「ソウルフル・ワールド」:生きながらジャズに葬られ
コロナ禍で2020年の劇場公開中止、配信のみとなったピクサー・アニメ。しかし待ち続けた甲斐あって、ようやく短期限定だけど劇場で公開となった。ただし残念ながら吹替のみだ。
主人公はミュージシャンを目指す中年黒人男性。でも現状はハイスクールのしがない音楽講師である。
しかし長年の夢だったジャズクラブ出演が遂に決定🌟 したはいいが、直前に事故で無念の死を遂げる……はずだったのをあまりの無念さに断固拒否。あの世に送られ魂が吸収される直前に逃走して、ジタバタした挙句に地上世界への復帰を目指す。
音楽一途の執念とはこのことか🎹
これから生まれる魂が準備のため集められる世界があってそこに紛れ込むが、逆に生まれることを断固拒否中の魂22番を巻き込んで無理やり現世へ戻ってしまう。
人間に生まれるためには全ての「要素」が揃わないと……というのはいかにも『インサイド・ヘッド』の監督らしい発想だろう(そのため22番は逸脱しているわけだ)。
一方、生まれる前の魂が集う世界が存在するというスピリチュアル系ぽい設定はちょっと苦手である(^^;
魂たちはコロコロしてかわいいし、その風景はパステルカラーで美しいのであるが。
正反対の現実世界ニューヨークの生き生きとした描写は遥かに勝る。それも小汚い部分を詳細なまでに再現している。廃墟とかの暗さではなく、生活感あふれる汚さなのだよね。床屋のワヤワヤ感とか。
どうでもいいような、些細なモノが美しい。食ベ残しのピザの端さえ生命感に輝いて見える。実写だったらこんなことはあるまいよ。
主人公が全く冴えない独身男なのも、猫がかわいくないブチャ猫なのもいい。
そして楽器を弾く時の指の動きには魅せられる。ジャンルを問わず音楽好きな人にはオススメしたい。地下クラブのサックス、階段のトロンボーン🎶
……しかし主人公は音楽一途だったからこそ見失っているものもある。それが22番とのかかわりの中で分かってくる。
人生で生きるよすがを失った中高年向けに推奨--と最初見た時には思ったが、後でよくよく考えると若いモンは22番に共感するかもしれない。
リンカーンだろうがマザー・テレサだろうがエラい人の言うことなんか信用しない。現実なんか絶対認めねえぞ( ̄へ  ̄ 凸ケッてな感じだ。
2020年アカデミー賞で長編アニメーション賞を、レズナー&ロス、J・バティステが作曲賞受賞とのこと。
吹替じゃなくてオリジナルで見たかった(聞きたかった)。
街角で細長い看板を店の前に立って腕や背中でくるくる回して宣伝する場面が出てきた。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』にも登場するがこちらが先だろう。
あれは米国ではよくやる宣伝方法のかな(^^? よほどの体力ないとやってられないような。ダイエットにはいいかもしれないけど。
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