実録女の肖像・その3「ティル」
監督:チノイェ・チュク
出演:ダニエル・デッドワイラー
米国2022年
配信スルーになりそうだったのがめでたく劇場公開された。
「エメット・ティル事件」というと公民権運動前(1955年)、黒人少年がリンチされて殺害された--という一行分ぐらいでしか知らなかった。しかしこれを見ると事件発覚前と発覚後も、裁判中にも色々とあったのがよーく分かった。
黒人人権団体もこの事件をアピールして地位向上を……みたいな計算が先に来てた節もあり。さらには母親の個人的なスキャンダルが書き立てられたりと、一筋縄ではいかない状況だったようだ。
それにしても当時のミシシッピ州恐ろし過ぎよ。裁判所内には黒人用の傍聴席はない(完全立ち見)。真実を証言したら町から逃走しなければならない。
基本線は、少年のひどい遺体写真をあえて公開した母親に置かれている。彼女を最初から聖母マリアと重ねているように思えた。事件の前から母親は悲劇を予兆しているように常に悲しみの表情を浮かべ、さらに息子の遺体の接し方にも宗教画を連想させるところがあった。
それゆえにマリア様中心の絵画の如く、演じるデッドワイラーに寄りかかり過ぎになった感がある。
脚本のせいか劇中でどれくらい時間経過したのかよく分からなかったり、母親の意識変化のどの部分を強調したかったのか不明瞭に思えた。
一方、衣装やセットのデザインはよかった。壁紙を思わずしげしげ観察したり(^^)
デッドワイラーはオスカー主演女優賞候補は確実と言われていたのに、諸般の事情ではじき出されてしまったのは残念だった((+_+))
なお、プロデューサーをやっているウーピー・ゴールドバーグが特別出演している。最初、見ても分からなかったりして……。
あと公式HPや映画サイトの情報がかなりいい加減だった。なんとかして~💢
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