「コンクリート・ユートピア」:地獄で団地祭り
監督:オム・テファ
出演:イ・ビョンホン
韓国2023年
イ・ビョンホンがしがない中年男を演じたことが話題になった一作。
日本では能登半島の地震があった直後に公開され、観客を「偶然とはいえこの時期に……」とビミョーな気持ちにさせた。
冒頭、原因不明の災害が発生。地震なのか、それ以外の天災なのか、未知の兵器によるものかも分からない。建築物は全て崩壊しソウルは壊滅状態となった(らしい)。食料・インフラ・情報、何もかもなくなってしまう。
なぜか奇跡的にただ一つだけ無事に残った団地には周辺から生存者が集まってくる。最初の数日間は穏健に過ぎていったが(まさに災害ユートピア)、やがて元の住民と避難者の対立が起こるのだった。
このような設定の背景にはソウルの過酷なまでの住宅難があるに違いない。それは階層格差に直結している(途中でそのような恨みあるセリフが出てくる)。
さらに「代表」を選んで祭り上げて規律を厳しくした挙句に、壁を築いて外部を排除し独裁国家のようになり内部の粛清まで行う。となると当然「北」のことも想起せずにはいられない。
それが特定の誰かの意志ではなくなんとなく皆の総意のようになって流されていくのが恐ろしい。
団地内の食料物資を集めてもやがては尽きてしまう。そこで周囲の店の跡を探して調達……しているうちはいいが、探し終わってしまうとさらに離れた地区へと「遠征」を始める。もはやこれは収奪ではないか💀
そして「団地祭り」が開かれイ・ビョンホンがカラオケを披露する場面をクライマックスとして(ここら辺の展開は巧い)排除の論理は破綻へと向かうのである。
コワイよ~(+o+)
多くの要素を複層的に詰め込み、ユートピアならぬディストピアの行く末を辛辣に描く。
イヤ~ンな場面が多数。その中で唯一平常心を保つ看護師の妻があまりに優等生的に見えてしまうのが難だろう。
それまでヒエラルキーと排除が跋扈していた中、やがて平等と助け合いの象徴が登場する。希望を持って描かれてはいるものの能登半島地震の某映像に似ているので、偶然だとはいえ冷汗が出てしまった(~_~;A
……と、今現在の日本で見るにはあまりにビミョーな内容だったが面白かったのは確かである🈵
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