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2024年6月21日 (金)

「落下の解剖学」:幸福と真実は見つけるもんじゃない、自分で作るもの

監督:ジュスティーヌ・トリエ
出演:ザンドラ・ヒュラー
フランス2023年

カンヌ映画祭で最高賞のパルムドール(パルムドッグも🐶)を獲得、その他多数の賞レースに関わったということで期待大の一作だった。
しかし、なんか予想していたのと違う……(ーー;)

冒頭、夫婦間の嫌がらせのような大音響が響いたかと思ったら、死体発生💥 てっきりサスペンス路線に進むのかと思いきや、お隣の家庭騒動に聞き耳をたて、さらには塀を乗り越えて窓の隙間から覗き込んでいるような方向へと向かうのであった。

そして明らかにされるのは、
*作家(志望者)同士の結婚は鬼門。(日本でも例あり)
*夫婦ゲンカは犬も食わねえ。(代わりに他の物を食っちゃう)
*みんな驚くフランスの裁判。
*家政婦ならぬ、犬は見ていた!

死体発生の原因は自殺が殺人か事故か。そのいずれなのか裁判してもよく分からず、結局は夫婦のいさかいへと収斂していく。事情はブラックボックス化して、下手すりゃ誰も真相を語っていない可能性もある。第三者には推測しがたいのは当然だろう。
事前の情報からM・ハネケっぽいのかと思ったら、取り上げている「事象」は似ていてもテーマの方向は異なるようだ。ハネケなら情緒描写削ってイヤミ満載にし、ズビャギンツェフならばもっと冷徹に突き放すと想像する。

しかも、全編なんだか「思わせぶり」な感触である。
家の中で誰が目撃したのか不明な短いショットが幾つか挿入されているのはなんなのか。
夫婦の言い争いや夫の車内の発言が客観的な映像として出てきて事実のように見せる(観客に対し)が、全くもって怪しい。
妻の母語はドイツ語なのに、なぜ裁判では英語で話すのか。
などなど例を挙げればキリがない。そういう点が巧みとほめることはできるが、逆から見ると「おちょくってる」となってしまう。

監督夫妻(夫は共同脚本を担当)は『フレンチアルプスで起きたこと』がお気に入りだとのこと。そういえば、あの映画の夫婦を逆の関係にしたようではある。
と、思ったらカンヌ映画祭2023の審査委員長は『フレンチアルプス~』のオストルンド監督だったじゃあ~りませんか。親しい監督同士の内輪で賞をあげたんじゃないかと疑惑が発生するのだった(ー_ー)!!

そういう事情とは別に主演のザンドラ・ヒュラーはヌエ的な人物を演じて、確かにアカデミー賞主女部門候補の価値はあり。さらに弁護士役のスワン・アルローは「HOTな弁護士」として一部で話題💖となった。
彼はアカデミー賞授賞式ではヒュラーの隣に座っていたため、中継で彼女が映るたびに(『関心領域』でも主演していたので回数が多かった)HOT🔥な弁護士も一緒に大写しとなり全世界のファンを喜ばせたのであった。

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