「奏で手のヌフレツン」
この作者の本は以前『皆勤の徒』(短編集)を読んだが、タイトル作は非常に読みにくい作品だった。そのせいか結局感想を書けずに終わった。
本作はそれに次ぐくらいに読み進めにくい長編である。
恐らくは、閉ざされた球体の内側の表面(裏面?)に築かれた世界に人々が暮らしている。
その中のとある家族の年代記--といっても単為生殖し苦痛を教義として信仰する生命体なのだ。外見は細かくはどのようなものか分からない。一応、人類と同じようではある。
その球体には五つの町がある。5個の太陽がめぐり、選ばれた人々の108本の脚によって支えられ宙を進んでいく。それをコントロールするのは音楽--らしいのだがこれまたどうなってるのか正直分からない。
読みにくいというのは、文中に使用されている形容の単語が三重ぐらいに表象を裏切っているからだ。それは脳内にイメージを直接築くのを妨げる。
例えば煩悩蟹(ぼんのうがに)、節苦(せっく)、爛蛋(らんたん)、焙音璃(ばいおんり=楽器)といった奇妙な名称があふれている。それだけでない。「彗星」とはこの世界で「馬」の役割を役割を果たす生物で、その外見は大きな甲虫でありロープを伝って上下移動もするのだ。
しかし読むとどうしても「彗星」のイメージが浮かんで邪魔されてしまう。
なぜこのような異様な世界になったのか。どうも過去に何か罪悪と災厄が起こったためらしいことが匂わされている。
そうなると生活がいかにかけ離れているようでも、もしかしたらこれは人類の一部が行き着いた未来の姿なのかもと疑ってしまう。
そんな中、終末の予兆が起こる……。これは一度破滅しかけた世界が再生へと向かう力業の物語である。
難点は一族の中で歴代の主人公となる者たちが性格の違いがなくて、みな同じように思えることだ。しかも登場人物みんな名前が4~6文字の似たような語感のカタカナになってて区別が付けられねえ~( ̄д ̄)
あ、でも単為生殖だからそれでいいのか(^O^;) でもきょうだいの違いはあるんだよねえ。
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