取るかと言えば『ブラックベリー』だ。なぜってそういうお年頃だからなんですう(*^o^*)ポッ
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